毒手の話①
僕はお喋りで色んな秘密を喋ってしまうが
本当に言ってはいけない事は絶対に言わない主義だ
例えばシーガーに逮捕歴がある事は絶対に言わない
それともう1つ、自分の事を話さない主義でもある
幼少期から拳闘士であった父から指導を受け
毎日ワンツーワンツーと巨樹に向けてパンチを放っていた
まだ足し算も出来ず、オムツを穿いてた頃の話
将来は父のような立派な拳闘士になる事を夢見ていた
中学生になると拳に除草剤を塗りワンツーワンツー
1年も経たぬ内に巨樹は朽ち、拳は緑がかった毒手となった
父は息子が拳闘の神に見捨てられたと悲しんだが
僕は拳闘の神にすら恐れられる存在になったと喜んだ
大好きな猫を撫でる事も、まだ知らぬ手マンも出来ないが
毒手こそが僕のアイデンティティになっていった
高校生、それは思春期
緑がかった毒手にちょっとしたコンプレックスを覚え始め
GLOBAL WORKのレザー手袋を夏でもしていた
当時の流行りは裏原系で
A BATHING APE
BOUNTY×HUNTER
NUMBER (N)INE
Hysteric Glamour
この辺のブランドが流行っていたが
僕は毒手拳の使い手、GLOBAL WORKのレザー手袋を夏でもしていた
成人し、手袋したまま勤められる職業は
マジシャンかタクシードライバーの2択しかないと
公園でハトを捕まえていたら大柄の男に話し掛けられた
「アンダーグラウンドな格闘技の大会がある、興味あるか?」
チェ・ホンマンだった
既に現役を引退していたチェはアンダーグラウンドな世界でスカウト業をしていたのだ
毒手になってからは森林破壊行為ばかりしていた
グレタがああなったのも僕の責任なんだと思っていた
僕は地球にとって害である、誰にも必要とされてないと感じていた
でもチェは言った「お前の力が必要なんだ」と
僕は1つ返事でチェの申し出を断った
『無理!』
K-1ファイターの中でも結構嫌いなファイターだったからだ
これがバダハリだったら僕は喜んでアンダーグラウンドな世界に飛び込んだと思う
だがどうだ?チェだぜ?誘われた事が既に恥ずかしいぜ
闘病生活してる父にも一応報告したが「チェwwwちょwww」と笑っていた
こうしてトランクにハトを詰めてるタクシードライバーとして働き始めた
手取りは13万だが家賃は4万、ハトのエサ代が2万
なんとか生活は出来ていて
これはこれで楽しい毎日だ