オイルニスの今後
私も20年この仕事をしてその前は電子部品塗料、その前はカーワックスという仕事をしてきました。「ストラディバリのニスの再現」という課題が最後の仕事となったと言っていいでしょう。それでは、完成したのかと聞かれると「ほぼ」としか言いようがありません。今までに「ストラディバリ が出来た」と公言する人は数多くいました。しかし、簡単なことで躓いていることに気が付きません。私はどうなのかということはいつも考えています。だから決して「出来た」とは言いません。
それはさておいて、ストラディバリのニスはオイルニスでありコロホニウムと亜麻仁油または胡桃油の組み合わせがベースであることは、多分間違いありません。これを証明した著書はBrigitte BranmairとStefan Petter Greinerの"Stradivari's Varnish"によります。
裏付けとしての歴史的著書はMary P. Merrifieldの著書に紹介されたMarciana Manuscript.これはベネチアのマルチアナ図書館に伝わる文献で1500年代前半に書かれたオイルニスの処方です。次にデ・メイヤーン(ド・マイエルン)De Mayerne Manuscriptがあります。
1600年代です。この2書が全てです。他にボナーニや1600年頃の文献も紹介しましたが、ヴァイオリンのニスはこの2書を読むだけで十分です。ただし、ここが重要ですが「製法はこの記述の方法では作れません。また、Stefan Petter Greinerの本に製法は載っていません。」Koen Padding のViolin Varnishも製法は載っていません。ベーゼの本についてはノーコメントです。マイケルマンの方法は全然別物です。
結論として「正しいヴァイオリンヴァーニッシュの作り方を書いた著書は存在しない」ということです。誤解が無いように言いますと、正しいオイルニスの作り方つまり、それを読むと作ることが出来るという著書はあります。19世紀のオイルニス、マルタンニスの黄金時代の文献が数多くあります。ただヴァイオリン用ではないのです。ヴァイオリンに使用することは可能です。
最近の私の研究の結果として
1.琥珀ニスもヴァイオリン用のオイルニスとしては優れている。
2.ショート・ニスというものは古典にはなく、現代の想像で作られている。ショートにする必要はない。
3.良いグリークピッチを作ることが出来ればストラディバリの(使った)ニスは出来たも同然である。
この辺はまた説明します。
年齢的限界が近づいているので「ヴァイオリンヴァーニッシュの作り方・オイルニス編」を写真入りで作ったところで私の最後の仕事にしたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?