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焙煎過程のお話

焙煎過程についてのお話をひとつ。今回はちょっと焙煎する側の記事になってしまうかなぁ と思います。

焙煎前のコーヒー豆の色は薄いベージュ色で、普段は見る機会があまりないと思います。色もそうなんですが、においも結構特徴的で、初めて生豆を触った際は、グリーンピースのにおいに似てるなぁ と感じました。
今でこそあまり何とも思わないですが、初めは1時間くらいすると、においで疲れるなぁ という感じでした。
そんな生豆に火を入れて、最終的に美味しいコーヒー豆になるまでの過程を書いてみたいと思います。
ざっくりと、生豆を焙煎機に入れて、焙煎機に付いている「焙煎機内の温度計」と「コーヒー豆の温度計」に表示される2つの温度を見て、味などを調整していきましょう という話です。

①生豆の投入
申し訳ないのですが、手網焙煎はしたことがないので、焙煎始めまでに何をするのか分かりませんが、焙煎機を使う場合は、投入までに焙煎機を温めておきます。 何℃まで焙煎機を温めるかは「焙煎する豆の量」「密度などの豆の特徴」「気温」「湿度」「どんな仕上がりを目指すか」によって変わりますが、後述の「目指すボトムの温度」を逆算して温めます。
焙煎機が温まりきったら、生豆を投入します。因みに弊店では1回250gで焙煎することが多いです。投入したら、生豆が焙煎機の熱を吸収して、焙煎機の温度が下がっていきます。下げ止まったときの温度を「ボトム温度」と呼び、焙煎する際の一種の指標になっています。因みに弊店ではボトム温度を80~100℃になるように調整することが多いです。

②水分を飛ばす
焙煎機でも手網焙煎でも、生豆に火を入れることで中の水分が蒸発し、だんだんと色が濃くなり、ベージュ→小麦色やキツネ色に変わってきます。においも蒸されたグリーンピースになっていき、色が変わりきったところで、においの青臭さが減っていきます。大体150℃あたりでしょうか、そこまでの過程を一般的には「水抜き」や「Drying phase」と呼びます。
この過程を短くする(火力を上げる)と焦げやすくなり、長くしすぎると味がぼやける結果となってしまいますので、上手い具合のところを見つける必要があります。また、焙煎機によって適切な時間が大きく異なるのが難しいところです。弊店では投入~水抜きで5分弱といったところでしょうか。
半熱風式や熱風式の焙煎機の場合は7分程度かけることもよくあるようです。

③メイラードやキャラメライゼーション
「Drying phase」を超えると、豆の成分が火や水分により様々な変化が起こります。色はこげ茶になっていき、豆の種類によっては形が少ししぼんで小さくなり、香ばしいにおいになっていきます。クロロゲン酸が分解されたり、香気成分が生成されたりとありますが、ややこしいので割愛。
温度帯でいうと、150~180℃あたりになり、次フェーズの「1ハゼ」までのフェーズとなるのですが、1ハゼが発生する温度も焙煎機や豆によって異なるので、あくまで目安ということで。
このフェーズで温度が高すぎると、1ハゼの時点で機内温度が下がりにくくなり焦げてしまう、温度が低すぎると1ハゼの温度が低くなり味がぼやけてしまいます。ここの温度管理がうまくいかず、ハゼの段階でフレーバーがまとまらない ということもあります。

④ハゼ
どんどんと豆の温度が上がり、175~200℃の段階でポップコーンのように豆がパチパチとはじけます。ここの音、結構好きです(ASMR動画ないかな?)原理はおそらく焚火のパチパチ音と同じだと思います(細胞壁が破裂する音)。
この段階でも様々な反応が起き、フレーバーや香りが作られていきます。特にハゼ段階での反応が大きいのかな、ここでの火力調整はかなりシビアです。火力が高いと勿論焦げるし、強めだと尖った酸味になるし、低すぎると藁っぽい味になるし、低いと思って火力を上げるとアフターフレーバーに嫌な苦みが生じるし。
また、エチオピア ナチュラルの豆に多いのですが、ハゼが起きにくいこともあります。めっちゃ小さい音でハゼたり、少し火力が弱いとハゼなかったり。その時は「しまった!」と思いますね。
ここの火力調整は、わざと大げさにしてどんなフレーバーになるかを実験しまくります。ほんと、豆の特徴によってだいぶ左右される箇所なので、ここの試行錯誤は大変ですし、その分意外な一面が見えたりで面白い部分でもあります。因みに弊店ではハゼ後1分強~1分40秒あたりで煎り止めることが多いです。

⑤冷却
焙煎が終わるとすぐに焙煎豆を冷却します。焙煎機に冷却ファンが付いているのですが、早く温度を下げて反応を鈍くしたいので、PC用のエアダスターも使って常温に戻します。煎り止めすぐの豆は200℃近いですからね、火傷注意です。
終わったら重さが何%減ったか、豆の色や挽いた際の色、色の標準偏差等を測って終了です。アグトロン値の標準偏差が12以下だと、きれいに焼けたなと思ってテンションが上がってカッピングが待ちきれないこともしばしば。その後、少し焙煎機を冷却させて、また豆を焙煎する の繰り返しですね。
冬はいいんですけど、夏の焙煎は結構きついです。部屋の中がかなり暑くなります。万が一にも途中でブレーカーが落ちると嫌なので冷房等も切ってますし。

そんな感じで毎日ではないですが焙煎を続けております。
焙煎すると生豆の時についている皮が剥がれて部屋に散乱するので、掃除も大変ですが。
焙煎している時が癒しの時間でもありますが、心が休まる一方、常に温度や豆の状態、においの変化を確認しているので、ぼーっとはしていられず集中もしている、なんか変なストレス発散方法?でもあります。

そんな趣味から始めたコーヒー焙煎ですが、美味しいコーヒーを提供している、そして提供し続ける自負はございますので、よろしければチャンネル登録、高評価、そしてコーヒーの購入よろしくお願いいたします(なおYouTubeはやっていない模様)。

今度は備忘録もかねて、がっつり焙煎の化学反応について書いてみようかなぁ。

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