邦題を「アンチグラビティ」にした罪の重さ(笑)原題の「昏睡」で観に行ったら多分、面白く観れた気がする。そう考えるほど、タイトルは重要だと解ったのは収穫。


https://antigravity-movie.com/

パンフレットが売ってなかったので画像が無いのですが(汗)

昏睡状態に陥った人間が来る場所。
まるでニューロンを思わせる構成の世界はそのポイントごとに重力まで
歪んでおり、落下したと思ったら、平面な地面を滑り込む。
ジャンプしたと思ったら、落下する。
この世界は何なのか、迷い込んだ男の「失われた記憶」がすべての鍵。

みたいな感じ。
クリストファー・ノーランのインセプションやスコット・デリクソンのドクター・ストレンジを思わせる奇妙な世界に迷い込んだ、昏睡状態の男の「記憶の世界」と
呼ばれる所で出会った、他の昏睡状態の人間達が生きる世界。

ここでは命の瀬戸際で目覚めるスキルを「覚醒」させる事で、
高次の能力として使用できる。
主人公は現実世界で建築デザイナーなので、建築のスキルをアップグレードし、
何もない空間にデザインした建築物を生成出来る。
他にもマッピング能力や戦闘能力に特化した人間など様々で、
そこに現れる「脳死した人間が変化する」怪物と戦っている…。

面白そうですよね、僕もこの日観に行った4本の作品の中で、一番期待していた
映画だったのですが…面白くない事も無いんですが、ちょっと期待とは違っていたり、
内容が普通過ぎたでしょうか(汗)

出だしは良いんですが、そのあとしばらく、世界観魅せたい病の様な演出が続き、
キャラ出しに時間がかかってしまい。
その後、主人公のスキルが開眼して「おぉ、バトルに建築スキルでどうやって
戦うんだろう」と思っていたら、特定の所で建築するに留まってしまい。
アイデアも、昏睡状態の方の世界で暗躍する人物の設定も面白く、
何より主人公の「建築スキルで生き延びる」というとても面白そうなキャラクター
だったんですが、結局自身の「記憶探し」の説明と世界観の説明で
終始してしまい……。
建築スキルをうまく使えば、攻めにも守りにも、もっと言えば、
世界そのものさえ構築できるのでは…と色々妄想してしまい(汗)


少々ネタバレになりますが、
登場人物のほとんどが、なんだかんだ言って現実世界より「居心地がよさそう」だったり、「体の不自由が治っている状態」だったり、現実世界に戻ろうとする
思い入れが主人公にすら、後半の恋愛っぽい要素以外見受ける事が出来ず、
この世界を作った「製作者側」の言い分がある程度まかり通ってしまう。

この辺りはマトリクス的な演出なんですが、マトリクスの場合
「こちらもあちらも」だったりむしろ「仮想空間を一人前の世界にしよう」という
エネルギーがあるんですが、アンチグラビティはそれも中途半端で。
物語的に「発展途上の昏睡世界」なので、そこは仕方がない部分もあるんですが、
結局何が言いたいんだ的な。


個人的な趣味でしかないですが、
例えばテーマ性なら例えばトゥモロー・ワールド的な物が有ったらよかったかしら…。
そしてSF性なら甲殻機動隊やマトリクス的なカッチリした何か、
映像はインセプションにちょっと追いつけないので、ニューロン構造に意味があったり、それが生き死にに直結していたりすれば…みたいな。


あ、映像は綺麗で世界観はかっこよく、脳死した人間が堕ちるキャラクターもなかなかムートー的でいい感じです。
何が言いたいかというととてももったいない映画。
絶対面白くなるはずの映画なだけに、モヤモヤしますねー(笑)


……と、ここまで書いた所で。

タイトルの「アンチグラビティ」
これが一番の問題だと思うんですよ!
というのは、これは放題を付けた何処かの愚か者のせいですが、
映画を観る前に前情報を仕入れないことにしているので、観終わった後知ったんですが、原題がKOMA、「昏睡」らしいんです。

このタイトルだったら、全く違う感覚で観に行くので、もしかしたら
面白く見れたんじゃないかと思うんですよ。
さすがに映画を観ている最中に最初のタイトルの発想を変えるのは難しく、
重力戦争のようなものを期待してしまっているわけですから。
昏睡がベースで最初から観れば、不自然でまとまりのない世界観も、
登場人物が中途半端っぽく見える理由も、結構合点がいくというか、色々最初から
納得ずくで観れた気がするんですよねえ……。

ただ、普段ほとんど映画のタイトルの事で考える事はなかったんですが、
今回これを凄い強く思った事で、逆に言えばやはり、原題だったら面白かったと
思ったのではないか、という疑念がぬぐえない。

そして、自分のマンガのタイトルは今以上にちゃんと考えようと思う、
世界の片隅の一漫画家は、思うのです。

それが一番収穫でした(笑)

もし気に入って頂けましたらサポート頂けると大変嬉しいです(^^)業界が偏ってしまう内容が多いですが、色々参考になるような記事が書けるようにしていこうと思います。