日々雑事6

1988年。戦後最大の汚職事件と言われるリクルートコスモスの未公開株譲渡。政界と大企業の癒着。そして年末には昭和天皇の容体悪化、社会全体が自粛の雰囲気に飲まれていった時代。
わたしはまだ中学三年生、四国の田舎に暮らしていた少年は流行りもバブルも知らず、ラジオと音楽雑誌の情報だけを便りに世界とつながっていた。
ギターマガジンとラジオDJのピーター・バラカン氏のお勧めだから間違いないと思い買ったフェアーグラウンドアトラクションの「ファーストキス」

それまでテレビやラジオで聞いていた音楽、例えば日本のフォークや歌謡曲、ニューミュージック(今で言うシティポップ)、洋楽のロックやブルースとも違うサウンド。何だかよく分からないけど「いい!」エディリーダーの声はあちらこちらを飛び回り、バンドはアコースティックなサウンドだがダンスして、静かに染み入るバラードを奏でる。
当時の洋楽ヒット曲はガンズ・アンド・ローゼズの「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」。ホワイト・スネイク「イズ・ディス・ラブ」ジョージ・マイケルにテレンス・トレント・ダービー(略してTTD、懐かしっすよ)
異色であった。
エディが歌うから違和感ないのだけれど、ほとんどの曲と歌詞はギターのマーク・ネヴィンによるもの。なんであんなキュンとくる歌詞をかけるのだろうか…
そして35年ぶりの再結成ですか。
とりあえず行った。

体が覚えているものは、例えば母の料理の味。実家の臭い。兄弟姉妹の声。人によって色々あると思うのだが、時間の流れと共に少しずつ薄れてゆくもの。
だけど中学生から高校生の頃にヘビーローテーションした音楽は、有無を言わさずあの時代に自分を連れていく。
35年もあれば住宅ローンも完済できるし、長生きなキリンの一生も見れるかもしれない。
そんな時空を超えて一緒に演奏できる仲間がいる。そんな幸せの時間のお裾分けを頂けた。

見た目はまあ皆年を重ねたなー、と思う。
自分が若い時に憧れた人達なのだから。
だけどもそんなバンドだからこそのライブであった。2曲目でデビューアルバムに入っている「A smile  in a whisper 」を聴いたとたん泣いた。

会場のお客さん、ボーカルエディも泣いた。
曲が始まった途端、全てがみんなの時間になっていた。涙腺が緩くなった妙齢だからではなく、音楽が一瞬で時を巻き戻した。そんな時間だったと思う。

#フェアーグラウンド・アトラクション

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