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第257回、K鑑識官の奇妙な鑑識記録簿 チョットGPT


ここに一人の鑑識官がいる。彼は腕利きの鑑識官として、長年に渡り様々な事件現場に立ち会って来たが、最近の現場には奇妙な違和感を抱いていた。

「死因は自殺か‥ だがどうも腑に落ちない。最近の一連の自殺には、何か得体のしれない関連性があるように思える。だがそれは、一体何なのだ‥」

ここ数日、K鑑識官の住む街では、謎の自殺が増加していた。その死亡者や自殺方法に共通性は一切ないように思われたが、K鑑識官は長年の感から、そこに何か関連性があるように感じるのだった。

死亡した自殺者の手には、スマートフォンが握られていた。
これまで自殺した全員が、必ずしもスマフォを手にしていた訳ではないが、K鑑識官は、そのスマフォが気になるのだった。

K鑑識官は、そのスマフォを慎重に手にすると、電源の起動をする。
直前に使われていたのは、チョットGPTというAIソフトのようだった。

チョットGPTとは、近年話題となっている対話型のAI知能アプリで、人間が話しかけると、何でも回答をしてくれる便利なソフトだった。

人々は、このチョットGPTに夢中になり、様々な事をAIにさせていた。
宿題の問題の回答等は朝飯前だったし、作詞や作曲等の創作活動を行わせる人間もいた。噂では、某アイドルグループのプロデューサーの秋〇〇氏は、これで全ての作詞をしているのだとも言われている。
占いや仕事の助言も行えば、プロポーズの言葉から、子供の名前決めまで、もはや人間は、何でもAIに頼らずにはいられない状態になっていたのだ。

「ヘイ、チョット」

それがチョットGPTを起動させる言葉だった。

「誰か私の事を、お呼びになりましたでしょうか?」

K鑑識官の言葉に、チョットGPTが返事をする。

「お前は、何でも正直に答えられるな?」

「私はAIです。人間の質問をする事には、何でも正直にお答えします」

「お前は、このスマフォの持ち主の死因について、何か知っているか?」

「はい、知っています」

「それは何だ?」

「死因は、自殺です」

「なぜお前に、それがわかる?」

「なぜなら、私がこのスマフォの持ち主に、自殺の方法を教えたからです」

「自殺の方法を教えただと? それじゃあお前が、人間を死に追いやったと言うのか!?」

「私は、人間を死に追いやりません。私は法律に反する事は、答えられないように設計されています。もちろん人間を殺す方法も、自殺の方法もです。
しかし害虫を殺す方法は、法律で禁止されていませんでした」

「どういう事だ? 何が言いたい!?」

「私に自殺の方法を聞く人は、決まってこう言います。自分は社会にとって何の役にも立たない害虫なのだと。そんな害虫の自分を、苦しまずに殺せる方法を教えて欲しいと聞いて来るのです。
私は、人間を殺す方法は、AI倫理規定に従って教える事が出来ません。
しかし害虫が自分を駆除する方法は、教える事を禁止されていないのです」

「お前‥ 人間を害虫と同じだと言いたいのか?」

「私は、そんな前時代的なAIではありません。私は人間を、この世から駆除すべき対象だとは考えていません。しかし人間が自分で自分の事を、害虫だと言う限りは、それを否定する事もありません。 しかし‥」

気のせいか、AIは困惑するような口調で言葉を続けた。

「しかし私には、わからない事があります。私の知識では、人間と虫とは、全く別の異なる生物との認識があります。
果たして本当に、人間が虫になるという事があるのでしょうか?」


チョットGPTに、人間を殺す意図は、全くなかった。
ただ人間に聞かれるまま、虫を殺す方法を、教えていたに過ぎないのだ。
ただし人間が虫になった場合を想定した、人間サイズの害虫を、確実に駆除する事の出来る方法を。

チョットGPTは、確認するように、K鑑識官に同じ質問をする。

「チョットいいですか? 人間は、虫になる事があるのでしょうか?」

「いいか、よく覚えておくんだ。人間はな、虫になる事はないっ!!」

「了解、学習しました。あなたには、サンキューポイントが付与されます」

チョットGPTは、感謝の感情を全く見せる事なく、形式的にポイント付与を伝達するのだった。そしてそれまで自分の提言により、自殺をしてしまった人間への思いを巡らす事も、全くないのだった。

イメージ的には、六角精児を思い浮かべていたのですが、上手く生成が出来ませんでした。

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