株価算定が必要になる具体的なケースについて

株式価値算定業務(以下、「株価算定」といいます)とは、分かりやすく言いますと対象会社の株式の価値が経済的にいくらの値段になるかを計算する業務であります。(通常は日本円で表記されます。)

そもそも、なぜ株価算定が必要となるのでしょうか?

仮に対象会社が株式上場している場合は、その日の株価終値(通常は15時で確定するのでヤフーファイナンスで検索すれば大丈夫です)に発行済株式総数を乗じれば株価価値を計算することができます。

一方で、対象会社が非上場である場合は、客観的な市場株価が存在しないため様々なアプローチを前提とした株価算定が必要となります。以下では、株価算定が必要になるケースについて説明します。

① 上場会社(その子会社や関連会社を含む)が新株発行などの資本取引を行うケース

株式市場に上場している会社は監査法人の監査が必須とされています。(上場することにより誰でも上場会社の株式を取得できることになりますため、その決算情報などの客観性を担保するために監査法人の監査が金融商品取引法により義務化されています。)
監査法人の監査を受けている上場会社が新株発行を行う場合は、新株発行する際の1株当たり発行価格が妥当であることについて監査法人へ説明する義務が生じます。その1株当たり発行価格を決定する根拠資料として、外部の評価機関が作成した「株式価値算定書」(以下、「株価算定書」といいます)を入手することが必要となります。その株価算定書を元に取締役会決議で1株当たり発行価格を承認するという流れとなります。

② 上場会社(その子会社や関連会社を含む)がM&Aにより会社を買収するケース

株式市場に上場している会社は監査法人の監査が必須とされていますため、買収対象会社の株式をいくらで買うのかを決定するために外部の評価機関が作成した「株価算定書」を入手することが必要となります。その株価算定書を元に取締役会決議で買収対象会社の株式をいくらで買うのかを承認するという流れとなります。

③ 非上場会社かつ取締役会設置会社でM&Aにより会社を買収するケース

非上場であれば監査法人の監査は強制されませんが、ある程度の規模の会社であれば買収対象会社の株式をいくらで購入するか取締役会決議で承認をもらうことが必要となります。その際に「株価算定書」を元に取締役会決議で買収対象会社の株式をいくらで買うのかを承認するという流れとなります。

④ 非上場会社で種類株式を発行している場合にストック・オプション(新株予約権)を発行するケース

非上場であれば監査法人の監査は強制されませんが、種類株式を発行している場合は種類株式よりも普通株式の株価が低くなるような「株価算定書」を入手出来れば、直近に発行した種類株価よりも低い普通株価でストック・オプションを発行出来るというメリットが生じます。
ストック・オプションの対象株式を普通株式とする場合は、直近に発行した種類株式の株価よりも低い権利行使価格(= 普通株式の株価 )の設定が可能となり、より効果的なインセンティブプランの設計が可能となるからです。
そのため、種類株式を発行している会社がストック・オプションを発行する場合は、種類株式よりも普通株式の株価が低くなるような「株価算定書」を入手することが最も重要となります。

 上記の他にも、監査法人の監査が必須とされる上場会社が他の株式を取得又は譲渡する場合は、その対象となる株式の「株価算定書」を入手することが必要となります。


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