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内田樹「街場の文体論」を読んで

2023年お正月、コロナに感染してしまいました。ようやく熱が下がったので本でも読もうと思って、読んだのがコレ。
あんまり面白くてnoteを書かずにいられなくなりました。

これは内田先生の大学退官前、半年間の講義をまとめたものなのですが、初回講義で受講生が溢れてしまったため履修者選抜のために課されたレポートのテーマが「私がこれまで会ったなかでいちばん粗忽な人」というものでした。今から受講することはできないけど、私もこのレポート書いてみよう!思った次第です。以下はその作文(^^)

”私がこれまで会ったなかでいちばん粗忽な人”
「私がこれまで会ったなかで一番粗忽な人」は、「私」である。自分なんだから「会った」というのはおかしい、テーマとずれている、と言われるかもしれないが、外側から自分を見つめる他者としての自分もいるから「会う」と言えるのだとバフチン的に考えることもできようかと思うので、そのままにする。というより、単純に今まで「私」より粗忽な人に会ったことがないからなんだけど。

では私の粗忽遍歴を。
小学校2,3年の頃だと思う。隣家に1学年上の女の子が住んでいて、いつも一緒に登校していた。その朝も、その子、由美ちゃんが誘いに来て一緒に学校に向かった。家から学校までは徒歩で10分程度。ぺちゃくちゃおしゃべりしながら、クリーニング屋、駄菓子屋、文房具屋を通り過ぎ、角を曲がって学校のある坂道を上った。校舎に着くと由美ちゃんは3年生の教室へ、私は自分の教室に向かおうとしたとき、あれ?と気づいた。
ランドセルをしょってない!
焦って家に戻ろうと校門を出たとき、玄関に忘れられていたランドセルに気づいた母が持ってきてくれていた。由美ちゃんもさぁ、言ってよぉ。

次は小学校卒業前、担任の先生から進学のために大切な書類を配ります、絶対になくさないように。と注意されたプリントがあった。私はプリントをなくしたり、忘れ物をしたりの常習犯だったので、すごく気をつけていた。
それなのに…。
ない、どこを探してもその書類がない。教室の机もランドセルの中もいつもぐちゃぐちゃなんだけど、とにかく、その底のほうまで探しても出てこない。
どうしよう。先生はすごく大切な書類だと言っていた。あれがないと中学にいけないのかな。
恐ろしくなった私は、正直に先生に申し出た。
「先生、すみません。あの大切な書類をなくしてしまいました」
その時の先生の答え。
「その書類はまだ配っとらんが」

次は高校時代。
確か文化祭の時だったが、かわいい七宝焼きのブローチを買って財布の中に入れ、校門を出たところの電話ボックス(時代!)で、電話したとき、財布を電話の上に置き忘れた。すぐに戻ったが当然ない。
しかしこれだけでは終わらない。なんと翌日も同じ電話ボックスで電話をし、また財布を(もちろん別の)起き忘れた。
警察に届けたけど、恥ずかしいので2日連続ということは伏せておいた。

その後も鍵を忘れたり、財布を忘れたりというのは数えきれないほど。駅に着いたけど財布を忘れたのに気付いて家に取りに帰って遅刻!とか。私はサザエさんか!

鍵忘れエピソードで悲しかった話
会社員時代。毎日残業の忙しい会社だったが、その日は比較的早く帰れたので、井の頭線で当時住んでいた西永福駅に着くと、お弁当屋さんであったかいお弁当を買った。今日はこれ食べながらテレビでも見て、のんびりしよう~とアパートに着いたら、鍵がなかった。なぜ鍵をオフィスの机に入れたのかは今でもわからない。でも、とにかくオフィスに帰らないと部屋に入れないので、ほか弁(が盗まれないか心配だったが)をドアの前に置いたまま、また井の頭線で渋谷まで戻った。帰ってきたとき、ほか弁は、もうほか弁じゃなかった…。

財布忘れエピソード
これは仕事でハワイのカウアイ島に滞在していたとき。ホテルの近くにある中華の定食屋さんにたまに食べに行っていた。リーズナブルでおいしい中国系の方がやっているお店だった。大好きな酢豚定食を食べ終わって、さあ、お会計しようと思ったら、財布がない!
ガーン。部屋に忘れちゃった。
どうする?ハワイで無銭飲食?
ちょうど一眼レフのカメラを持っていたので、お店の人に話して、カメラを人質、いや物質にし、今からホテルまでお金取りに行ってきますから、ホテル、すぐそこですから、とお願いして、待っててもらったのだ。幸いそこの方はいい人だったので問題なくカメラも戻ってきましたとさ。あれ、ちゃんとチップたくさん払ったかな?

忘れ物で一番血の気が引くのが「テスト網棚忘れ事件」
日本語教師になってずいぶん経ってから。中間テストを自宅で採点し、翌日紙袋に入れて登校。日本語教師の常で教科書、教案ファイルなど荷物がいっぱいなので、その紙袋をつい、地下鉄の網棚に置いてしまった。駅について改札を通り抜け、地上に出る階段を上るところで気がついた。
てすとぉーーーーー!!!
鬼の形相で改札まで戻り、駅員さんの胸倉を掴まんばかりの勢いで、「い、いまの電車に、か、かみぶくろが、」
いかん、このままだと遅刻、一旦学校に行って事情を話そう。
で、学校に着いて「忘れ物しましたので、駅に戻ります!」と告げてすぐ駅に。駅で捜索してもらったところ、紙袋は誰にも盗まれることなく終点駅に着いていたことが分かり、テスト返却が1日遅れるというだけで済んだ。
あれは、ほんと、私の粗忽者人生の中でも一番焦った出来事だった。

これにも後日談があって、あれほど網棚には物を乗せちゃダメよと分かっていたのに、旅行に行ったお土産のお菓子をまた忘れてしまった。そしてこれは取り返すことはできなかった。でも、あの温泉饅頭を東京メトロの方が召し上がったのなら、それはそれで本望だわ。

しかし、このレポートのために自分の粗忽な行いを振り返ってみたら、こんなにあったのに驚いた。まだ忘れているのもあるかもしれない。雨が降ってきたので駅のコンビニで傘を買って、それを乗った電車に忘れたこともあった。私が傘を所有した時間わずか20分。

それでも最近はビッグヒットと言えるような粗忽は出してないなぁ。
教訓として言えることは、粗忽であっても、まあまあ生きていけること。
それから、本当に好きなこと、大切なことは忘れないこと。例えば旅行のとき、パスポートを忘れたりは一度もないのよね。(じゃあ、テストはどうなんだ…)

以上。

タイトル写真はSFOのヘイト・アシュベリーで10ドルで買ったゾウの財布と、何度落としても必ず戻ってくるキーホルダー(マレーシア・サバ州、セピロック・オランウータン・リハビリテーションセンターで買いました)

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