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半霊半物少女13

夢‥?
場所が違う

微睡みの空間
よくわからない

手を伸ばしても
届かない距離に
立つ彼女

蒼穹

エノク
「もう会えないと思ってたわ」
蒼穹
「会えるよ。伝えに来た」
エノク
「え?」
蒼穹
「禁断症状」

ドクン‥
何だろう‥

私の事だとは
理解できるが

禁断症状?

エノク
「どんな症状なの?私これからどうすれば、どう向き合って行けば良いの?」

わからない
そんな事自分で
考えろ馬鹿、とまで
言われる覚悟だけど。

蒼穹はそんな
素振りを見せず
直立不動で答える

蒼穹
「自分は断言出来ないけど、こちらは大丈夫。乗り切った。次はエノクの番」
「人類の本質が調和に向かう。その衝動が禁断症状の鍵になる」
エノク
「 」
蒼穹
「ラグラの人類の一人として、君が一人歩き出来るくらいの成長が要求される」
エノク
「一人歩き‥」
「タケと一緒になれないって事?」
蒼穹
「そう言う意味じゃ無い」
「調和は大事。みんなを大切にね」
エノク
「もっと強くならないと‥?」
蒼穹
「強いよ。辛いだろうけどね」

わかってくれた
涙腺が緩む
走って抱きしめたい。

蒼穹
「君とは指一本触れられない」
エノク
「え?」
蒼穹
「それでも、愛してる」






病院のベッドで目覚める
嗚呼、退院日だ

私は意を決して
タケの病室に向かう。

眠るタケを起こした。

タケ
「んあ?何だ、エノクか?」
エノク
「大事な話があるの」
タケ
「‥⁈」

それは、これからの事
もし何かあった時の算段。

タケは見開く視線で
息を飲んだ。

タケ
「俺じゃ力にならねーか」
エノク
「タケが大好き」
「それでも」
タケ
「 」
「誰の番号だ?」

私は数名の番号をタケに渡す。

私にもしもの事があったら
端末でまとめて
発信出来る様に、と

エノク
「デニッシの時」
タケ
「?」
エノク
「端末は取り上げられてたの」
タケ
「 」
「無防備だったのか‥」
エノク
「ん‥」

あの時、
叫ぶエイマは
破壊されず電源を
切られたけど

この端末には、今でも
その面影が残っている。

だから、呼べない
助けの代わりにも

タケにも出来る事がある。

エノク
「みんなに伝えて。助けを呼ぶ為にも」
タケ
「お前‥」

私は笑って見せた
目が潤んでいても‥



そして、退院。

女子寮に戻って来た。

変わらないエントランスの
情景が映る。

気の緩みも無く、私は歩く。

自分の部屋に戻って来た。

ふと思う。

私が創造主である事を
一体何人が気付いて
いるのだろう。

私はまだ自分が
創造主である自覚が無い。

そうした目覚めも
あるのか、
蒼穹に聞いておけば
良かったと思う。

そしてこうも思う。
そんな自覚など必要無い。
知らない方が
良い事もある。

あの時の蒼穹の話では
禁断症状以外は
口を出さなかった

エノク
「愛してる‥か」

指一本触れられないのに
そう思ってくれていた。

エノク
「嬉しい」

「嬉しいか?」
エノク
「 」

誰?

そう思う前に
体が動いていた

言葉も叫びとなって
声を張り上げる

エノク
「誰かあ‼︎‼︎」
「マ‥」

口を塞がれる
男の耳が尖っている。

デニッシ族の男
私は口を塞がれた
勢いで床に叩きつけられる。

塞いだ手が光り詠唱された。

何?

エノク
「何‥したの?」

「お前の叫びはうるさい」
「来い」

私と男の周りが光る
これは‥

エノク
「ポータル?」

駄目、大きな声が出せない。
ポータルに引きずり込まれた





転送された先で
倒れたままの私に
頭を押さえつけられ
ぐいっと顔を
近付けられる。

場所は世界樹の下
立ち入り禁止区域
精霊族がこちらを
注目していた。


「弟が世話になった」
エノク
「知りません」


最初の侵入で
リーダーをしていた
男らしいが私は知らない。

男のピアスが光り
低い声が響く

「リベラシオン」


呼び出したのは剣
私を刺すのだろうか?
それとも

剣の刃が私の
顔面に向けられ

迫る

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