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半霊半物少女9


片割れの夢を話した

人間である私が
半信半疑で説明しても
その全貌を相手に
理解できる筈もなく

アンドロイドは再び
私を追い込もうとする

次は腕の一つも
へし折るつもりでは
無いだろうか

私は肩を押さえ逃げ回る

アスリートの様には走れないし
走る衝撃で肩の痛みが増す

走りにムラが出る
アンドロイドは2体で追う

回り込まれ、私は
取り押さえられた

肩を押さえつけられ
私は痛みで叫ぶ。

端末からはとっくに
全貌が記録された
筈なのに、打つ手はもう無い

ディズ
「残念ですが、創造主たる説得性に欠けますねぇ」
「人違いでしたか‥」

どうするつもりだろう‥
このまま人違いを
演じてしまえば

帰りたい‥


エノク
「 」
ディズ
「ん?」

大きな窓に
巨大な影が
殴りかかって来る

エノク
「来た‥」
ディズ
「 」

涙が止まらない‥

大量のガラスが
巨大重機の
ストレートナックルで
粉砕される。

ディズが回避する。
私を取り押さえた
アンドロイドが離れた

腕は屋内にまで入り込み
握られた鉄塊の拳が
広げられた。

低い声が私の
傷ついた心に
高く響く



ヤン
「乗れ」
エノク
「し、社長‼︎」


ヤン
「もう社長じゃねえ。ヤンで良い」
エノク
「はい‼︎」

重機の掌に飛び乗る。

エノク
「ヤンさん!タケは⁈」
ヤン
「テツ、イチ!」
「ドックを回れ!ユニット周辺が匂う」

テツ
イチ
「あいよ、兄貴!」
ヤン
「じゃあな。クソ野郎」
ディズ
「フフ‥」
「まあ、このくらいで良いでしょう。」

ヤンが離脱する。

私を掌に乗せて

街の展望が見える。
巨大な球体の
建造物が見える

エノク
「こんな場所だったなんて‥痛っ‼︎」
ヤン
「肩をやられたか」
エノク
「ありがとう‥ございます!」
ヤン
「‥いずれは絡むと思っていた」
「だが、もう心配は要らねえ‥」

どう言う意味だろう?

ごめんなさい‥

私には、何だか

良く分からない‥

ただただ震えが止まらず

丸くなって泣き崩れた

クビにされても

私は連絡先を
消さなかったから

大切な人達を

その期間だけで

断ち切りたくなかったから‥

ヤンさんが
これまでの経緯を
教えてくれた。

ヤン
「コロッサルグラッド・シエルから近いこのバルトロマイで、奴が一芝居立てやがったんだ」
エノク
「え‥?」

本来ならその
一芝居が冗談抜きで
行われた為、
天魔重工のヤンさんも
心配していたらしい。

ヤン
「お前なら、何かあれば、こっちに連絡が来ると踏んでいた」
エノク
「‥それでいつでも、対応の準備が出来てたんですね」

私に創造主の事を
黙っていたのは
何故だろうか、聞いてみた。

ヤン
「奴も結局はならず者だ」
「お前がその間、震えて過ごすより黙ってた方が怯えて過ごさすに済むだろう?」

私への配慮だったなんて‥

世の中にはここまで
やらかす者もいる


だから
それくらいは覚悟しておけ

とだけ警告された

天魔重工へとたどり着き、
ドック内に着地した。

ヤン
「騒ぎは起こしたくねえ。タケと合流したら、電車で帰れや」
「肩を診てやる。来い」
エノク
「‥はい」
「ヤンさん」
ヤン
「何だ?」

人間って


どうしてこんなに

難しいんだろう‥

どうして?

ヤン
「簡単だ」
「馬鹿で不器用なのさ」
エノク
「 」
ヤン
「俺もそうだった様にな」
エノク
「私は‥信じてます」

フッと笑うと
事務所から
レミィズさんが
駆けつけてくれた。

肩は脱臼で
折れては
いなかったそうです。

しばらく肩の
痛みを凌ぐと
ドックに帰還した
テツさんとイチさんの
重機が到着。

掌に乗る傷ついた姿を見て


私もタケも

全力で走る。

エノク
「タケ‼︎」
タケ
「エノク‼︎」

やがて‥後日分かった事

タケは、あの時

私を追わずに
待っていても
私が帰還出来た事は


タケが体を張って
追いかけてくれた

気持ちを無駄にしない
その為にも


内緒にしています。


序章 

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