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100万通りの方法③

恐怖や、不安はこんなにも、人を動かすのか、
大きくなった会社は、傾きはじめると、その頭の重さが速度を早めた。

一本のビデオを見ているように、甘い誘惑。金のなる木を掴んで、騙されるまでの物語りが進んでいく。酒と女と男とタワマン。見た事ない高級車が何台も通りすぎる。
唯一シナリオを知っていた
詐欺の犯人を大人達は、死に物狂いで探し
かつて、酒を飲みあっていた者達が、奪い合い
敗者は、全てを失う。何か大切な物を見つける事が出来たなら、幸い。

それが、引き金か、引き寄せたのかは
本人にしか知り得ない。

次々と店舗は、差し押さえられ、
鳴り止まない電話。彼の居場所を聞かれる日々。

そこに現れたひとすじの光、希望。
僕らの店の売却話し

どうしても、叶えたかった彼。
僕は結果として裏切る事になる。
その後何度も、誰かにそう言われたが、本人の口からは聞いていない。

隠れるように喫茶店に呼ばれ、面会。
僕は、天秤にかけられ、それ以上のお金で買うなら、店を売ると言われる。
どこから出た計算式、あり得ない条件に、首を縦にはふれない。

僕の望みは一つ。この店とスタッフを守る。
自分自身を守るが一番強かったかもしれない。
結局は。

1日でも長く店が残る事。
それだけを望んだ。方法は考えない。ただそれだけ。

現場は誰1人売却の場合残らない。相手との交渉が、進まない。すぐに売る事は出来ない。空家賃を払い続ける事が出来ない。転売は家主が認めてない。次の契約は家主の許可がいる。
僕を味方してくれる情報が毎日届く。

家賃を滞納していた会社側が、家主さんから、追い出される事になる。
その他の借金を取り立てる為に、解約して、保証金の確保を要求され、店の権利を手放すしかない。

そんな中、毎日営業を続けた。
幸い、不安で、離れるスタッフは1人もいなかった。
有り難い事に、家族も、お客さんも。

100万通りの方法が思いもつかないやり方で
道を開く、諦めなければ。

店と僕と仲間は残った。そのままの型で。

毎年店の前を通る蝶々が現れると安心する。
今年もこの季節が来た。
あの日も、それはシルシとして目の前に現れた。
最後に紙にサインをし、彼と話をした日も。

その後時間はゆっくりと流れ
沢山の出会いと、別れ、仲間達も独立していき
10周年とゆう目標にしていた日が、迫る頃。
爆発的な旅行者で賑わう街に、
まだ聞きなれない名前の風が、吹きはじめていた。

中国からの流行り病の噂を耳にするようになる。

後に皆んなの顔にマスクがつく日々をこの時は知るよしもない。
また、恐怖と不安が人々を動かすとは。

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