法科大学院生がオニナッツ・Liella の契約をレビューしてみた

法科大学院生兼ラブライバーのバニラです。
ラブライブ・スーパースター第5話にてLiella が出演契約をしていて話題になっていますね。
第5話はyoutube でも今見れますので興味のある方は見てみてください。

内容は以下の通りです。


引用元<https://lovelive-petitsoku.com/chat-category/238060/>

いろいろな議論が巻き起こっていますが、法科大学院性の立場からレビューしてみたいと思います。
なお、あくまで個人の感想であります。温かい目で見守っていただけると幸いです。
専門的な見解が知りたい方は専門家にご相談ください。
また、専門家の方は、ぜひご意見をいただけましたら幸いです。

契約書について

Liella! の定義

Liella!は法人化されていないため、いわゆる「権利能力なき社団」に当たる。
「権利能力なき社団」とは、簡単に言えば法人になっていない非営利の団体で、身近な例では同窓会、大学のサークルなどが挙げられる。
謎なのは、ここでLiella!を5名としたこと。わざわざ5名と明記することによって、2期生の3人の出演については別途契約を結ばなければならないとも解釈できる。また、Liella!のメンバーの入れ替わりがあった場合、再び契約を結ばなければならない。そのため、普通であればLiella!の構成メンバーを明記することはしないと思う。

1条 保証

正直、よく意味が分からない。この条項だけだとLiella!の代表者が澁谷かのんであることを明確にしておきたいということかもしれないが、代表者はだいたい契約書の署名欄に代表者の署名があれば有効であり、ここでわざわざ明示する必要があるのかがよく分からない。あるいは、違約金とともに定めていれば意味があるのかもしれないが、本件契約では違約金の定めもない。

2条 出演の承認

承認の対象が不明確。これだとLiella!に出演を拒否する権限が一切ないことになる。通常であれば何らかの手当をしておきたいところ。また契約期間がないので、半永久的にオニナッツの言うがままに出演しなければならなくなる。

3条 本映像作品の利用

著作権の帰属主体を明らかにしたもの。こうした条項自体は珍しくない。また、著作権法61条2項により、著作権を譲渡する場合には同法27条、28条の権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、譲渡したものに留保されたものとするという推定規定がある。本件ではその推定規定も考慮し、再編集の権利も特掲したと解される。
また、実演家人格権は譲渡できないので、不行使を定めたと考えられる。なお、著作者人格権の不行使の特約を有効とした裁判例として、東京地裁平成13年7月2日判決(LEX/DB 28061409、宇宙戦艦ヤマト事件)が挙げられる。

4条 報酬

2項但し書きは、製作費の実費を超える部分をオニナッツが受け取らないとも読める。2項但し書きは不要に思う。

5条 秘密保持

秘密保持自体は一般的だが、Liella!に一方的に課されているのが不平等。

解除条項の欠如


契約の解除は民法上の解除事由(541条、542条など)がある場合解除できる。しかし、一般的な契約書では契約解除条項も設けるのが一般的である。契約解除条項があれば、約定に違反した場合には合意解除できる。
そして、民法上の契約では債務不履行がないと解除ができないため、履行遅滞や履行不能になる恐れが生じる段階、また契約締結時と状況が大きく異なった場合でも契約が解除できない。こうしたリスクを回避するため、解除条項を設けるのが一般的である。

暴力団排除条項の欠如

これも契約では設けることが一般的だが、設けられていない。

Liella!は契約を解除できるか?

Liella!の代表である澁谷かのんは16歳(高校二年生)で、未成年。よって、法定代理人(かのんの場合は両親)の同意を得る必要があり(民法5条1項本文)、同意がない場合は契約を取り消すことができる。よって、澁谷かのんは契約を取り消せる。
なお、民法6条1項により、営業を許された未成年者は成年者と同一の行為能力が認められるので、5条2項による取消はできない。だが、かのんは営業を許されている描写はないので、6条1項にも当たらない。

契約を取り消した場合、初めから無効であったとみなされ(民法121条)、両者に原状回復義務が生じる(民法121条の2第1項)。
ここで、夏美も高校1年生であるから、「行為の時に意思能力を有しなかったもの」として、現存利益のみの返還義務にとどまる(民法121条の2第3項)と反論することも考えられる。しかし、株式会社オニナッツがすでに設立されている以上、会社設立の際に親権者が営業について同意していると考えられるため、民法6条1項により、成年者と同一の行為能力を有すると認められる。よって、夏美は121条の2第3項の適用を受けることができない。


まとめ

今回はLiella!にだいぶ不利な契約内容でしたね。
ただ、現実に若年のタレントの保護が十分でないケースもあると聞きます。
契約に関しては、少しでも疑問があった場合、専門家ないしは行政庁に相談するのが危険を回避する上でよいと思います。
私も一日でも早く社会の役に立てるよう、勉強に邁進せねばと考えました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?