私を救うための物語 6

「私が、君の結婚相手だ、ステファニー」
「え?」
「君は私の妃になるんだよ、ステファニー」
「え?え?」
「これは王命だ」

王命

その言葉を聞くたびに私は、目の前が真っ暗になるような気持ちになる
あの媚薬を、私に飲ませろと言った王の言葉
一瓶まるまる、私に飲ませた騎士団長
そして・・・

「ステファニー?」
「・・・私は、そのお話を、お断りさせていただきたいです・・・」
「・・・泣くほど、嫌なのか・・・」
「・・・」
私は首を縦に振る
「そんなに私が嫌いなのか?」
「違います!違います!」
私は必死に首を横に振る
「違います、私が、私が嫌なのは、私の運命です
私は、殿下を嫌ってなどいません
私が殿下を嫌うこと等、絶対に、絶対にありません
私はただ、私の、私の未来が、怖いのです・・・」
「ステファニー、私のことが嫌いではないんだね?」
「・・・」
「私を嫌ってはいないのだね?」
「・・・はい」
「それなら良かった、なら」
「でもダメです、私は、私は殿下のおそばにはいられません」
「ステファニー」
「私は、私の未来は・・・」

私の未来
正気を奪われ、獣にされ、おぞましい下賤の者のおもちゃにされ、妊娠し、出産し、母親になる、運命・・・

「私は・・・」

死にたい

そんなおぞましい未来を私は、生きたくない

そんなおぞましいものを、産みたくない

そんなおぞましいものを、愛したくない

これはわがままだろうか?

小説のスピンオフの中の、子は、かわいらしい様子だった

私はその描写にほっこりした

これでステファニーも幸せになれるね、と

とんでもなかった

そんなのは、ステファニーの気持ちを全然わからない人の言葉だ

ステファニーになった今はわかる

そんな未来は欲しくない

そんなものを愛したくない

そんなものの母親になんかなりたくない

そんなものの母親になるぐらいなら、死んだ方が

「また死んだ方がいいとか、考えてないか?ステファニー」

「・・・・」

「ステファニー、話してくれないか?
何が君をそんなに怯えさせているのか
その理由を私に教えてくれないか?」
「・・・」
「ステファニー」
「・・・きっと、突拍子もない話だと殿下は思われと思います」
「・・・」
「それでも良ければ、お話します」
「・・・聞かせてくれ、ステファニー」

私は私の知るすべてを、殿下に話すことにした
殿下は黙って、聞いてくれた


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