猫を轢きかけた
猫を車で轢きかけた。ライトに照らされた猫がちょこちょこと素早く横切った。
慌ててブレーキを踏んだ後、僕は飄々と逃げる猫を見てなんだか可愛いなって思ってしまった。
お前、ここで命終わりだが?轢かれたお前は保健所に手荒に回収されて終わるんだが?あー、もうちょっと本気で走ればもうちょい生きられたのに、余裕かましましたわ(笑)とか思いながら死んでいくんだが?
そんな猫を見て可愛いって思った。
こんなことを言ってると愛猫クラブ関東支部から猫しっこを目一杯吸った猫砂を自宅に送りつけられるかもしれない。ああ、ありがたく使わせて頂く。乾燥させればまた使えるからね。僕しっこを吸わせて送り返します。
轢かれそうになった猫には申し訳ないが、僕は猫が大好き。
今までたくさんの猫を見てきたし、たくさんしっぽの付け根をトントンさせて貰ってきた。
だが、その余裕こいて、どうせ人間様は避けて下さるんでござんしょ?みたいに横切った、ぽっと出の猫が今のところ僕の生涯猫オリコンチャート上位に食い込んできた。異例の新人である。
しかしトプ画に採用したアナル見せ見せ猫の不動の一位に変わりはない。
ここで思ったのが、人間は自分の手でそれをどうにでも出来る存在を可愛いと思ってしまうのでは、と。
つまり、人間から見て下等な存在、またはその存在から人間に対して害を及ぼさないものに対して愛らしいと感じるということ。
例えば、あなたの飼っているハムスターや小鳥。男子小学生の握力ほどでも潰れて死んでしまうほどか弱い。あっ、想像しちゃダメ。言った僕が悪いけど。
そして熊。自然界で出会って仕舞えば人間なんて力及ばない存在であるけど、動物園の谷の底で棒をぶん回してる熊を「可愛い!」なんて夕方のニュースの特集を見て主婦は言う。しかし、そのぶん回してる棒でお前ごときは即死なんやで。
また『可愛い』の言葉の中には『可哀想』という意味も含まれているんだと、どこかで聞いた。まじでどこで聞いたか忘れた。すまん。まあ多分、可愛いで辞書引けばそんな感じで出てくるはず。知らんけど。
だから人間に従わされてる、飼い慣らされている存在を可哀想=可愛いと人間は思ってしまうんだと思う。
人間がその気になれば轢かれてしまう猫、握り潰されるハムスター、野生を取り上げられ棒で振り回すことで餌を貰う熊。
そして12連勤目のあなた。ママ、なんか言ってやって。
あら!今日で12連勤目なの!?大変でちゅね〜 寝てないの!?いらないでちゅね〜 そういう不幸自慢いらないでちゅね〜 就活して苦労して自分で選んだんでちゅよね? なら逃げるのもあなた次第なんじゃないでちゅか〜? ここで愚痴ってても何も変わらないでちゅよ〜
ママはいつもこう。泣くなおっさん。
みんなみんな可哀想。
だから、そこのお前がいつも周りから言われてる「可愛い〜♡」の意味もしっかりと考えた方がいいのかも知れない。
でも、僕は本当に可愛いと思ってる。お前のその足の小指に申し訳程度に乗ってる爪とか。
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