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第55回、トライガンでポエムをしてみた

人類が新天地を求めて、母なる星(実家)を旅立ってから、幾年月。
自分は、とある惑星(アパート)で、今日も日一日を生きながらえている。
惑星移民船のあの大惨事以降、機能をしなくなり、空調設備(エアコン)が
ロストテクノロジーと化してしまったこの惑星では、メンテナンスルーム
(浴室)で定期的に低温液体に浸かり、身体の温度調節を行う必要があった。

今も限界まで上昇した身体温度を下げる為に、メンテナンスルームへと足を運ぶ。しかしそこには、しばらく前から出現している、モンスターがいる。
人類より遥に先にこの惑星に生存している、原生生物のモスキートンだ。

自分は青年期にある一人の人物に出会ってから、その生き方に感銘を受けて無駄な殺生はしないようにしている。
あの平たい黒光りする原生生物ですら、なるべく殺さずに共存をしている。
しかし奴らだけは別だ。奴らは人間の生き血を好んですする天敵種なのだ。

自分で改造した青白いワイヤーライトが灯る、薄暗いメンテナンスルームで低温液体に浸かっていると、どこからともなく奴の羽音が聞こえてくる。
あの甲高い独特の音を響かせながら、姿を見せる事なく、どこからか自分を狙っている。身体をメンテナンス中の完全無謀議な自分は、奴の格好の餌食に違いないが、自分も何もぜずにだたやられるつもりはない。
浴槽を波立たせ、シャワーの雨を降らせて、小さな天変地異を引き起こし、ひとしきり抵抗を試みた後で、耳元まで液体に身体を沈ませて、周囲の様子をうかがう。

奴はどうなっただろうか?撃退する事ができたのだろうか?
奴の羽音は聞こえなくなっていたが、ほどなくして悟る事になる。
自分が奴の攻撃を受けてしまっている事を。

負傷した身体の耳先をかきながら、メンテナンスルームを出て、唯一空冷が機能をしている食糧庫の扉を開けると、濡れたままの身体になだれる心地の良い冷気を浴びながら、炭酸の抜けた飲み残しのビールを口にする。
もはや苦みしか残っていない液体が喉元を通り抜ける感覚を味わいながら、自分は青年の頃に出会った、記憶の中にうっすら残る赤いトレンチコートに逆立った金髪頭の口癖を口にする。
「ラブ&ピース」
ああっトライガンはやはり、旧アニメ版が最高だったな。

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