藤井健太郎論~悪意という愛~ その1

果たして、「万人受けする」「高視聴率」の番組は面白いのだろうか?
好みが分かれるけれど、好きな人にはめちゃくちゃハマるものこそが本当の面白さではないだろうか?
私はテレビ業界にこの考えがもっと定着してほしいと願っている。誰が見ても、そこそこ面白くて、子どもが観ても害がない。ある意味、優等生的な番組が増えている。
そういった番組を批判するつもりはないが、どの局も同じようなテイストの番組を同じ時間帯に流す。「テレビはこんなに幅の狭かったっけ」とテレビっ子だった私は思う。

私の好きな番組にTBS「水曜日のダウンタウン」がある。芸能人・有名人が「自分が信じている説」を検証していくという番組だ。お笑い好きなら、知っている方も多いだろう。たむらけんじの「マジで0人説」シリーズや「ミックスルール対決」などエッジの効いた企画が数多くある。ここ最近だと、安田大サーカスのクロちゃんに焦点を当てた説が話題になっている。

この番組の特徴は何といっても、悪意に満ちた発言・編集・キャストである。
「ベッドの中に人がいるのが一番怖い説」では、TBSの他番組で糖尿病が発覚したクロちゃんが検証の1人に。クロちゃんは本当に食べているものよりも少なくつぶやいていたことが番組の密着で発覚。クロちゃんはそのことを告げられ、健康管理を行っている医師に暴言を吐き、嘘を認めなかった。説の最後には、まとめとして一言あるのだが、「死ねばいいのに」という衝撃的なまとめとなる。
批判が殺到してもおかしくはなかったのだが、普段から嘘ツイートばかりをしているクロちゃんとこの番組のテイストへの理解によって、炎上騒動になることはなかった。

この番組のテイストは、演出を担当している藤井健太郎氏の色が強く反映されている。「水曜日のダウンタウン」では、ナレーション台本から編集に至るまで藤井氏が全て行っているという徹底ぶりだ。
彼の著書である「悪意とこだわりの演出術」では、悪意を持った番組作りをしているつもりはないと繰り返し書かれている。本当に面白いと思うものを作ると、必ずこういった出来になるらしい。
そんな「水曜日のダウンタウン」は、今年の4月で4年目に突入。批判や炎上によって、終了に追い込まれる番組が多いなか続けていけるのには、面白いものをただ純粋に形にしていく姿勢が評価されているからだと思うのだ。

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