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メンタル休職者がメルカリで自信を取り戻すまでの100日間

メルカリを始めたのは去年の10月末。それから約100日で、取引の数は100回を超えた。うつで休職するに至り、「未知の人との価格交渉と物の売買」なんて想像しただけで動悸と冷汗が止まらなくなるような状態だった自分が、日々の出品と購入を楽しみ、仕事復帰につながる自信がつくまでの、メルカリの意外な効用について。

メルカリ大先輩の娘から「供出品」を委託される

メンタルの調子を崩し、休職をしている。
身の周りのことや家事がこなせるようになり、懸案だった不要品の整理も進められた。回復してきている。そろそろ仕事もできるんじゃないかな、と思うのだけど「仕事」という単語が頭に浮かぶと心臓がバクバクし、冷汗が出る。主治医に「焦らないでじっくり」と言われてきたので、春が過ぎたら、いや夏の終わりまでには、と思っているうちに休職開始から1年が過ぎた。

ある日一人暮らしをしている下の娘が家に泊まりに来て、置きっぱなしの自分の荷物の山からバッグや服を何点か取り出し「お母さんメルカリやってみれば?これ売っていいから」と差し出した。

娘はメルカリがまだ若い女の子向けのサービスと認識されていた頃、活発に売り買いする女子高生だった。そんな彼女が選んだのならきっと売れるものなのだろう。
とはいえ、段ボール箱に詰め込まれていた服はくしゃくしゃ。まずはおしゃれ着用の洗剤で洗い、アイロンをかけつつ汚れ具合をチェックする。

ここで手が止まる。
こんな古い服売れるの?値付けはどうすればよいんだ…

美容師さんの何気ない一言

出品待ちの山を放置したまま数日、美容院に行った。
話題はなんとなくメルカリへ。彼は「やってますよ。簡単ですよ!」と本当に簡単そうに言う。

「値段は、同じものを検索すれば相場がわかりますよ」
「発送もバーコードをピッ。でいいからめっちゃ簡単ですよ」
そして、彼が出品していてめっちゃ見られてるけど全く売れる気配がない、レアな品の話や、私が撮影用ボックス(6,000円)まで買ったほどやる気だけはある話などをして笑う。

「古い服、売れますかね。一度全部洗ってアイロンもかけたんですけど」と心配そうに言うと彼は
「えっ、そこまでちゃんとやってるんですか!なら絶っっ対売れますよ。」と笑いながら、でもきっぱり言った。

それは別に私を励まそうとかではなくて、本当にそう思っただけ、という言い方だった。この一言に不思議と勇気がわいて、出品に進んだ。

出品準備2時間、10分でSOLD

初の出品は、元値が一番高いバッグにした。

サイズを計る。
「フリマ写真の撮り方」動画を参考に写真を撮り、現物に近づくよう色調整をする。
表と裏、隅から隅まで見て、小さな傷の箇所は拡大する。
公式サイトの商品説明をアレンジして紹介文を作る。
価格は「この価格帯が売れやすいです」と自動表示される金額の下限に設定してえいっと「出品する」ボタンを押した。
ここまで2時間。いや、3時間かかったかもしれない。

すると、ものの10分で「購入されました」通知が来た。
慌てる。
大きめの段ボール箱に入れて、壊れ物でもないのに上下左右に緩衝材を大量に詰め込む。手書きのメッセージカードを入れる。
コンビニに持ちこみ「いくらですか?」と尋ねると「メルカリ送るとき、お金いらないです!」と外国人の店員さんに言われる。そうなのか。そんなこともしらなかったよ…。

この購入者さんは受け取り後、コメントでメッセージカードや梱包に言及し「すばらしい」と評価してくれた。

その後取引を重ねてわかったが、評価は「良かった」か「残念だった」のどちらかを選ぶだけで良く、コメントは必須ではない。
つける場合も「ありがとうございました」「無事受け取りました」の一言だけの場合も多い。

こんなに具体的にほめてもらえることはそう多くなく、初回に親切な購入者さんに出会えたことが、その後わたしがメルカリ道に突き進む大きな力となった。

小心者は良い売り手になる

出品するときは「商品の状態」を6段階から選ぶ必要がある。
「新品」を売る場合は迷わないし、「全体的に状態が悪い」ものは(自分は)そもそも売らないようにしている。
迷うのは「目立った傷や汚れなし」「やや傷や汚れあり」「傷や汚れあり」ゾーンにあるものだ。

袖の目立たぬところにある小さなシミを前に

これは「目立った汚れ」に入るだろうか。
シミが何個あったら「やや汚れあり」にすべき?
でも「傷や汚れあり」ランクで買ってくれるかな。

と、ひとしきり悩む。

ようやく出品しても、いざ売れて梱包する段になると「ごく目立たないシミ」と書いた部分が「濃いシミ」に見えてくる。

送ったあとも「目立たないシミとあったのに濃いシミがあり、とても残念でした😠」という評価を勝手に想像しては「あああやっぱり『全体的に傷や汚れあり』にしとけばよかった…」とくよくよする。

悩まないために、出品ページに良いことも悪いことも全部書くことにした。
具体的には

・写真はいろいろな角度から撮ってたくさん載せる。
・キズは写真で見せて、説明もする。
・サイズの測れるものは測る。
・メーカーやブランドについてもできるだけ調べて書く。

こんな感じ。

購入されたら、すぐにありがとうメッセージを送り、発送予定を連絡する。
梱包するときは髪をまとめ、テーブルを拭き、高級店の店員のように綿の手袋をして作業する。
髪の毛がハラリと落ちたり『新品未使用です!』と書いたものに汚れがついたりしたら…と心配になるからである。

梱包が済んだら遅くとも翌朝には発送する。発送予定日を伝えておきさえすれば急がなくてもいいのだが、「送る前に地震がきて箱が落ちて中のものが壊れたらどうしよう…」と心配になるので、とにかく早く送る。これを繰り返した。

毎回、評価が届くたびに「残念だった😞」だったらどうしよう…
とドキドキしながら開くのだが、幸いなことにこれまで悪い評価はゼロで、コメント欄にはお褒めの言葉をいただくようになった。

「すぐに送って下さり、〇〇さんから購入できてよかったです。」
「驚くほど丁寧な梱包でした。」
「終始安心で心温まるお取引でした。」

どれも心配性で小心者であるがゆえの対応だったが、詳細な説明、スピード対応、丁寧な梱包は確かに買い手の立場で見るとありがたい。
「いつか社会復帰ができるんだろうか」と心細い気持ちで過ごしていた自分に、コメント欄に並んだ「複数の第三者からの評価」は宝物のように感じられ、それからは不安な気持ちに襲われると、コメント欄を読み返した。


出品するのは不要品ではなく、好きなもの

最初に予定していた品が8割方売れた。
売るものがなくなるかと思いきや、家の中の思ってもみなかったものが目につくようになった。

30年前に買って大活躍した多重構造鍋。
娘が気に入らなかったステンレス製のお弁当箱。
一目ぼれして買ったけど肌の色に合わなかったアイカラー。
ある日突然似合わなくなった服(残念だけど、40を過ぎるとよくあることだ)

これからも、たぶん使うことはないのに、手放せないもの。
自分の今の生活にはたまたま合わないけど、どれも大好きなものばかりだ。

鍋や弁当箱はピカピカに磨き、服や化粧品は「こんなに素敵ですよ」「こんなふうに使えますよ」と「好き」を前面に出した紹介文にいつものように詳しいスペックを添えて出品したところ、面白いように売れていった。

そして、購入してくれる人は「大切に使われていたのがわかります」「ほしいと思っていたのでうれしいです!」と感動するようなコメントを下さるのだった。

そうか。売るのは不要品じゃなくて好きなものだ。
好きなものが自分のところで役割を終えたら、「素敵なものありますよ!」と必要な人に譲ればよいのだ。

以来、自分の中で手元に置くもの、出品するもの、処分するものの判断基準が明確になった。

メルカリ活動は社会復帰へのトレーニング


この記事を1か月くらい書いたり消したりしているうちに、書き始めて1か月が経ってしまい(経ちすぎだろう)取引数はタイトルの「100」を大きく超えて150に迫る勢いだ。

この間、復職に向けての動きを始めたこともあり、初期ほど出品や梱包に時間を取れなくなった。

でも、手は抜きたくない。
ということで、利益や利益率に応じた梱包手順を大まかに決めた。
梱包資材も、時間短縮につながるものは積極的に導入する。
マスキングテープやガムテープは種類を揃え、中のものに合わせて色やデザインを替える。
タイムセールを行ったり、話題になっていることに合わせて説明文やハッシュタグを変更する。

自分の職種とも業種とも違うし、「利益」だ「利益率」だといっても目標は「コーヒー代」くらいだけど、仕事に対する意欲も自信もなくしていた自分は、メルカリ活動を通してはからずも仕事復帰へのトレーニングができたように思う。

最後に。
この記事を書くに当たって、noteの主催した #noteフェリー の皆さんにはとっってもお世話になった。

構成の段階で、またできかけを読んで感想を下さった皆さん、締め切りを大幅に過ぎたけど、なんとかできあがりました。ありがとうございます!

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ああ、何か最後宣伝みたいになったけど宣伝になるくらい読まれたらうれしいな。



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