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逃げる合図を先に決めとこう

恋人に「愛してる?」と尋ねられたとき、「激・愛してるッッッ!!!」「爆・愛してるッッッ!!!」などと即答している。激や爆には、普通のひとたちは通常の愛してるレベルなのかもしれないけど、僕はワンランク上の愛しっぷりをしているぞという意味を込めている。これらは軽い言葉であるが、「軽薄」とは完全にちがっていて、感情と言葉と身体が完全に一致しているから、いわばこころからまことの言葉として発せられているゆえに軽く出てくるのだと思う。こういった軽い言葉を操れるようになりたいと思うのだ。

黒ねこがよぎって天気も悪いので逃げる合図を先に決めとこう/あめのちあさひ

「未来」2023年5月号

自分の身になっていない言葉をむりして使うとどうにも重くるしくなって、面白みがなくなっていまう。短歌を作るときも、すっかり自分の身になっている言葉を選んで軽さを持たせて、洒脱な表現ができるといいんだがな〜、と思っている。なかなかむつかしい。

軽さというところで思い出すのが、丸谷才一の『文章読本』を読んだなかに、文章を書くコツのひとつとして「ちよつと気取つて書け」という章があり、これは僕が思う軽さと通じるところがあるな、と思った。気取った表現ができるとき、その言葉はすっかり身について自在に操れていると言えるだろう、と。この本はすこし古いものだけど、読みやすいうえにいろんな文章に触れることができて、書くヒントが満載でお気に入りです。この中で引かれていたところがたいへん良くて、僕は内田百閒にハマったのだ。

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