見出し画像

台風19号。親戚の会社が被災水没し片づけを手伝いに。 実際に現地で、被災地に入る事、現場で気づいた事をまとめてみました。

台風19号で被災した皆様にまず、心よりお見舞い申し上げます。
復興に尽力されている皆様には安全に留意され、ご活躍することをお祈りいたします。

本当は内内の話なので、記事にするのもどうなんだろうと悩んだのですが、
被災地に入る事で、やるべき事や、現場での注意など色々
気づいた事、前知識としてあった事が実際はこうだった、という事をまとめた方が良いんじゃないかと思い。もしご興味ありましたら、読んで頂ければと思います。あまり参考にならないかもしれませんが…。

さて。
今回、台風19号の影響で親戚の会社が水没してしまい、周囲の田んぼから大量の藁や、周辺のごみや色々な物がが流れ込み、設備もダメになり大変なことに。僕も仕事を中断し、たった数日ではありますが、出来るだけ初動に近い所で動くのが良いだろうと(それでも数日遅れですが)手伝いに行ってきました。うちの父親は僕の二日前に既に現地入りし、手伝いを開始してた模様、早い。

まず、前準備です。
電話である程度状況を聞いていたのと、会社のみの手伝いで、周辺のボランティア活動などでは無かった事、工場なのでスコップその他工具等は既に用意されている事などもあって、持ち込むものはそれほど多くはありません。

マスク、ゴーグル、長靴、ビニール手袋、作業着(使わなくなっても良い服等)目薬、ビニール袋、タオル、ディッシュ、傘、カメラ、スマホ、現金、充電器。飲み物、食べ物、着替え位。被害状況や場所によってはラジオ等、他に必要な物がたくさんあるかと思いますが、大体皆さんも災害時はこれ、とご存知のアイテムばかりではないでしょうか。簡易医療キット的な物もあるといいかもですね。ただ、あれもこれもと何でもかんでも持ち込んでも荷物持ちの邪魔な人になってしまいます。

周りをみていると、スマホ充電器等は現地で貸したりも出来るので意外と重宝している様子でした。電気が通っていない場合、スマホ等が情報収集の要です。スマホは常に手元にあるので水没を免れることが多いが、部屋に置きっぱなしだった予備バッテリーは水没、というケースは多そうです。スペアをいくつか持って行って貸してあげるなど出来ますね。

今回僕の場合は、マスクや長靴の様なものは現場に在庫があったり、食料も被害状況によっては普通に確保出来きた(お弁当屋が車で来てくれました)のですが、そういう事は稀だろうし、今回は準備できる物は自分で持っていく事にしました。災害時は
「向こうに行けば何とかなる」は通用する気がしません。
また、正義感や善意だけで出向いたり、必要か必要でないかわからない物資を支援するのも問題があります。
現場は電気が通っていなかったり、物を保存する場所すらない場合も、今回はやはり冷蔵庫の様なものは使えなかったのでクーラーボックス等を準備しないと飲料などは常温、食料の保存もききません。

とにもかくにも一番重要なのは、初動で動ける元気な人。
僕は数日経って現地入りしたので、最初に比べたら大分ましな状況だったはずですが、初動が過ぎたらまず片付けない事には何も出来ない、というのが水害だとよくわかりました。

また、泊る所の確保。
今回は親戚の家は別の場所で被害が無かったので、そこに泊れるのですが、個人的に事情があって宿泊施設をあらかじめ数日取りました。
これも必ず現地入りする前に何らかの方法を確保した方がいいですよね。野宿でも宿泊施設でも何でもいいのですが、とにかく被災地に迷惑をかけない。ビジネスホテル等をかなり調べましたが、親戚を心配してきた人や、一時避難等もあるでしょうか、最寄りからいくつかの駅はかなり予約を取りにくい状態でした。


現地入り。

画像1

現場に入ると水はすでに引いていますが、泥が乾き、これ以上乾燥すると空サラサラになって巻き上がりそうです。ヘドロや川の水、下水など色々な物が混ざった物らしいので、ゴーグル、マスクは必須。乾燥エリアでは結膜炎が多発、というニュース速報がスマホにも入ってきたので、注意すべき部分かと。

川沿いを進むと大量のごみが出されています。流れついた、という事ではなく、周辺の家や工場から出された物ですね。

画像2

紙類や水を吸う物が特に重量があり、どろどろになっていて回収も大変です。また、タンスや箱のような形状のものは全て水が入っているので、水を捨てる作業も追加されます。出しておけば市が回収しに来るようです。他にもボランティアの方や警察などが巡回し、被害状況の確認等を行っています。

画像4

とにかくまず、運び出すしかない状況です。運び出しをしていると近所のおばあちゃんが「大変ですね、気を付けてくださいね」と声をかけてくれる。いや、僕は安全な所から手伝いに来ただけ、おばあちゃんの方がよっぽど大変です、なのにこちらの心配などしてくれて泣けてきます。

画像3

画像7


画像12

お墓の塔婆も全て流されてしまい、周囲の工場や家に流れ着いています。すべて回収し、お墓の敷地に戻します。

工場の写真は一部しか出すことが出来ませんが、絵も交えて補足していきます。まず水位。

画像5

画像6

トラックや、建物の一階窓の3分の2程度まで水没したのが分かります。絶句です。これより下にあったものはほとんど全て、使い物にならなくなります、自分が入った時はすでに水が引いていたので、これを見てもちょっと信じ字られない位です。ニュースの空撮でも見ていたのですが…水に漬かるというのはもう、何も手元に残らないのに等しいんですね。

画像8

藁。この藁が離れたところにあった田んぼから流されて工場全体をほぼ全て、覆っています。これを全て手作業で回収し、一か所に集めるのですが、ツタやお墓の塔婆、タイヤや角材などが混ざっていてさらに、水分を大量に吸っているので重量が凄い。ですが、乾燥してしまうと今度は砂ぼこりで大変なことになるので、急いで集め、回収車に持っていってもらわないといけません。

周囲もいくつか工場などがあるのですが、トラックやフォークリフトと言ったパワータイプの乗り物は軒並み水没で破壊されており、しかも止まった場所から動かすことも出来ない状態。機械の頼らず人力でやるしかありません。長靴やビニール手袋は必須です。ツタやひも等邪魔な物を切るナイフ等もあると良いですね。

注意1

いつも以上に字がヤバいのは、握力もなくなり筋肉痛で手がプルプル震えているから。それに加えて字が元々汚いので、絶望的です。

ガラスの破片や木材に刺さったままの釘、泥水に浸かった新聞や広告チラシなどは、泥水のせいですべて同じ色になってしまいよく見えず、大変危険です。図のようにチラシを踏みつけ後ろにバックドロップ~その先に釘などがあったらそれで死んでしまいかねません。注意です。ツタやロープなどに足をかけたり、そもそも瓦礫を踏み外す等、もう危険しかない。自衛隊の方々のこういう時の活躍は凄まじいのだなと、改めて思います。 この、落ちている物への注意が、一番気を付けないといけない部分かも。他も泥に隠れている空き缶や先ほど話した藁等も足を滑らせる要因です。とにかく足元に木を付ける事が重要です。

画像10

カエルです。僕はカエルは好きなので、普通に掴めるので気にもしませんが、畑から流れて来たのか何千匹もいます。またクモや巨大なムカデ、よくわからない謎の虫的な者共も何千匹もいます。こういうのがダメな人は注意です。田畑や森林が近い場所だったら本当に、何千匹。全部合わせたら何万匹もいます。「気持ち悪い!!」等と騒いだ所でどうにもなりませんし、多分周囲もイライラします。被災した方々のストレスはカエル何千匹等とは比較にならない。

画像11

室内も全て水に漬かってしまった後です。この写真はわざと白抜きの個所を作ってあります。もはやほとんど判別不能の書類やチラシなどですが、例えばこのように、どこかの住所だったり、自分の恥ずかしいメモ等が散らばる事に。仮に僕の仕事場がこのようになった場合、まだ言えない連載の情報や、恥ずかしい落書き等も見えてえしまうので、注意が必要です。

実際片付けが始まると、その為に台車や、入ってきた車を通す為には道をまず用意しないといけない為、手で片付ける。使えるようになった台車も何往復もしていると泥でタイヤが動かなくなり、洗わないといけない。捨てるものだってある程度仕分けが必要ですし、その間も足元の釘やガラスにも気を付けなくてはならない。もちろん、ピリピリしても仕方がないのですが、事故に会う前に知識として知っておくだけで、対応力は大分違うはずです。僕もこういう知識は過去の震災等で共有された皆さんの情報で知っていましたが、実際にその現場で作業するとなると、ガラスや釘は泥ごみに混ざり見えず、足は泥でどんどん重くなり注意力は落ちていきます。思考通り体が動いていかなくなってきます。

また、マスクとゴーグルは目の前が曇り、息苦しくなっていきます。加えて普段使わない筋肉を酷使して座る立つの繰り返し、重い物を持ち続ける事で低下する握力等、あっという間に疲弊します。疲弊する要因は心身的な事情もあります、片付けても片付けても作業が進んだ気がしないからです。達成感が得られる仕事ではない。この辺りは、あまり考えていなかった辛い部分です。

さらに、初日以降の作業ともなると、襲い来る筋肉痛との戦いです。何日も初日の様に元気で作業を続ける事はよほど能力が高い人でないと、不可能です。体調管理が大事です。

所で、気のせいかもしれませんが、普段特に何とも思わず飲んでいたコーヒーなんですが、大分体力回復というか、意識レベルを高く保てる気がしました。普段のコーヒー以上にシャキっとしたのに驚きました。多分、ブラックが良いです。

あと、トイレ関係。今回は使えるトイレがあったので問題なかったので、対処方法は経験がないので省きますが、場合によってはこれについても対応しないといけませんよね。トイレのある場所をチェックするとか、簡易トイレを用意するとかでしょうか。

水害は本当に、全部、何もかも、水に浸かったらダメになってしまうんだなと。何となく頭の中で「乾燥させれば機械も直るのでは」とか「洗えばまた使えるようになるものも沢山あるはず」と考えていたのですが、書類も、パソコンも、データも、工場の機械も車も家電も全てだめになってしまう。家だって一階部分が水没したら、仮にリフォーム出来る場合だって莫大な費用が掛かる。

今まで築いてきた物が全部なかったことにされてしまう。

来てくれて助かったと言ってくれる。有難い言葉ですが、違うのです。自分が数日居たって…と考えてしまう。もちろん心配だし、力になりたい。だが自分が後悔しないために手伝いに来ている、そんな気もしてしまうのです。行かなかったら後悔するとか、僕は勝手なのだと、思ってしまう。

画像13

仕事の製品、もう使えないので一つ貰って来た。僕も昔アルバイトをここでした時にこういう物を沢山扱った。

まとめると

体力十分の元気な状態で、被災地入りする前に自分で調べ、最低限の準備をしていく。向こうに行って迷惑をかけない。あとは笑顔でいる事。


最後におまけ。

これはもう信じるとかそういうレベルの話では全然ないのですが、手伝いに行った工場はもともとは亡くなった祖父の会社なんです。

工場の片付けをしている時に、その亡くなった祖父にそっくりな人が工場に入ってきて、ニコニコしながら僕と会釈をかわし、工場の奥に歩いて行ったのです。あまりに似ているので、大分昔に会った事がある祖父の兄弟か親戚の誰かだと思い(僕も正直な所あまり会わない親戚を良く覚えていないので想像ですが)あとで叔父達にあれはおじいちゃんの兄弟かなにかか、と尋ねたら

「男兄弟はもうこの世にいないし、そんな人とは自分達は会ってない」と。

ま、まあよく考えたら、もしおじいちゃんだったら僕の前に、会社を継いで頑張ってきた叔父の方に顔出しますよね(笑)

僕がただ疲れていただけだと思いますが、ちょっと嬉しかったんですよね。久しぶりに会えたような気がして。

おわり。


もし気に入って頂けましたらサポート頂けると大変嬉しいです(^^)業界が偏ってしまう内容が多いですが、色々参考になるような記事が書けるようにしていこうと思います。