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ヘッドピンを狙え!

 ボーリングでストライクを取るためにはヘッドピンを倒さなければなりません。ヘッドピンとは1番手前のピン(1ピン)のことを言います。ゲームに勝つ秘訣は、ヘッドピンを必ず倒す気持ちで投球していくことです。

 日露戦争でのヘッドピンは、陸戦では「二百三高地」を陥落すること、海戦では、バルチック艦隊を撃滅することでした。

 経営や商い、そして人生にもヘッドピンがあります。やみくもに努力するより、ヘッドピンを見つけて、それを倒すことに全力投球するのです。

 私はそれこそ「リアルガチ」で繁盛店づくりに四半世紀以上格闘しています。スタートは売場面積30坪の青果店から始まり、80坪のスーパーマーケット、その次は100坪、150坪、250坪、そして現在は500坪とおかげさまでそれぞれ坪効率1,000万円超える繁盛店をお手伝いさせた頂くことができました。坪効率とは、1坪当たりの年間売上高がことです。

 現在、チェーンストア平均が坪効率200万円を割り始めています。売場面積500坪の新店を作っても年間10億円も売れないということです。私のお手伝いしたお店では、坪効率2,200万円をいうお店もありました。売場面積100坪なら年商22億円です。

 不振店を繁盛店にする秘訣があるとすれば、間違いなくのその一つが「ヘッドピンを狙う」ことです。

鮮魚部門、月商1,000万円から5,000万への道

 鮮魚部門を例にとります。当時、30坪で月商が450~600万円、御主人(社長)が毎朝仕入れに行き、仕入れから帰ると刺身を切って、パートさんがパック詰めします。営業担当は奥さんです。

 いくら頑張っても20数年30万円以上売れた例(ためし)がありません。サンマ、アジ、イワシは仕入れ値の倍の値付けをし、御主人の仕事は、マグロ、タコ、アジなど1パック280円の刺身を切ることです。

 これらを止めてもらって、丸魚や秋鮭のフィレーなど手をかけない商品は、“広告宣伝費”代わりに安く売りました。当時、サンマ1尾39円で売ると1,000匹売れました。10円で売ると4,000匹売れたこともあります。秋鮭フィレーを1枚390円で売ると200枚売れました。

 マグロはキハダ、ビンチョウなどの生マグロ、刺身を切ることをやめ、ブロックとサクで売り込みをかけました。するとぐんぐん売上げが伸び、日商50万円、ときには80万円売れる日ができ、月商は1,000万円を超えたのです。

 1,000万円を超えたら次は2,000万円です。同じやり方では、2,000万円は到底売れません。次から次へと競合店も出てきます。現在の売上げを維持することがやっとです。

 月商2,000万円売るためには、マグロ専門の仲卸に頼んで、良質なバチマグロを入手しました。それを中トロは2サク売り、赤身は3サク売り、大トロは、9点盛りの真ん中に盛り込みました。ブリは養殖ブリをステーキカットで熱く売る、塩鮭は8kg7枚入りにこだわり、カマを落とした後、6切れを2段重ねにして1パック598円などで売りました。連日、200パック売れました。

 冷凍魚、養殖のウェイトをかけ、厚切りカット、ボリューム感、鮮度感のある盛り付けをすることにより、最高日商は100万円を超え始め、月商は2,000万円を超えました。切身や塩干は、インストア100%にこだわり、“鮮度感”を追求し続けました。アウトパックの商品を仕入れて並べるのは簡単で効率的です。私たちは、“効率”よりお客に与える印象“効果”を選びました。

 月商3,000万円売るためのヘッドピンは、バチマグロを止めて、本マグロのみに変えることです。本マグロだけで月商500万売るためのポイントは、平日、本マグロの頭を安く分けてもらって、牛刀を使って刳(く)り抜いて目玉、頬肉、脳天など稀少部位を販売することです。牛刀はステンレス製なので、骨に沿ってしなるので、頭の解体に向いています。

 平日来店してくれるお客は“金”です。少し練習すれば、7分程度で頭の解体ができるようになります。そして店頭に立ち、煮付け、塩焼き、照焼き、ステーキ、刺身など食べ方を“講釈”するのです。そして、週末は正肉メインで売ります。

 塩鮭は、プレミアム銀鮭を導入します。銀鮭のグレードは、例えば、ウロコが一部無い、皮目にキズが有る等で、グレードが分けられます。プレミアム(1級品)→G-1(中間)→インダストリアル(1.5級品)です。日本国内で出回っている銀鮭のほとんどが、G-1です。一番大きく脂がのった3kgアップのプレミアム銀鮭は、ふっくらジューシーで一度食べたら、虜(とりこ)になります。1切れ200gにカットして180円で売ると、1日1,000枚売れました。

 ブリは10kgアップの天然ブリに挑戦です。「本日10.5」「今シーズン最大級10.8」とかコンマ以下の数字にこだわるのです。「ひみぶり」が手に入ったらお祭り騒ぎです。最高日商が200万円を超えたら、月商は3,000万円突破します。

 月商3,000万円から5,000万円を目指すには、ますず、対面丸コーナーを設置し、金目鯛、きんき、はたなど高級魚を並べること、金目鯛、ブリは片身売りをすることです。
 
 次に、同じく対面貝類コーナーを設置し、岩牡蠣、真牡蠣、殻付き帆立を売るこむことです。岩牡蠣は1日200個売れるようになれば、魚好きだけでなく料飲店の仕入れ担当者の支持を得た証(あかし)です。

 そして、銀ダラ、サワラ、銀鮭などの西京漬けをコーナー化して売り込むことです。すると、押しも押されぬ地域一番店となり、鮮魚部門の月商は5,000万円を突破します。

 各段階でのヘッドピンは異なります。扱い商品を変えること。品揃えを変えることは、仲間を増やすこと。従業員の目利き、料理技術の向上だけでなく、取引先の協力も不可欠です。そして、お客の信頼を絶対に裏切らないことです。もう一度行きたい売場、また食べたくなる味を目指して、切磋琢磨し続けるのです。

 ヘッドピンを狙わない商いは、お客の支持を失うとともに、お店を、仲間を危険にさらすことになるのです。儲かってるから変える必要ないじゃないか、そう考えた瞬間、商いの神様はあなたを見放すでしょう。

 何のために上を目指すのか。それは物を売るのではなく“感動”を売りたいからです。

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