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Ragura Floating World65

エノクです

朝から雨が降る
ラグラにも
雨は降る

夏休み中に降る
降水確率とか

そんな事は
お構い無し

ラグラの
テレビ放送は
真実を実況中継
する際には
無人カメラで
撮影される

衛星放送とか
そう言うのは
ありません


2階の私の部屋から
ママの笑い声が
聞こえる

中途半端な芸人の
不愉快なコントとは
違い、ママでも
ゲラゲラ笑う
バラエティ

笑いがピタリと止み
静まり返った

しばらくしたら
階段を登る音と共に
ドアをノックする
何だろう?

マヤ
「どうしよ」
エノク
「ん?」
マヤ
「カズの弁当置いてある」
エノク
「あ!」

パパが弁当
忘れて行った
様なので私は
持って行こうかと
ママに聞いてみた

マヤ
「エノクありがとう!」

ぎゅっと
抱きしめられた

エノク
「ミタマ、行こう」

机の上に伏せていた
ミタマが
私の肩に
飛び乗って来た

マヤ
「頼んだわ」
エノク
「行って来ます」


玄関の長い
傘を持って
外に出る
視界は雲の中
遠くは見えない

ネオコロッサルの
雨は上から
ではなく下から
横からになって
風によって
雨足も違う

エノク
「小さな傘の方が
良かったかしら」

しばらく
歩道を歩く
バス停留所まで
来たらしばらくして
バスが来た
端末を開く

パパに
連絡しないと

カズ
「エノク、どうしたの?」
エノク
「お弁当忘れたでしょ」
カズ
「あ!」
エノク
「今からそっち行くわ」

カズ
「ありがとう、
雨降ってるから
気をつけてね」
エノク
「は〜い」

乗り込んだバス

あらかじめ
オヤジみたいに
首にタオルを
かけていたので
肩に乗る
ミタマを
拭いてあげた

バスは大穴に
向かい走る
雨は横
下からビルの
隙間に降ってる

ランドシップの
奈落に向かって
伸びる街特有の雨

上に登って
しまえば普通の
雨に変わる

大穴に着くと
バスはゴンドラに
乗る

観覧車の様に
上に下に



パパの弁当と
でっかい傘

夏の雨が降る
大穴から
ポツポツ雫が
落ちる

他所とは違う
環境で生きると
天候に
文句は出ない

ここに来て
身体中の痛みを
感じる

何だろう?

内側から来る
痛みに耐えながら
ミタマが心配そうに
見つめる

エノク
「大丈夫、すぐに
治るから」



しばらくすると
思った通り
痛みは消えた

何だったのか

今の私には
分からない

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