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水やり

 枝を伸ばし葉をつける木は、しっかりした芯となる幹があってこそで、それが弱くないことは知っています。けれども、頑強であるとは限らず意外に脆いところもあるのも知っています。枝葉が傷んだら自分を守るために自発的に落とすこともあり、それは時には必要なことでしょう。落ちてしまえる枝葉と違い、芯は涙ではなく仮初でも虚勢でも栄養を流さなくてはいけません。それが出来るのは、美しく逞しく育たなくとも構わないという諦めに似た惰性ではなく、意思の強さのなせることだと思います。新しい葉を広げ高い空を目指そうという思いを流すのです。そして最も大切なのは、誰にも見られなくともそこに存在して全てを支える根でしょう。それこそを大事にしたいものです。

 落ちゆく葉の舞を楽しむこともあるし、枯れ葉であれば拾います。幹を抱きしめ、時にはもたれ。足元に広がる根に思いを馳せながら、私はただ水をやるのです。




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