事業会社に来て思った財務数値に関するいくつかのこと
はじめに
早起きと申します!
公認会計士試験合格後、big4の監査法人に入ったのですが、うだつがあがらず事業会社に転職しました。
このNoteでは、監査法人から事業会社に転職した時に感じた「財務数値に対する考え方の違い」について書き留めます。
個人の感想であり、私の属する組織の見解ではありません。
少しでも、事業会社にキャリアチェンジする会計士の役に立てばと思います。
①経営陣の興味があるのは将来の数字
監査経験者は過去の数字にしか興味を持たないことが多いと思います。
なぜなら、監査で一番大事なのは終わった期の数字だからです。監査報告が対象としているのは終わった期の数字。会計士には言わずもがなです。
将来の数字を考慮するのは、監査計画作成時に予算・期中時点の予想数値を見るとか、減損とか繰延税金資産の回収可能性とかGCとか考える時くらいではないでしょうか。
しかし、事業会社に来て思ったのは、ある程度管理体制がしっかりしているという前提では、「実績」より「将来の数字」の方に経営陣は興味があるということです。
今走っている期の着地はどうなるか?来年の目標はどうするか?そういったことにより経営陣の興味はあると思います。
逆に利益の実績にあまり興味はない。というか既に終わった話。動くとすると(多くの場合ネガティブな)サプライズになると思います。
②数字は独り歩きし、思った以上に人を動かす
会計士は、真実なる財務数値が人々の営為とは独立した形で存在し、監査はそれを証明するもの、という感覚があるのではないでしょうか。
実際には財務数値は人々の営為と密接に関連しています。
というか、財務数値くらいしか、経営資源の配分を判断するツールはありません。
よって、数字は思った以上に人を動かします。
稼いでいる、稼げそうな事業に金、人、その他もろもろ経営資源を回す。経営学でならったアレです。
また、現場のマネージャーの勝ち負けもほぼ数字で判断されることが多いと思います。
財務会計の授業で財務数値は社会の利害調整を担っていると習ったと思いますが、社内の資源配分でもそうなのです。
会計士も財務数値を考えるが、それが人をどう動かすか、まで興味を持っている人はあまり多くないと思います。
③それでも、財務数値の質について会計士ほど理解のできる者はいない
それでいて、あえて言いたいのは、会計士ほど財務数値について深い理解を持てる者はいない、ということです。
体感、ほとんどのビジネスマンは営業利益くらいまでしか理解できない、というのが私の感触です。
まず、BSを読めるだけで会計士はすごい。
ほとんどのビジネスマンはPLしか見ていません。PLが増えた減ったで喜ぶケースがほとんどです。
また、財務数値には不可避的に決算調整項目(例えば、減損損失)が含まれます。
ほとんどのビジネスマンはそれらの結果について何となく理解をしているだけで、算定の仕組みについて理解している者はごくひとにぎりだと思います。
何より、財務数値の限界について会計士は深く理解しています。
BSに取得原価主義で評価されるものと時価主義で評価されるものが同居する。
同じような時価の変動がPLになったり、OCIになったりする。
そういった会計の妙なるところにほとんどのビジネスマンは思い至りません。
おわりに
いかがでしたでしょうか。おもしろくなってきませんか。
会計士であるあなたは既に会社の数字を読み解く強力な武器を持っています。
それを使って、まず、御社のマネジメントシステムを俯瞰してみましょう。例えば、月次の取締役会といった会議体でどんな数字が報告されているか、どうやって集計されているか調べてみましょう。
財務会計とは別に管理会計・IR用の予想値の集計の体系がある会社もあると思います。彼らがどうやって数字を作っているか、それが適切な方法なのか、考えてみましょう。
そして、自分でも、将来の数字を考えてみましょう。正解はありません。ええ、誰も将来のことはわからないのですから。