The blue sky of the outlook35
シュコー‥ピッ
シュコー‥ピッ
自分の息遣いがおかしい。
自分の顔面に何かしらの
装着感がある。
それに聞き慣れない電子音。
何かしらコレ?
視界を遮るものに触れようとする。
体に力が入らない事に気付いて
脱力する。
私に話しかける知らない声。
「エノクさん、お目覚めですか?」
エノク
「ん‥誰?」
「此処が何処だかわからないでしょう?病院よ」
エノク
「え?」
別に悪いとこなんて‥
そう言えば私‥
脱力感が半端なく襲う。
話す気力がない。
私は再び眠りに落ちた。
私が再び目覚めたのは三日後
三日⁈
そんな寝てた⁈
事情があってその説明を整理する。
にわかに信じがたいが。
私は盲目と石化状態から
元の姿に戻ってきたらしい。
しかし、初めての魔法使いがもたらした詠唱効果の代償が
身体的負担に耐えられず、意識低下を引き起こしているとの事。
デニッシ族にかけられた
盲目と石化の詠唱効果
詠唱効果の解除にもたらす代償の
計4回分の魔法を一度にかけられた為、身体に負担がかけられている。
結果、私の体力は回復魔法の詠唱効果によって一方的に削られてしまうらしい。
回復には数日かかり、今日で三日目と言う事です。
意識回復から、半身を起こすくらいは出来るようになる。
顔面の装着感は相変わらずです。
少しだけの面談が可能になった事を知り、誰か見舞いに来るのだろうかと内心ソワソワした。
扉を開ける音。
病室に誰か入って来た。
「うお‥⁈凄いの付いてんな。調子どうだエノク⁈」
エノク
「‥タケ?」
アリサ
「お姉ちゃん!体大丈夫?」
エノク
「大丈夫よアリサ、病院だから静かに‥て、無理ないわね」
アリサが私の手を取る。
心配かけてしまった。
‥あれ?
シャルの気配が無い。
エノク
「アリサ、シャルは?」
アリサ
「いないよ。急に‥」
エノク
「え⁈どう言う事‥」
デニッシ族の騒動以来、シャルに何かあったのだろうか?
少し沈黙の後、タケも心配そうに話す。
タケ
「くそっ!奴ら教室にまで侵入して来やがったんだ。」
エノク
「え⁈みんなは無事なの?」
タケ
「お前ら、エノク心配してんぞ」
ビオラ
「エノク、本当大丈夫なのか?」
エノク
「ビオラ?ええ、前まで起き上がれなかったのよ」
みんなの声が聞こえる。
マーゴ、クアル、ネネ、ネグロ、ハチ、ニルにユノ、ミオ、カイワ、ノイル、マナ。
それに。
ディール
「あなた達、募る話は退院してからよ。下がんなさい」
グレッゾ
「大事な話がある。すまないが席を外してくれ」
渋々部屋を出るみんな‥。
けど引かないメンバーもいた。
ディール
「タケ」
タケ
「蚊帳の外かよ⁈」
グレッゾ
「面会の時間は限られている。話せ」
ディール
「ハァ‥逮捕されたデニッシ族とナーシャについてね」
エノク
「ナーシャ‥?」
ナーシャに会って無い。
そう言えば‥
ディール
「今回の騒動は公に公言しない事。念を押すわよ」
エノク
「どう言う事ですか?」
ディール
「ナーシャの件だけど、デニッシの一件の記憶が無くなっているのよ」
エノク
「 」
「記憶‥喪失?」
ディール
「事件の記憶が飛んでるのよ。自分があの一件に関わっていた事を覚えてない様なの」
エノク
「無事なんですか?」
ディール
「退院には少し時間がかかるけど、命に別状は無いわ。安心なさい」
少し安堵した。
けど‥
エノク
「先生」
ディール
「何かしら?」
エノク
「もっと彼等と仲良くできないんでしょうか?」
ディール
「本質は変わらないわ。触れる事さえ叶わない。だからデニッシ族の事は忘れなさい」
エノク
「そんな‥」
シャルは‥シャルはどうなるの⁈
まだ幼いのに!
聞きたい。
問い詰めたい!
それなのに‥
伏せられる。
今回の件は男性陣が引き起こしたものなのに‥
エノク
「‥‥っ!」
グレッゾ
「すまなかった。もっと早く手を打てば良かった」
エノク
「いえ‥」
ディール
「それじゃ、そろそろ行くわ。お大事にね」
エノク
「ありがとう‥ございます」
シーツを握りしめる。
タケ
「あのチビ‥見ないな」
エノク
「‥誰?」
アリサ
「シャル?」
エノク
「⁈」
タケ
「誰だお前⁈」
「シャルがどうしても会いたいと言って聞かないのでな」
タケ
「だから誰だって‥」
シャル
「母ちゃん‼︎」
涙声で私に駆け寄って来た。
アリサがグッと堪える。
シャルの隣に立っていたであろう少女が私の元に近づいて来た。
「ルティだ。妹が貴女を母の様に慕っていた」
エノク
「ルティ‥」
ルティ
「部族の戒律に巻き込んだ無礼を許してほしい」
エノク
「‥‥シャルをどうするつもり?」
シャルが少しビクっとなり小さな肩が竦む。
私はいつもより声のトーンを低くしてルティと言う少女に問う。
ルティ
「この町には居られない。これまでシャルを危険な目に合わせたく無く、部族の説得に全力を注いだが、その度に何度も傷が増える一方だった。まさか貴女がこんな‥」
タケ
「それで‥こんな傷だらけだったのかお前」
エノク
「 」
ルティ
「部族を代表して、心から詫びる。どうか‥」
エノク
「許さない」
タケ
「⁈」
シャル
「母ちゃん?」
エノク
「ちょっとあなた、手ェ貸しなさい!」
見えない手探りで、ルティの手をやっと掴み取ると、力を込めて握りしめた。
エノク
「調和が取れないから街を離れるですって⁈だったら‼︎」
ルティ
「‥⁈」
エノク
「必ず戻って来なさい‼︎戻って、友達になって‼︎」
ルティ
「‥⁈」
シャル
「 」
エノク
「お願い、約束して‥必ず‥‥戻っ‥」
タケ「エノク?おい⁈しっかり‥」
シャル
「母ちゃ‥」
ルティ
「 」
「何を騒いで‥エノクさん⁈あなた達、面会の時間はもう終わってます!もう!さがんなさい‼︎」
部屋を追い出し、看護婦が私の検温検査を始めた。
私は、朦朧とした意識で昏倒するまでそう時間がかからなかった。
廊下でルティが口を開く。
ルティ
「何故、あそこまで友を求める⁈」
タケ
「わからねぇか?」
アリサ
「お姉ちゃんだからだよ」
ルティ
「‥‥⁈」
アリサ
「シャル、約束」
シャル
「アリサぁ‥」
タケ
「やぶんなよ」
ルティ
「‥‼︎」
タケ
「アイツは、約束っつったろ?」
ルティの眼差しが揺れる。
ルティ
「ああ。そう‥だな」
ルティが少し微笑む。
こうして、私は無事退院する頃には、学校は夏休みになっていた。
シャルのいない夏が
始まる。
一章 完結
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