私がこのヴァイオリンという楽器を販売する会社や、製作家に一番不満があるとすれば、常にヴァイオリンのアルコールニスとオイルニスについて明確にしていないこと、つまり無頓着なのか秘密なのかさえ分からない雑な扱いぶりだ。ストラディバリウス時代の楽器はオイルニスでシェラックはまだ伝わっていない。Gomma Laccaとして紹介されるのは1700年代中頃からである。だからアルコールニスは「まがい物」というわけではない。アルコールニスも既に250年の歴史を持つ塗料になってしまったからである。しかし写真を見てのとおりUVブラックライト下での蛍光の発しかたは全く異なる。アルコールニスは不活性で、オイルニスは蛍光を持つ。(これは材料のうち樹脂の二重結合の構造により違うので使用した樹脂により蛍光色は異なる)
ヴァイオリン製作者や販売店はほとんどがアルコールニスかオイルニスかは書かないし、明らかにしない。ここは「水と油」の違いほどある化学者にとっては耐えがたい。あと「音が良い。悪い」この判断が出来ない製作者は厳しく言うとこの仕事に向いてない。私はクラシックはあまり聴かないので、フィドルのレベルからの音を聴いている。音の善し悪しは「好み」の問題ではない。楽器の本質だ。仕事人生的に終盤に近づく度に思う。音をもっと幅広く聴いて欲しいと。
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