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笑った友も行方不明で

同世代の会社の同僚と飲んだとき、「この歳になると、中学の同窓会の誘いを受けても行きづらくて、いったいいつ行けばいいのかタイミングがわからないんですよ…」という話をきいたのだけど、バカヤロウ、おめえ、そんなもん、思い出のなかにひとりでももういちど会ってみたいと思えるひといて、出席する可能性があるならば、直近で行くべきだよ。この歳になったら、家族を優先して自分の時間を確保するのが難しくなったり、遠くに行ったり、逮捕されたり、死んだりするよ。会える機会が減ることはあっても、増えることはないんだから。

僕が小学生のころ、映画の「学校の怪談」シリーズが流行ったり、それとは直接的な関係のない同名の「学校の怪談」ってタイトルのアニメをやっていたり、普遍的な怪談(子供にウケそうな都市伝説寄りのもの)がちょっとブームになったことがあった。もちろんキャラクター寄りの怪異系作品もあったのだと思うけど、子供時代にはそんなにまんがを買ってもらえたわけでもなく、ぱらぱら読んでいた「ぬ~べ~」が好きだったくらいだな。ぬ~ベ~は昔ながらの妖怪っぽいものと都市伝説っぽい要素がうまいこと混淆していたように思う。いずれも話の細かいところはもうぜんぜん覚えていないけれども。ところで、なにかを能動的に忘れるって、忘れたときには忘れるべきことの認識がないわけだから、原理的には成功しているかどうかわからないので、ちょっと不思議な感じがする。あったはずのなにかを思い出したいのに思い出せない、というのともちょっとちがう。僕は小中学校の同級生とはもうだれひとり連絡を取っていないし、だれの連絡先も知らないし誰からも連絡先を知られていないのでもう同窓会に誘われることはないだろうけど、きっと僕が覚えていることや忘れていることは、彼らの記憶とはかけ離れているのだと思う。自分の記憶を確認したいとは思わない。

ガキのころムラサキカガミの怪談を笑った友も行方不明で/あめのちあさひ

「未來」2023年2月号


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