2020年正月

2020年正月
私はこれまでヴァイオリンの塗料と、それに関するメディウムやペイント関連の本を調べて実験してきました。まず、16世紀から17世紀のストラディバリやアマティ、ガルネリのヴァイオリンが音が最高で現在に至るまで、「本物の音」はその時代の製作楽器が基準となっています。これはどうしてでしょうか。木工技術、構造全ては解体され分析されて殆どの物理的資料は公開されています。17世紀末と現在までの間に何が足りなかったのでしょう。何が違うのでしょう。私の言いそうな答えはもうお分かりだと思います。
ヴァイオリンニスの部分だけ、当時の再現を果たしていないのです。
ヴァイオリンニスについての著書はあまり多くはありません。これらはほとんど内容的には、結論として16-17世紀のオイルニスの再現とはなっていません。間違った結論でも「ストラディバリウスのニスが出来た。」という人があまりにも多かったのです。
私は「出来ました」とは言いません。しかし、一番近い線を行っている感触はあります。論争の一番は「オイルニスの正体は何か。何を使っていたのか。」これに反応した世間はほとんどありませんでした。というのは、松脂と亜麻仁油という分析結果が発表され、みな落胆したのでした。「ニスに秘密はない。ただの松脂とオイルだ」という。しかし、一見単純で変えようのない結論ですが、よく考えると松脂は当時は今の品質ではありません。また時期的に一番近いボナーニやマルチアナ文書、デ・メイヤーンの著書から得られる製法と錬金術側からの装置の資料からは、生の松脂を密閉系で蒸留する方法で変性しています。ここが再現のヒントとなりました。
 私は10年前山梨の公園の松林で赤松の樹液を拾いました。それをニスにすると赤いきれいなオイルニスが出来ました。これがマルチアナニスを支持するきっかけとなりました。マルチアナヴァーニッシュ処方がストラディバリ時代の主流のニスであるということは、一般には論じられてもいませんし、結論されたものでもありません。
しかし、私はそれを支持し作り続けます。
具体的なオイルニスの作り方は今後、まとめて英訳して発表しようと考えています。
もっとも、これまでに紹介してきた文章、著書の中に答えが既にあるのですが、図解と現在最適化された製法は存在しません。2020-01-02 08:29

オイルニスの塗装と注意点
まずオイルニスについての話をするとき、必ず前置きが必要です。
「『オイルニス』とは何か。」という簡単なことですが、オイルニスは「テレピン油」に溶けるニスのことです。Geary L.Baeseの定義では、アルコールニスはアルコールに溶け、オイルニスは樹脂と乾性油から成り、もう一つエッセンシャルオイル性のニスというものがありました。有機化学的にはアルコールニスです。つまりオイルニスとアルコールニスの二種類しかないのです。(一部ウレタンなどの合成樹脂塗料を仕様した製品がありますが、これは問題外のものです。)
 次に説明しなければいけないのが、「古典ヴァイオリンはオイルニス」ということです。現在のクレモナの製品ヴァイオリンにはアルコールニスのものが多くあります。アルコールニスは、良い音で歴史も250年はありますから、「まがい物」「偽物」ということではありません。アルコールニスとオイルニスの違いについては大切なことは、
1.アルコールニスとオイルニスは併用できない。
2.塗装方法が違う
3.蛍光を発するか発しないかの違いがある。
大きくはこの点は確実に理解して頂きたいと思います。
もう一つ「オイルニスは紫外線硬化性ですのでUVブラックライトが必要である。」
このブラックライトについて非常に誤解が多く、日本リノキシンの製品は硬くならないという、間違った評価を時々見ることがあります。ブラックライトは20W-40Wの製品を使用してください。熱帯魚、は虫類用では硬化しません。また太陽光は強力ですが、硬化はするものの夏場、泡の発生や表面が荒れるのでお勧めできません。
『テレピン油が揮発して乾燥してから紫外線硬化をしてください』これは下地が揮発性の溶剤を含むとき、気泡が発生します。
オイルニス塗装の注意点は
1.一番下のグラウンド塗装はテレピン油を含まない状態で塗装してください。テレピン油によるオイルニスの浸透は音に影響します。すなわち、なるべく木材表面にオイルニスを留め、中に浸透しないように塗装する。音の差が出るとしたらこれに尽きます。
2.テレピン油に溶かした状態のオイルニスは、日光でも硬化はあまりしません。揮発してから重合が始まります。茶瓶に保存した場合は紫外線の影響で中で固まることはありませんが、冷蔵庫暗所保存としてください。
3.2018年以後硬化促進のためコロホニウム系については光明丹を使用しています。硬化促進剤として使用できるのはシッカチフ・クルトレです。50ml瓶ですと1-2滴という添加量です。硬化性の良いオイルニスの順序はマスティック、コーパル、アンバー、生松脂、コロホニウム(松脂)という順です。アンバーまでは製品に乾燥促進剤を添加していません。
4.コロホニウム系オイルニスの使用は、まず下地としてコロホニウムオイルニスのライトブラウン(松脂のマルチアナ)またはダークブラウン(生松脂のマルチアナ)を塗装して、その上に赤紫のレッドブラウンを塗装する手順になります。直接最初からレッドブラウンを塗装しないでください。赤紫のままになります。これは「二色性」を持つので、黄色味のあるオイルニスに紫を塗装することで打ち消して「赤」となる現象です。
弊社の「リノキシン」の名前を見てオイルニスにリノキシンが含まれていると誤解されるユーザーさんがいますので、対策を考えています。オイルニスだけブランド名にすることですが。リノキシンとは「亜麻仁油を固めた」物質のことです。特にアルコールに使用するリノキシンはいわば「製品名」ですので勘違いによる誤解がとても多いのです。2020-01-08 09:15

変性アルコールについて

弊社の使用しているアルコールは前述のエタノール90%,イソプロピルアルコール8%に8アセチル化蔗糖を微量加えた「変性エタノール」です。シェラックは溶けますかという質問がとても多いのですが、「製品に使用しています」いうことで、当然溶けます。シェラックの適正な溶剤はエタノールかというと、答えはそうではありません。「適正」というのがSP値(溶解度パラメーター)が一致することを指しません。溶解しやすいほど揮発に時間がかかるということも理解してください。またアルコールニスはアルコールに溶ける樹脂とアルコールで作られ、オイルニスはテレピン油に溶ける樹脂と油脂の化合したニスを指します。用語的にはそれだけの違いです。

オイルニスとアルコールニスは併用できません。併用する方法はあります。お勧めできませんと理解してください。2020-04-22 21:10

アルコール溶剤の値上げについて

アルコールの価格が上がったことと、缶の価格も以前の2倍になっています。計算すると赤字で販売していました。また郵便振替の手数料は弊社負担ですが、これも値上がりしています。ということで、変性エタノールの価格を上げることになりました。2020-03-11 10:22 


アルコールの販売について
新型ウイルスの関連で、エタノールが不足しています。弊社のエタノール製品はアルコールニス希釈用として「変性アルコール」を販売しています。原則としてお渡しできるユーザー様は楽器塗料、オーディオ塗料に使用することが確認できることを前提としています。アルコール使用の他の目的、または転売目的には販売できません。法律遵守の義務があります。製品は「変性エタノール」としていますが、これは製品名です。イソプロピルアルコールを8-10%とアセチル化蔗糖を0.1%添加した飲用不可にした製品です。純粋(99.5%以上)なエタノールは「酒」として飲用できるので、「酒税法」の適用となりますが、飲用不可にした製品は税金はかかりません。飲用不可とするための方法としてはメタノール、イソプロピルアルコール、ゲラニオール、ローズ油、ビトレックス、8アセチル化蔗糖などを添加する方法です。ビトレックスは毒性の高い物質ですので希釈溶剤として採用していません。従って、弊社販売のヴァイオリンヴァーニッシュ(アルコールニス)希釈用のアルコールは消毒には使用できません。滅菌効果はあると思いますが、他の健康被害はあると思います。使用方法としてアルコールニス以外には絶対使用しないでください。2020-03-10 08:40 

オイルニスの塗装と注意点
まずオイルニスについての話をするとき、必ず前置きが必要です。
「『オイルニス』とは何か。」という簡単なことですが、オイルニスは「テレピン油」に溶けるニスのことです。Geary L.Baeseの定義では、アルコールニスはアルコールに溶け、オイルニスは樹脂と乾性油から成り、もう一つエッセンシャルオイル性のニスというものがありました。有機化学的にはアルコールニスです。つまりオイルニスとアルコールニスの二種類しかないのです。(一部ウレタンなどの合成樹脂塗料を仕様した製品がありますが、これは問題外のものです。)
 次に説明しなければいけないのが、「古典ヴァイオリンはオイルニス」ということです。現在のクレモナの製品ヴァイオリンにはアルコールニスのものが多くあります。アルコールニスは、良い音で歴史も250年はありますから、「まがい物」「偽物」ということではありません。アルコールニスとオイルニスの違いについては大切なことは、
1.アルコールニスとオイルニスは併用できない。
2.塗装方法が違う
3.蛍光を発するか発しないかの違いがある。
大きくはこの点は確実に理解して頂きたいと思います。
もう一つ「オイルニスは紫外線硬化性ですのでUVブラックライトが必要である。」
このブラックライトについて非常に誤解が多く、日本リノキシンの製品は硬くならないという、間違った評価を時々見ることがあります。ブラックライトは20W-40Wの製品を使用してください。熱帯魚、は虫類用では硬化しません。また太陽光は強力ですが、硬化はするものの夏場、泡の発生や表面が荒れるのでお勧めできません。
『テレピン油が揮発して乾燥してから紫外線硬化をしてください』これは下地が揮発性の溶剤を含むとき、気泡が発生します。
オイルニス塗装の注意点は
1.一番下のグラウンド塗装はテレピン油を含まない状態で塗装してください。テレピン油によるオイルニスの浸透は音に影響します。すなわち、なるべく木材表面にオイルニスを留め、中に浸透しないように塗装する。音の差が出るとしたらこれに尽きます。
2.テレピン油に溶かした状態のオイルニスは、日光でも硬化はあまりしません。揮発してから重合が始まります。茶瓶に保存した場合は紫外線の影響で中で固まることはありませんが、冷蔵庫暗所保存としてください。
3.2018年以後硬化促進のためコロホニウム系については光明丹を使用しています。硬化促進剤として使用できるのはシッカチフ・クルトレです。50ml瓶ですと1-2滴という添加量です。硬化性の良いオイルニスの順序はマスティック、コーパル、アンバー、生松脂、コロホニウム(松脂)という順です。アンバーまでは製品に乾燥促進剤を添加していません。
4.コロホニウム系オイルニスの使用は、まず下地としてコロホニウムオイルニスのライトブラウン(松脂のマルチアナ)またはダークブラウン(生松脂のマルチアナ)を塗装して、その上に赤紫のレッドブラウンを塗装する手順になります。直接最初からレッドブラウンを塗装しないでください。赤紫のままになります。これは「二色性」を持つので、黄色味のあるオイルニスに紫を塗装することで打ち消して「赤」となる現象です。
弊社の「リノキシン」の名前を見てオイルニスにリノキシンが含まれていると誤解されるユーザーさんがいますので、対策を考えています。オイルニスだけブランド名にすることですが。リノキシンとは「亜麻仁油を固めた」物質のことです。特にアルコールに使用するリノキシンはいわば「製品名」ですので勘違いによる誤解がとても多いのです。
2020-01-08 09:15


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