チムリーの話④
オレにはチムリーという友達がいた
今ではもうチムリーにチムリーらしさの欠片もない
だから覚えてるチムリーとの話を書こうと思う
20代前半、オレはバンドマンだった
チムリーがバンドやりたそうにこっちを見ている
オレはドラム、イッチーはベース、もっちゃん、とよはギター、ボーカルはみっつー
5人で充分だった
チムリーがバンドやりたそうにこっちを見ている
オレは断った
「すまん、チムリー!見映え的にもチムリーちょっと邪魔だわ!」
チムリーは何も言わず去った
渋谷チェルシーホテルで自主企画を行った際に客席にチムリーがいた
オレらの出番になるとチムリーが客席からステージに上がり
「こんにちわ、1GAforBですっ!よろしくぅー!!!」
勝手に一員となり
それから約20分間、何もせず真ん中に立ってた
帰り際には知らんおっさんに「真ん中の彼、いいね!」って言われ
オレは何とも言えない気持ちになりながら電車に乗った
オレが求めたパンクの正解はこれなのか
急にやってきて勝手にMCして何もしないままただ佇む
それだけのチムリーが評価されるのか?
それが正解なら仕方ない
次のスタジオにも現れたチムリーに負けを認め
その知らんおっさんに言われた事を話したら
「ああ、それ、俺の親父!」
チムリーの親父も、またチムリーだった