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半霊半物少女14

剣が突き立てられる
私の真横スレスレに
良くある脅迫

叫びのベクトルを
魔法で奪った男が
歪み切った
下品な笑いを浮かべ
倒れたままの私に
のしかかる様に馬乗りする。


「契約だ」
エノク
「?」

「契りを交わせ。貴様は悪く無い」
エノク
「 」

契り?
何を言っているのか
男は再び詠唱し私から
視力を奪った。

あの時以来の盲目が襲う。
でもブレなかった。

小さな声ではっきり伝える。

私は貴方と

契約なんてしない
取り引きもしない
貴方には従わない

絶対に。

私にのしかかる主に目掛け
ありったけの
ベクトルで睨みつける。

叫べなくても
見えなくても
方法はある。


ほら


ビル3階程の壁の上
どうやって探ったのかは
後で聞こう

マーゴ
「そこ、何しとん?」

フェンスに乗る
ポニーテールの彼女が
魔法の杖を手に
見下ろしている。


ビル程の高さから、
飛び降りる

男は魔法の詠唱を唱える


「リヒトフランメ!」

マーゴも詠唱を唱える
ありったけの水が
炎の柱目掛け相殺された。

水蒸気が発生
目の前が見えなくなる。

マーゴは迅速に詠唱

マーゴ
「バルヴィーストィウェーチェル」

水蒸気を蹴散らし
風圧で
落下速度がふわりと
止まったマーゴの体が
羽の様な軽さで着地した。

男目掛け躍り出る。
杖を男の口目掛け唱える

マーゴ
「クリスタルレーゲン」

男は上下の歯を砕かれ、
外れた顎の骨いっぱいに
めり込む水晶を
くわえたまま
私の隣で倒れた。

声にならない悲鳴が響く。

迅速にマーゴは
ベクターBOXで
男を格納。

「セリャド」

溜め息一つつく

マーゴは私より先に
違う人物を捉えていた。

マーゴ
「‥何見とん?」
エノク
「え?」

離れた場所に立つ
黄色いワンピースの
女の子がこちらを見ていた。

何をするでも無い
黙って立つ。

敵意の無い
澄んだ視線に
マーゴは落胆する。

ようやく私の方を向くと
仰向けの私を
起こしてくれた。

視力と叫びのベクトルを
魔法で奪われた事を
マーゴに伝え、
止まらない涙で震え
抱きしめるが‥

何故か黙っている。

エノク
「‥マーゴ?」

マーゴは杖を格納していない
そればかりか、
話に向けて詠唱した。

私から離れて
唱えた詠唱‥

石化⁈

足元から石に変わる。

エノク
「マーゴ⁈どうして⁈」
マーゴ
「すまへんな、エノク‥」
「終わったら戻したるさかい」
エノク
「説明してマーゴ、ねぇ?」

私の活動が停止。
静寂‥

マーゴ
「こっから先は、見せられへんのや‥」

少女はマーゴを見つめる。

唇を噛み締め、
堪えるマーゴが
ポータルを発生させ

その場から消えた。

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