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大きなのっぽの樹木たち

ヴイィィィーン、ヴ、ヴ、ヴワァーーー……

複数のチェーンソーの音が朝から響いている。
樹木たちの声なき悲鳴が聴こえるような、亡きお爺さんの悲しみが見えるような気がしてしまう。

つい最近、ごく近所の木造平屋の古いお家で火災が起きて、一人暮らしのお爺さんが亡くなった。雨の降る真昼のことだった。

そう広くない庭にはたくさんの樹が植えられていて、お爺さんがいた頃はムクドリやヒヨドリが楽しげに柿やなんかをついばんでいた。

当たり前だけどお爺さんは最初からお爺さんだったわけじゃない。あの家に住み始めた時は青年だったのかな。或いは子供の頃から住んでるのかも。

あの家で妻を娶り、子供をもうけ、巣立つ子供を送り出し、やがて逝く妻を送り、独りになったのかもしれない。
もしかしたら妻が記念植樹マニアで、「この家に住み始めた記念に枇杷を植えましょ♡」「ナントカちゃんが生まれた記念に柘榴を」「これの記念にくちなしを」「あれの記念に松を、柿を、楓を、金木犀を、、、」とどんどん植えていったのかもしれない。
独りになったお爺さんは、高く聳えていく樹を見上げるたび、あの時の妻の笑顔を思い出していたのかもしれない。

我ながら妄想たくましい。

今日樹々を伐採したら、人が住まなくなったあの古い家は取り壊され更地になって、きっとあっという間に新しい家か何かが建つのだろう。

お爺さんには一面識もないけど、ただただご冥福をお祈りする。
いつも四季の移ろいを楽しませていただいた樹木の皆さんも、どうぞ安らかにお眠りくださいと願う。。。

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