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蒼穹の見聞録

小説
改修




エノク


です

風の流れ

鳥の様に

何処までも
飛ぶ

懐かしい
感覚

いつの記憶‥?


これは


夢?


嗚呼

先生のラボ
だったわ‥

「お!」

表情の無い
眼差しで
私を見る

確か
名前

考える前に
先生が
声を掛ける

先生
「気がついた様だな」
「良い兆候だ。夢を見ていたのだろう?」
エノク
「私‥また⁈」

また
シャットダウン
された
事になる

意識の
強制切断


エノク
「あの‥何回目でしょう?」

「1339回目。前みたいに
吹っ飛ばしては無いっスよ」
エノク
「 」

知らない

そんなに⁈

先生
「よさんか蒼穹(そら)」
「談笑する状態では」


ドクン‥


膝が
崩れ落ちる

立てない

立ってたままの
意識さえ

蒼穹と先生の
声掛けが
残響の様に
響き渡る

声掛けが
次元を
重ねる様に
反響し続ける


やめて

掻き消したくなる
本質の拒絶

二人が
協議している

もう嫌
このままでは

何か方法
自分の事は

自分が‥

ソムド

エンゲラ

違う

もっと

遺伝子の
羅列に
埋め尽くされた
配列の中
僅かな
誤差が
私の存在を
拒絶
している


私の
深層意識

書物って
言うのかしら
直感から
二つの項目を
選ぶ

エノク
「先生‥!」
「ミュートとエンゲの項目‥少しだけ下げて頂けますか?」


先生
「基準値の項目を下げると‥?」


エノク
「おそらくそこに‥原因があると思います」


先生
「良し‥賭けてみよう」


分かってる

私は
先生を
吹き飛ばして
翼を奪って
しまった

言い逃れなんて
出来ない

たとえ
拒絶の暴走の
影響
だったとしても

起動に
失敗した
ロボットの様な

やむを得ない
代償で
あっても

先生
「‥下げたぞ。どうだ?」


蒼穹
「エノクさん?」



どうかしら

目元が

視界が

聴覚
嗅覚
心が

魂が
纏まりを
見せていく

蒼穹
「おお!」
先生
「魂に輝きが戻って来たな」
エノク
「先生‥私」
先生
「遺伝子項目にはそれぞれ名称が定められている」
「それを理解できるとは。達観しているな。エノク」
エノク
「 」


先生
「感慨の涙か?」
エノク
「ごめんなさい」
先生
「過ぎた事。私も絶命する寸前だったが命有れば良い」


詫びた

何度も

先生の
触れる手が

暖かい



もう大丈夫です

エノク
「先生‥ありがとうございます」


先生
「良い。義体も色付いている」
「正常だな」

震えが止まらない

これまでの
経緯が
恐怖が

一度に

蒼穹
「そろそろ経緯を説明しても良いんじゃないスか?」


先生
「私が語るべきでは無い」


蒼穹が
私を凝視する

私はしばらく
泣いていた

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