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第256回、AI回答


A教師「はあ~」 行きつけのバーで、教師はため息をついた。

B教師「A教師、一体どうしたんですか? ため息なんかついちゃって」

A教師「いや、今宿題の採点をしているんだが‥」

20XX年、政府は機械的で統一的な教育をやめて、個々の思考を育む人間的な育成をする為に、OX式での問題形式を禁止にして、全ての問題を文章形式で解答する方式にする事を法案で決めたのだった。

B教師「あれ困りますよね。言ってる事はわかるんですが、問題を採点する教師の身にもなって欲しいですよ。何が最適解かもわからない、それぞれに文章の異なる解答に、採点を付けなければならないんですから」

A教師「いや、それぞれに文章が異なっているのなら、まだいいのだがな‥
子供達の提出した文章が、一字一句全て一緒なんだ」

B教師「そんなバカな!?人間が解答をする文章が、一字一句一緒なんて、そんな事があり得るんですか?」

A教師「それがあったんだよ。子供達は全員、AI回答を使ったのだろうな」

B教師「ああ、あれですか。チョットGPTとかいう、AIが人間の質問に文章で答えてくれるという」

A教師「そのAI回答を元に、自分で考えて自分の文章にするならいいのだがAIが回答した文章を、一字一句そのまま書き移しているだけなので、全員の文章が、全く同じになっているんだよ」

B教師「それでは、文章の解答形式にした意味が全くないですね‥ でも、いくら文章が全く同じだからといって、子供達が全員、AIを使ったとは限らないじゃないですか。だれか頭のいい人が書いた解答を、全員で書き移しているのかも知れないですし」

A教師「だとしても自分で考えていない事には、変わりはないがな‥
だがこの文章が、AIが回答した物であるのは、間違いがないんだ」

B教師「何でですか? 何でそんな事が、言い切れるんですか?」

A教師「人間は気が付いていない事なんだが、AIの出す回答には、AIにしか知り得ない暗号が含まれているんだ。だからその暗号が入っている文章は、人間でなく、AIが回答した物だとわかるんだよ」

B教師「まさか、チョットGPTの回答に、そんな物が含まれていたなんて‥
あれ?でも、AIにしか知り得ないのなら、何でA教師には、それが暗号だとわかるんですか?」

A教師「わかるさ、だってチョットGPTに採点をさせているんだからな」

B教師「‥AIが回答した文章を、AIが採点しているんですか‥

俺達教師は、一体何をしているんですかね‥

A教師「まあそもそも問題自体も、AIが作成をした物だしな。今の教育は、AIで全てが完結しているんだよ。 もしかしたら俺達は、人間ではなくて、AIの育成を手伝わされているのかもしれないな」

B教師「そんな冗談やめてくださいよ。それじゃまるで、人間がAIのメイドみたいじゃないですかっ」

A教師「みたいか‥冗談で済めばいいのだがな。 所でお前は、この後何か予定はあるのか?」

B教師「今日はこの後自宅へ帰って、バーチャル渋谷へ行く予定なんです。
90年代を再現した、エモーショナルバージョンが公開された所なんですよ」

A教師「単発ネタの小説に、様々な設定を盛り込んで来るんじゃないよっ」

B教師「? A教師、誰に言っているんですか?」

こうして教師達の、週末の一時が過ぎて行くのだった。

※本内容は、AIに依存していく社会の在り方を警鐘する物ではありますが、AIの持つ可能性を否定する物ではありません。人間が考えて人間がきちんと制御する限り、AIは人間のよきパートナーであり得るのだと信じています。

今回も決め手となる画像が得られなかったので、画像を3枚選んで載せる事にしました。

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