ヴァイオリン製作についての持論その1

私の知り合いには、ヴァイオリンと他の弦楽器、鍵盤楽器、木管楽器、オーディオ製作者と音楽家が多いのですが、非常に耳が良く少しの違いを聴き分けることができる方もいるのです。異常聴覚というべきですが。
 そんなある日私が「ヴァイオリン製作については、木工技術は皆さんとても優れているのに、極端に言うと問題は二つしかない。」「一つは塗装。もう一つはにかわ接合です。」と言うとアンサーは「にかわ自体が音にいい材料ではないし、木工技術についても平気でペーパーをかけて木目を潰している。」という。しかし、私の仕事の前提を聴いてほしい。

1.16世紀に存在した技術と原料しか使用しない。(できない)
2.それは誰が行っても再現可能でなければいけない。
それでは、その方の言う「にかわ」に変わる接着剤はいったい何でしょう。答えは言ってくれないし、知ってるとは思えない。私とあるヴァイオリン製作家の結論はこうです。
にかわに替わるものは「にかわ」でしかない。ただ当時のにかわと今のにかわは原料と精製度が違います。「鹿膠」といって販売されてますが鹿からは採れないそうです。大抵は牛です。でも昔から鹿膠と称しているのです。膠は精製を重ね透明になってくると「ゼラチン」となります。同じものでこれだけ用途とイメージが違うものはありません。税関の検疫事務所で輸入を止められたことがありますが、検疫官が「にかわとゼラチンは本来同じもの」という事実を知らなかったのでする後から検疫官から「不勉強で申し訳ない」という内容の手紙を頂きました。
膠で接着する意味はいろいろあります。
1.硬化したときの体積が極端に小さく、音への影響が少ない。
2.精製の進んでないものほど接着力は高く、ゼラチンまで加工すると接着力はゼロに等しくなる。
3.温度をかけ過ぎると接着力は弱くなる。
と以上ですが、大切なことは接合面がぴったり合う木工があってはじめてにかわの接着力が発揮できるということです。

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