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Kemper等のアンプキャプチャー機能の仕組み&考察

※記事を一部、加筆修正しました(2021/7/22)

ギターアンプのキャプチャー機能といえば、2011年発売のKemper Profiling Amplifierが有名かと思います。今では、kemper以外のメーカーからも、独自のキャプチャー機能を搭載した製品が色々と発売されています。

今回は、そんなキャプチャー機能について、推測も交えながら色々と考察&解説してみます。

キャプチャー機能の方式

アンプをキャプチャーする方式としては、

1.「アンプモデリング」を測定を元に補正:Axe、Mooer、Bias
2.アンプの全てを測定を元に再現:Kemper、Quad Cortex

の2つに大きく分けられます。1については、

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といった感じで、補正EQ(FIR)を作って畳み込んでいると思われます。この場合、EQ(FIR)では補正できない非線形な要素(歪みなど)については、アンプモデリングのパラメータを調整して、別途合わせ込む必要があります。

そして、大元のギター信号に何を選ぶかも重要で、先述のパラメーター調整も合わせて、ユーザーが色々と試行錯誤することで、完成度の高いコピーが実現します。

FIRフィルタによるEQについては、↓の記事で詳しく説明しています。

これに対して2の方は、推測が多くなりますが、関連資料(特許)などを読む限りでは、

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といった感じで、予め用意してあるEQや歪み関数に対して、実測に基づく計算結果をフィードバックしているんだと思われます。

1と違って、測定信号もフィードバックも全て自動でやってくれるので、誰でも同じクオリティのコピーが簡単に作れます。ただし、自動作成だけではコピーしきれない部分もあります(関連記事↓)

KemperについてはRefineという補正機能があり、上手く使えばかなりコピーの精度を高めることができます(関連記事↓)

何をキャプチャーしているのか?

次に、一体何をキャプチャーしていて、それをどのように使っているのかを考察してみます。

1.アンプモデリングを測定を元に補正:Axe、Mooer、Bias
2.アンプの全てを測定を元に再現:Kemper、Quad Cortex

1の方は単純で、モデリングと実機の出力の周波数特性の差を測定しています。

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上の図のようなイメージで、モデリングと実機の両方の特性を測定し、2つの差を計算すれば、モデリング→実機に補正してくれるFIRフィルタが作れます。

続いて、2の方では何をやっているのかを、Kemperの測定信号を例に推測してみたいと思います。

Kemperの測定信号は、下記の3つフェーズに分かれています。

1.100~1kHzあたりにレベルが集中した信号が徐々に大きくなる
2.ホワイトノイズに近い信号(微妙に音量を揺らしている)
3.低域にレベルが集中した信号が断続的に出ている

それぞれの信号を、私ならどう使うかという視点も交えて考察してみます。

まずは1つ目の信号です。100~1kHzくらいの信号を徐々に大きくしながら出力しています。ギターの音程の基音(100Hz弱~1kHz強)に近い周波数帯なので、実際のギターの出力を想定していそうです。

この信号を徐々に大きくしていくことで、ギターの音量に対して、アンプがどの辺りで歪み始めるかが分かります。

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上の図は、ギターアンプの回路内での真空管の入出力特性(横軸:入力、縦軸:出力、真ん中が0)です。入力の小さい真ん中付近では直線的に出力が増えていきますが、赤丸付近で一気に増幅が頭打ちになって歪みます。

おそらくkemperにも、こんな感じの歪み関数が入ってきて、赤丸のポイントを出力から判断しているんだと推測できます。ちなみに、上下(+と-)で微妙に形が違っていますが、これが非対称クリップと呼ばれる現象です。

続いて2つ目の信号です。ホワイトノイズ(全帯域でフラットな周波数特性)に近い信号を小さめの音量で出力しています。公式マニュアルにもある通り、このフェーズでは歪み初めの周波数特性を測定していそうです。

最後に3つ目の信号です。低域にレベルが集中した信号を、結構な音量で断続的に出力しています。このフェーズでは、ギターのボリュームが全開に近い時の特性(フェーズ2との差)や、スピーカーキャビネットの影響(共振周波数の出力ブースト)を測定していそうです。

※公式マニュアルの説明とは異なる部分もありますが、あくまでも個人の推測になりますのでご了承願います。

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