⑩誰かの一番を望むひと。僕の一番になったひと。

毎日話すようになってから数日、当たり前のように寝落ち通話をするようになった頃。

その頃の僕はと言うと再就職活動でなんだかんだと忙しくしていた。
にも関わらず毎日寝落ち通話をして寝不足の毎日。なぜ寝落ちしてるのに寝不足なのかと言うと、イヤホンから女の子の寝息が聞こえるという状況が僕を眠らせてくれなかったから。
かわいくて悶え苦しむ毎日。

そんな折、夜中のテンションと想いが溢れて「かわいい」という言葉を彼女に向かって僕が発した。
これがなんだかとてもよくなかった(よかった)らしく、なんだか変な感じになった。
ムズキュン的なニュアンスで。

そうするとなんだかもっと反応が可愛くなってしまって、どんどん可愛いという感情と言葉が溢れてしまう。
何かを察した彼女は僕の言葉を静止したが、いよいよ抑えられなくなった僕は『好きだ』と言ってしまった。

この頃彼女は常々「誰かの一番になりたい」と言っていた。
それを聞くたびに「今の僕にとってはもう一番なんだけどな……」と思ってはいたが口には出せなかった。
伝えたいけど伝えられない。
あまりにも気が早すぎる。
軽い言葉だと思われたらどうしよう…。

でもそれもこの時に伝えてしまった。
『僕にとっての一番だよ』と。

それだけでなく『付き合ってほしい』とも口走った。その瞬間、しまった、と思った。
確かに彼女と付き合えたらどんなに良いだろうと思ったのは確かだ。でも本意はそこではなく、僕にとっての一番であると伝える事だけのはずだった。それを知っておいてくれるだけでいい、と。

しかし案の定、彼女からは「ちょっと待ってほしい」というような返事が返ってくることとなったのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?