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半霊半物少女31

タケの叫ぶ声が
みんなの叫びが
一気に遠のいて行く

私の五感が‥

私の生きる
この世界から
引き離されようと
している

タケの抱き抱える
肩の感触も遠のいている。

嫌だ‥待って‥
皮一枚でぶら下がる
意識を振り絞って

みんなに伝える

エノク「大丈夫、
心臓は貫いて無‥」

息が出来ない。
話せない。

器官に溜まった
血を吐き出す。

貫かれた真っ赤な
Tシャツが吐血で

染まっていく。


意識が混同する。

エノク
「わ‥私‥」


記憶の逆行‥

五感が、今の私の
状況を奪い去り
遡っていく‥

疲れ切った私

侵食者を知る前の私

逆行は勢いを増す

子供達の成長から
誕生‥

タケとの結婚
就職‥

恋‥

みんなとの出会い
上層への旅立ち‥

その終点が
私の16歳だった頃の
自分に掲げた

目標‥

精算‥

私は質問する

エノク
「私‥友達百人」
「‥出来た‥かしら?」



半開きの眼で
沈黙する


私の体

行動全てが

停止した瞬間だった

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