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半霊半物少女41

しばらく
震え上がっていた
イーノとロカ‥

ようやく落ち着きを
取り戻し、タケの所へ




タケ
「遅かったな?」
エノク
「デニッシ族の足止めが
あったから」
タケ
「何ぃ⁈」
「大丈夫か?」
エノク
「大丈夫も何も、
こうして戻って来れたわ」

私が笑顔に答える。

イーノもロカも、私から
離れようとしなかった。


エノク
「さ、支度支度!」
タケ
「 」
エノク
「カズ、火おこし頼むわよ」
カズ
「わかった」



気持ちを切り替える
イーノとロカを軽く宥め、
タケが準備してくれた
食材を車から
運び込む事にした。


エノク
「あなた随分奮発したわね⁈」

食材は鮮度の良い
野菜と上質な肉。

ワンランク上の贅沢な
品揃えだった。

イーノと鉄板に油を引き
頃合いの熱量で次々に
焼き始めた。

エノク
「ん?」

いつの間にか
クーラーボックスの蓋が
開いている。

タケを見ると、
ぐいっと、
缶ビールを二缶程
飲み干した所だった。

エノク
「タケ⁈お酒
持って来たの⁈」
タケ
「お前も飲むか?」

朝まで酔いが残れば
運転は私しか出来ない

エノク
「飲まないわよ」
タケ
「苦労の後のこの一杯」
エノク
「ご褒美ね」

タケにはこれまで
苦労させた事は認める。

妻としても支える
義務もある

私は笑顔で焼き上がった具材を
タケに振る舞う。

タケがそんな
私をじっと見つめた。
酔いで顔真っ赤で

エノク
「ん?」
タケ
「改めて良い女だよな」
エノク
「ん??」

ガバッと私を抱き寄せ
密着する。

息遣いが荒く酒臭い。

真面目で誠実な部分が
酔いで抜け落ちている
タケのジト目視線に
私も視線が泳ぎ出し
戸惑ってしまう。

エノク
「た、タケ?」
タケ
「エノク、四人目どうする?」
エノク
「 」
「やめて子供の前で」
タケ
「その困ったお前の表情、
久々に見たぜ」

それが最高だと
私の後頭部を支え
私にキスをした。

エノク
「 」
イーノ
「 」
カズ
「 」
ロカ
「パパ?」

逃げ場の無いキス。
私を家族、妻の存在を
すっぽかし、女を本質で
見るベクトル‥
子供達の前で
見せるものでは無い
慌ててタケを静止した。

エノク
「タケ!それ以上は駄目!」
「度数9%を2缶って‥」
タケ
「‥ん?」

子供達の冷めた
視線のベクトル

一目置いていたカズも
流石に軽蔑の眼差し

飄々と笑うタケ。

エノク
「ほら、冷めるわ。座って」
タケ
「お、盛ったな!」

いつも有り難う、
お疲れ様と伝え
タケを静止させた。

蟠りや葛藤‥
タケの思いを包む


エノク
「さ、あなた達もよ。
そんな目でパパを見ないの」
カズ
「けど‥」
エノク
「家族でしょう?逃げ道は作ってあげるものよ」

そう

完璧なものなんて無い
その為の逃げ場
その為の逃げ道

恋愛の末に

求めて
受け入れて

家族となるなら
互いの逃げ場
互いの逃げ道

エノク
「それを確保する
必要があるの」
「大人じゃないと
わからないわ」
カズ
「パパが大変だったのはわかる」
「ママは?」
エノク
「あら、私に逃げ場
逃げ道が無いなんて
いつ言ったかしら?」
カズ
「 」

家族に助けられ
仲間にも助けられた

逃げ場逃げ道
創造主の特権だ

エノク
「あなた達にも
助けられたのよ」
カズ
「そうかな‥?」
イーノ
「うーん」
エノク
「ありがとうね」

ロカを抱きしめる。

頬をピッタリくっつけた

イーノ
「わかんないよ〜」
エノク
「理解は難しいわ。
大人になってもね」
「さ!食べて」
ロカ
「ママ、おこげさん」
エノク
「あらら笑」
タケ
「よこせ!つまみだ‼︎」

がっつくタケ

笑う私


此処まで来た
私と家族で

やっと‥



食後

私は遠くを見つめる

私と

家族の未来


ラグラの未来を


エノク
「良い風ね‥」
イーノ
「うん!飛んでっちゃいそう」
エノク
「もう飛んでるわ」
イーノ
「え?」

此処を何処だと
思っているのだろう

エノク
「此処は浮世。ラグラ」
「私達人類の翼よ」
イーノ
「‥わぁ」
「素敵‥私、やっぱり
ママの様になりたい!」
ロカ
「ロカも!」

タケ
「どうした?酒はまだ早いぜ」
カズ
「パパ」
「大人ってそんなに‥
難しい?」
タケ
「そうだな、大学の
問題よか難しいん
じゃねぇかな」
カズ
「パパにも相談するかも‥
しれないけど良い?」
タケ
「そう言う事は、今しろ」
カズ
「ええ⁈やだよ」
エノク
「あら、隠し事?」
カズ
「///」
カズ
「赤いぞ、顔」


家族で笑う


調和が包むこの
世界で


私達は生きる。

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