うさぎ、可愛い、それだけ。

『ちいかわ』。

いい年して娘とドはまりしている。あ、でもアニメ専門です。ツイッター?よくわからんので。

先日、コンビニでチロルチョコとの限定コラボ商品が発売になると聞いて、仕事を休んで買いに走る程度には好き。なのに、何店舗も回ったのに買えなかった。子供を幼稚園に送ってから動いたのが失敗だったかもしれない。放って置いて買いに……いや流石にそれはしないけど。

この作品の何がどう魅力的かというのを語るのはちょっとむずかしい。一つ言えることは、うさぎが可愛すぎるということ、それだけ。それだけで必要十分。そうそう、久しぶりに私服を買いました、もちろん、うさぎのTシャツ。娘にも買ったので、今度お揃いで出かける。公園でヒャッハーする予定。


さてさて、そんなことは置いといて、今日お伝えしたいことはアニメのテーマソングの出来が良すぎるということ。エンディングで流れる部分しか聞いていないけど、これがすごいので紹介したいと思ったのです。


TVサイズの曲だけの公式動画が無かったので本編ごとどうぞ。ちょうどうさぎの回だし!


“なんだもう朝かと  ひとりごつ
焼けたパンにバターぬりぬり
やけに土が水を含んで なまがわき”

『ひとりごつ』作詞:ナガノ

短いです。でも詰まってます。

短い言葉で表現すること。私が愛好している短歌もそのうちの一つですが、それと同じ趣きを感じさせますね。ということでちょっと和歌を解説するようなノリで解説してみましょう。


〈直訳〉
もう朝になっていると一人つぶやく。焼き上がったパンにバターを塗りつける。土が水を含んで生乾きである。


はい、意味わかりませんね。これは意訳が必要です。いったい、この曲は何を表現しているのでしょうか。

以下、私の解釈で意訳していきましょう。

〈意訳〉
(あなたと一緒に幾度となく迎えた朝日が目に入り、ここで一人でいる私は)「なんだもう朝か」とあなたとよく言い合った言葉をポロリとこぼしていた。いつのまにか私は、朝食のトーストを(あなたと私の分の)2枚焼いてバターを塗っていた(でも食べるのは私の分の1枚だけ)。悲しみの雨が降ったのはもう遠くのことで、とっくに乾いていてもおかしくないというのに、生乾きのあの匂いだけは確かに感じてしまうのです。


愛と哀を感じませんか。こういうの大好きです。
詳しく見ていきましょう。

「ひとりごつ」は、文字通り一人になっていることを表しているので、以前は一人ではなかったことを示唆します。また、「なんだもう朝か」は、気づかないうちに朝になっていた状況ですから、心ここにあらずといったところでしょうか。

「焼けたパン」。焼いた、ではないのです。パンは自動的に焼けてしまっているのです。つまり、毎朝のルーチンのようにパンを焼くので、焼いている意識がありません。パンは焼けてしまっているのです。そして、「ぬりぬり」。もう一度書くと「ぬり(1枚目)ぬり(2枚目)」なのです。「ひとりごつ」の部分と合わせて考えると、ここで特定の相手の存在が観念できるわけです。自動的に相手の分のパンにも塗ってしまうのです。

「やけに」は、程度がひどい様を表しています。この「土」が何を指すかは解釈の余地がありますが、「思い」や「衣服」や「過ごした部屋や時間」といったものと捉えてもよいと思います。それらが「水を含んで」いる、これは言うまでもなく涙のことでしょう。

ちょっと想像してみましょう。自分が泣いているのを自覚していたら「やけに水を含んでいる」なんて言うでしょうか。おどける場合なら言わなくもないでしょうが、一人で、そして、ひとりごちちゃったりパンを焼いてしまっていたりする自動的な状態の人が、そんなことするわけがありません。つまりこの私は、泣いていることにすら気づいていない。あるいは、とっくに涙は枯れていると思っているはずなのです。

そして、「生乾き」。泣いていることを自覚していれば、涙で濡れてしまうという状態が通常だと捉えるはずです。ところが、「生乾き」。これは、乾きに向かうはずのものが乾いていないということです。もう(あなたのことを思って)泣いていないのだから、通常の(乾いた)私に戻ってもいいはずなのに、そうはなっていない。ということを表現しているわけですね。しかも、自動的な私は、乾いてもいいはずだとも思っていないはずなのです。ぽっかりと心に大きな穴が空いたままなのです。とても切ない歌なのです。たまらん。


もう一つ、この歌の個人的におすすめなことがあります。

短歌でも楽曲の歌詞でも、五感を刺激するものは素晴らしい、というのが私の中での評価軸としてあります。

五感とは、視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚です。

朝を感じるのは、朝日です。視覚です。
ひとりごつと自覚するには、聴覚が必要です。
パンの味は、味覚によって想起されます。
水を含んだ土は、触れることで感じます。
そして、生乾きのあの匂いを鼻で感じるのです。

あの短い歌詞の中に全てを詰め込み、大きな喪失感を覚えるほどの相手との心情をも表現する。作者天才かよ。

私には、この曲を歌って表現することは出来ません。この短さでそこまでの想いを載せられるほどの経験もありませんし、とても表現できるものではないと判断しました。それなのに、私によく似た娘が、私に似て音程を盛大に外しながら、私に似て朗らかに歌っている。うん、まあそれでいいよね、うさぎ可愛いし。

うさぎ可愛いし。


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