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オーガストウォーズ。ごく普通の、ちょっと性格の変なお母さんが、ロシア軍総合火力演習の真っただ中に放り込んでしまった息子を助ける為、私服で突撃。


オーガストウォーズ

少し前の記事に、エクスペンダブルズのポスターを見て「ショーシャンクの様な作品を思い浮かべる奴など居るか」と下記記事を書いたばかりなんですが……どうも僕の間違いだったようです。

「その作品を面白いと思っている事が理解できない」というマウントを取りに来る人が辛い。
https://note.com/valensia/n/n73d4993c5402?magazine_key=m6ef42bc092be


さて、この作品、僕は全く存在を知らず、先程ジャケットを一目見て
観まして。大分前の作品ですが、まずはメインビジュアルを……。

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どうでしょう。もう完全に宇宙ロボット兵団VS美女と少年もしくは親子。
ロシア映画という事で、ロシアのトランスフォーマーかバトルシップ的何かかと思ってSF脳で観始めた所……

冒頭から少々しょっぱめなCGでミクロマンのデカい奴の様なロボットと、そのロボットと親友であろう少年がディセプティコン的な高次知能メカとのバトル。CGがしょっぱいのはまあおいておいて、少々古臭い時代を思わせる宇宙戦闘服に身を包んだ少年はロボットと共に悪の何かと戦っています。

最初から予算をそんなに取っていない映画なんだろうと勝手に思い込んで観ていたので想定内だったはずなんですが、このまま続いたらよくあるB級SF、よほどのショボさか想定外の企画でもあれば楽しめそうです。

チョーマ少年とロボット最大の山場の瞬間、場面は変わりしょっぱい子供向け舞台を観劇している場面に。場所は現代。
そう、少年はこのロボットの登場する宇宙SF+中世古典劇の様な舞台「コスモボーイ」のファン。

ローランド・エメリッヒのハイ・クルセイド的な科学と中世の混じった感じ…の舞台。

少年の名はチョーマ。離れて暮らす離婚した軍人の元父親を持ち、母親クセーニア、祖母と暮らしてます。
チョーマは元パパを好いており、ν旦那の事を良く思っていない、内向的で、頭の中はコスモボーイの空想と妄想で支配されており、現実に目をむけようとしない。いやな場面はコスモボーイで補完してしまうような少年。離婚が原因なのか、ν旦那候補が嫌いだからか、コスモボーイに逃げ込まねばならないトラウマがあったのか理由は分かりませんが、家庭の事情が原因、とした方が悩まなくて済むかもです。

さて、その母親クセーニアは、過去の旦那と息子を通して連絡は取りあっているが、新たな旦那候補といい感じに話が進んでおり、ν旦那候補と上手く行きたいと思っています。洋画にはよくある出だしです。


クセーニアは、チョーマを自分と祖父母の元で遊ばせたい、と言う元旦那の提案で、チョーマを祖父母と元旦那の元へ向かわせます。(割と危険地帯と思われる地域だという事は承知ですが、軍人の旦那が居るからいいだろう、程度の思いで)
さぁ!子供がいなくなり、自由になったクセーニアは
ウキウキ気分でν旦那候補とデートへ…そこへ、息子を送った地で紛争が始まると情報が。

焦ったクセーニアはν旦那候補に頼みますが、取り合ってもらえず、どういうわけか侮人前でベッドを共にした際の出来事などを侮辱的に話し始める始末。意味が分からないほど侮辱します。
(なんでこんな奴と付き合う事になったのか分からないほど)

正直この下り全く必要ない気がします。

こんな男が相手では、クセーニアはタダの思慮の浅い、軽い女性だと思ってしまいます。何となく、ちょっと子供の事を考えていない母親が物語を通して息子を大事に思う…という流れにも見える気がするんですが、全体的に雑で、それが正しいかどうか自信が持てない(笑)

幻滅したクセーニアは彼のそばを離れ、紛争が始まる直前の南オセチアに子供を助けに行きます……。こう書くと非常にひどい母親ですが、実際、紛争の話が判明してからも男とデートする予定でいますし、クセーニアの母親が愛想をつかして代わりに息子の元へ行こうと飛行機のチケットを取ります。

この後どう転んで息子想いになっても、ν旦那候補がもっと狡猾であれば、クセーニアは息子を助けに行かない…かもしれないと思ってしまう(汗)

場面は変わり、元父親は紛争開始の知らせを受け、祖母とチョーマを連れて車で家を脱出しようとするのですが、直前で自宅の前に敵の戦車が現れます。元旦那と祖父母はチョーマだけを急いで車から離し、
自分達も戦車に、敵意が無い事をアピールしますが、祖父母も元父親も砲撃で一撃のもとに爆殺されてしまいます。

それを直視し、現実を受け止めきれないチョーマは妄想で敵ロボットに父親が倒されたと思い込み、現実逃避し家に隠れます。

紛争地帯で孤立したチョーマ、紛争地帯にたどり着いたクセーニア。
果たしてクセーニアはチョーマを救い出すことが出来るのか!?

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ジャケットのロボットと、それに向かい立つ勇壮な女性と少年、ロシア版
トランスフォーマー。タイトルはオーガストウォーズ。
低予算映画か、僕の知らなかった大作映画か。

どれでもない。

この作品、ジャケットデザインはほぼ無関係で(全く関係ないとも言えませんが)2008年に起きた南オセチア紛争が舞台の、ロシア軍全面協力ロシアンフックウォームービー。

題材が実際の出来事ではありますが、演出面はほとんど創作かと。時系列や会話の内容も僕にはどこまで史実か、と判断する自信は調べた所、ちょっとないです。

知る限りでは
グルジアとオセチアの人達が、南オセチアをロシアに帰属させるかどうかを
問う戦争で、8月戦争と呼ばれています。オーガストウォーズはここから来ていますね。
内容についてははっきりしない部分もあるようで、ここでは述べませんが、
実際起きた事をベースにしているようです。
詳しくはwiki等を。

SFパートはCG的にはショボメなんですが、構図が良くカッコイイ場面も多いです。味方、敵軍の人間関係や紛争の扱いについては、政治的な話なので割愛します、基本は母親が子供を助け出す為に、軍に同行する話なので、
戦いの内容等は何処まで史実なのかはわかりません。

人間関係や設定も少々粗く、強引だったり都合がいい部分もあったりするのですが、この映画の本道は実は、ストーリーとは別にあります。

ロシア軍全面協力。

ここ。

観た感じだと、相当本気で全面協力しています。
Mi-24ハインド等も登場し、戦車の車両数もおかしな両投入されています。
ロシア軍が武器大博覧会をしたいだけなのではと思うほど、
空から市街戦までガチ三昧。日本で言えば、富士総合火力演習の動画をそのまま映画に使っていいよ、という感じ。

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市街戦等も気合を感じられ、危機感を煽るのも上手く、かなりドキドキさせられます。本物を使うと、構図は限られる場合がありますが、何よりCGでは出せない重量感や空気感、煙や土埃など。

あ、もちろんCGもその辺りの演出は素晴らしく、構図では上回る事が多い世界ですが、トラ・トラ・トラ等をご覧いただけると分りますが、実写がCGと一番僕が違うと思うのは、実写の方が重力が本気だという点だと思うのです。僕はフルCG映画も好きなので、どっちが良いとか悪いではないんですが、重力が本気、という一点で実際の物を使う迫力がより、伝わるかもしれないです。

ウルトラマンが昔より、空から着地した時の演出が凄くなっているのは、作り手の「重力の本気」への考えなのかなぁと。ホントだったら体半分くらい地面に埋まりそうですが。

そういう意味では、ロシア軍全面協力によって成し遂げられた戦争再現は凄まじく、総合火力演習を傍で観ている時の様な迫力に近い物を感じられるのではないでしょうか。

このロシア軍全面協力の紛争場面を見る為に、十分観る価値のある映画ではないかしら、と。

オーガストウォーズ。ごく普通の、ちょっと性格の変なお母さんが、ロシア軍総合火力演習の真っただ中において来てしまった妄想癖のある息子を助ける為、私服で突入する、そんな熱い映画。

あらゆる意味で、お勧め。


もし気に入って頂けましたらサポート頂けると大変嬉しいです(^^)業界が偏ってしまう内容が多いですが、色々参考になるような記事が書けるようにしていこうと思います。