見出し画像

蒼穹のフリューゲル16

ダンボール
古紙回収場

一階のフロアの
奥だとタケが
教えてくれた

私が抱えた
ダンボールを
下ろすと
タケは次々に
回収ダクトに
全部放り込む

エノクです

少し
ブレたのか

傷ついたかは
分からない

私は

何故か笑顔を
作れない

タケ
「エノク、三つ束も
抱えるなって‥
どんだけ力あるんだ」
エノク
「車よりは重い物
持った事無いわ」
タケ
「 」
「‥ダンベルと間違えて
ないか?」
エノク
「ありがとうタケ」
「手伝ってくれて」
タケ
「いや、良いって」
「しかし、あのヤロ‥」
エノク
「他の種族にも同じ事
言うの?あの子‥」
タケ
「いや‥俺には
しつこいから迷惑してる」


他所では
良い顔をする
者は特定居るが
その類だと

たまに彼に
接する女子に
対しては
敵対する為
嫉妬深い事から
本人曰く
迷惑している
のだとタケは言う

エノク
「良く無いわ」


タケ
「ああ、俺も一括
してやらないと」
エノク
「いえ、そうじゃ無くて」
タケ
「ん?」


代償の話だと
私はタケに
説明する

タケ
「等価交換?」
「錬金術か?」
エノク
「等価交換は産声から
始まるの」
タケ
「そんな事も知ってる
のかエノク⁈」
エノク
「夢や希望に満ちて
生きた人は代償として
その対価を得る為の
課題をこなすでしょ?」
タケ
「 」
「ああ」
エノク
「芯から歪んで行けば
それなりの代償も
覚悟しなきゃ
ならないわ」
「だから間違えちゃ‥」

背後の
ベクトルが
くさい‥
振り向くと
女子が居る

女子
「何それ」
「私が歪んでるって?」
タケ
「お前、消えろって!」
エノク
「調和は必要よ」

大きな
お世話だと
食ってかかる
真っ直ぐ
痛いベクトルと
死臭を向けて
私に向かって来る

仕方ない
ごめんなさい

一本の血管を
足元から伸ばし
彼女の後ろ髪を
後頭部から
そっと接触
させる

女子
「ひっ!」
エノク
「 」
タケ
「何驚いてんだ?」
女子
「今、私の髪に‥」
「キャア‼︎」

ふくらはぎに
血管を接触
させる

悲鳴を上げ
たまらず
逃げ出した

エノク
「はあ」
タケ
「何だアイツ?」
「ん?」
エノク
「こんなものよ」

血管を
格納すると
タケは
気付いたのか
吹き出す様に
笑いころげた

取り繕っても
人間の絶対領域は
何処かに
綻びが存在する
それだけ臆病な
要素がある

エノク
「しばらくは警戒
しなきゃ、ね」
タケ
「悪いな、けど面白いな
お前のその話」
エノク
「ん?」

いつの間にか
私は
笑顔を
タケに見せていた

やっぱりだ

彼は

彼の側には
とても良い
居心地を
感じる

そう思えた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?