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第336回「君が心をくれたから」を見終えた感想を書いてみた


自分は、このドラマの第一話を見た直後に、不快なあまり、かなり感情的に批判的な文章を書いたのですが、その後は思いの外、冷静になってドラマを見られていました。

最終回を含めて、多分このドラマに、素直に感動した人もいるでしょうし、自分が好きになれないからといって、わざわざ批判する事もないのではないかとも思ったのですが、やはりどうしても書かずにはいられませんでした。

このドラマを肯定的にとらえようと思えば、主人公と共に、五感の大切さを身に染みて実感する事ができたという事は、いえるのかも知れません。
確かに五感のありがたみを感じる事は、できたとは思います。
それ自体は自分も、批判をするつもりはありません。

でも、これだけは言わせて欲しいのですが、世の中には、五感満足ではない人も大勢いるのです。さすがに五感全部を失っている人はいないかも知れませんが、それでも何かしらの感覚を失ったまま、人生を一生過ごす人達は、大勢いるのです。

ドラマの制作者は、そういう人達がこのドラマを見た時に、どう思うのかを考えなかったのでしょうか?

主人公は、奇跡を連発して、感覚を失ったり取り戻したりして、結構な事かも知れませんが、そんな奇跡を望めずに、感覚を失ったまま生きている人は大勢いるのです。
そういう人達がこのドラマを見たら、どう思うかは考えないのでしょうか?

自分は障害者(この言い方自体好きではないですが)が、主役のドラマは、嫌いではないです。そういう人達の生活や人生を知る事ができるからです。

しかしそういうドラマは本来、それでも人生に希望はあるし、生きる意味がある事を描く物なのではないでしょうか?

それなのにこのドラマは、感覚を失う毎に、生きる希望が失われていくような描き方をして、最後に感覚を全て取り戻したら、ハッピーエンドですか?

それでは、実際に感覚がなく生きている人達の人生は、何だというのでしょうか?何の希望も意味もない、バッドな人生とでも言いたいのでしょうか?


自分がこのドラマを不快に思う理由は、もう一つあります。

それは、五感満足な人間は、それだけで十分幸せなのだから、自分の人生を大切に生きなければならないという、説教くさい結末です。

五感満足だろうが、何だろうが、人生に苦しんでいる人は大勢いるのです。

このドラマは、そういう人達に「お前は、何を甘えているのだ。五感満足な人間は、それだけで十分に幸せなのだから、人生をきちんと生きろ」とでも言いたいのでしょうか?

このドラマははっきり言って、障害を持って生きる人と、持たずにそれでも人生に苦しんでいる人の、両方の人達の人生を愚弄しているのです。


「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」
で自分は、特攻隊の悲運を、大学に行かないと言っていた主人公が、改心して大学に行く為の道具にされている事にぶちぎれたのですが、この映画は特攻隊にも、大学に行かない人にも、めちゃめちゃ失礼な事をしているのです。

そしてこのドラマにも、感覚障害を、家庭内虐待で苦しんでいる人達を改心させる為の道具にしている事に、自分は同様の腹立たしさを感じるのです。

戦争や感覚障害の事を描くのであれば、その事だけにきちんと向き合って、作品作りをしたらいいのです。
それらの事を、家庭の問題に苦しんでいる人達の問題と絡めて、若者の心を改心させる為の、都合のいい装置として、安易に用いないで欲しいのです。

それは、特攻隊の人達にも、感覚障害のある人達にも、家庭問題に苦しんでいる人達にも、どの人達に対しても、失礼な事なのです。

こうした問題を、それに関わりのない人達が感動をする為の、悲劇の材料として、軽々しく扱うべきではないように思うのです。


後もう一つ気に触れるのが、彼氏が自分の死と引き換えに、主人公の五感を取り戻させる展開です。元々彼氏は、死ぬ運命だったのだから、自分本来の運命に戻っただけなのかも知れませんが、自分の命と引き換えに人を幸せにする自己犠牲の精神が、自分は好きになれないのと、自分の五感を代償にしてまで彼氏の命を救おうとしていた主人公が、彼氏が自分の命と引き換えに自分の五感を取り戻してくれた事に感謝をしている感じになっているのが、主人公が、自分の五感を犠牲にした事を、後悔してたようにしか見えなくて酷い作品のさらにダメ押しをしていたように思えてしまうのです。
(まあ実際、後悔をしていたのでしょうけど‥)


自分自身、素人ながらに創作小説も書いているので、もしかしたら自分も、自覚がないだけで、こうした話を書いてしまっているのかも知れませんが、そういう反省も踏まえて、今回、思った事を全て書かせて頂きました。


※ネットでちょうどいいサムネを見つけたので、使用をさせて頂きました。
その代わりと言ってはなんですが、下記にサイトの記載をしておきます。

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