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「こなたよりかなたまで」の感想

・死生観がテーマの泣きゲー、KOTOKO主題歌が良いのは知ってた。
・公式YOUTUBEチャンネルが無く、違法アップロードしかOPがないので、KOTOKOさんCHで投稿されているライブ動画を見てください。この作品を知らないひとでも「死生観、なにげないうつくしい日常」のワードを知ってればグッと来ると思う。自分はそれで気になってた。

・吸血鬼モノなのも知ってたが闇夜を統べる夜の女王的な伝奇要素は薄く、本作が死生観モノなのも相まって「永遠の時を生きる」部分が主軸でそこ以外の人外要素はそんなに掘り下げられなかった。
吸血鬼ヒロインいるなら吸血シーンがスチルであると思ったがそれもない、というか吸血の描写も基本1回か2回しかない。

・やってみたら思ったよりシナリオがコンパクト。フルコンプに10時間くらい?それよりも短いかも。
・末期がんに侵される主人公。残された日々。非日常の存在、永遠の命を持つ、美しい金色の吸血鬼と出会う。甲斐甲斐しい幼馴染、儚げな童女と人懐っこい看護師、謎のクールな転校生が物語を彩る。

・シナリオが短いのでヒロイン間の人間関係は薄く(いずみちゃんと優の関係は描かれるけどEDが同じなので例外)、恋愛以外の関係性も好きな自分としては物足りなさはあるが、逆に言えば必要なところしか描いていない。
短いながらもヒロイン全員魅力的で、主人公のエゴイストな優しさが慈愛的な恋愛に変わることに説得力がある。こういう部分で文章がうめ~と感じた。

・2003年発売に加えて古のビジュアルノベル方式(グラフィックの上レイヤーに文章が常に乗る)と来れば、「少年」呼びの年上の男性医者や看護師ヒロインの格好もゼロ年代の気配が色濃い。
学校行事でクリスマスにダンスパーティがある、弁当が食えるぐらい広い(元)温室がある●校、出入り自由な屋上ってのもなんかレトロだ。
20年前の作品なのでゲームシステムやギャクのノリ、良キャラの友人男性がいて鈍感主人公がモテまくり(こんな病院は、ない)に時代を感じる。
特に「■リータ殺し(おんな泣かせの意)」とか「■リコン」とか「■リ」が頻出するのが昔のエロゲならでは…と感じた。まあ優にそういうシーンは無いんだけど。

でもそれ以外は古さを感じない。古さはあっても古臭さは感じず、ノスタルジーとか郷愁に近い。あと人間と生と死はいつの時代も不偏のテーマなので今読んでも面白い。
オノマトペがひらがなだったり語尾がカタカナだったり独特の柔らかさのテキストで、描写も適切で感情移入がしやすく、令和の今も読みやすい文章だと思う。

・攻略順は、クリス(ノーマル)→クリス(トゥルー)→いずみ+優→九重→佐倉
・いちばん好きなのはクリスノーマルエンド、次が九重√。でも他が良くないわけではなく全部甲乙つけがたい。捨て√が一つもなくて、どれも彼方が選んだ選択のひとつ、解釈のひとつとしてよかった。
特に九重のラストダンスはうるっとくる。クリスと対になる非日常のポジションは重要だけど、イレギュラー的存在なので彼方との積み重ねが薄く、このゲームのシナリオ量的にそんなに深みを出せないものかと思って終盤に読んだらいい意味で予想を裏切られた。うまいね、このゲーム。
彼女の背負っている宿命、冷徹な戦う死神の部分は深く掘り下げず、彼方と出会ってひとりの女の子として揺らいでいくストーリーラインがブレないのが良い。


かわいい

・絵柄かわいい。こういう昔のとろっとした柔らかめな萌え絵すきだ。
キャラデザもこの時代ならではの雰囲気が出てて良い。立ち絵が特にかわいくて好みなのも良い。やっぱ立ち絵ってノベルゲーで最も見る絵なのでそこがお気に入りだとゲーム自体への印象も自ずと良い。

・あと面白いなと思ったのが、絵柄が20年前の萌絵だけどこういったレトロでギャルゲ塗りの目が大きい絵柄は2023年のSNSで割りと見るところ。
地雷系とか萌え/ダーク系とか、夢絵でもあったはず。Z世代のサブカル好きな女の子のトレンドとして指示を得ている印象。推し活している量産系/地雷系のSNSアイコンが西又絵とかゼロ年代萌えフィギュアの画像が彩度低めでグローっぽいフィルターかけたアイコンなのわりと見る。ファッションと一緒で絵柄も一周するのかな。

・良い作品だったけど、いちばん(悪い意味で)気になったのエロシーンかも。
え?ここで?というシーンで挟まれるしエロゲにエロが急っていうのもナンセンスだけどそれにしたって急すぎるしシナリオが長くないので余計に際立っている。末期患者が病院でヤったり、患者の死を悲しむいずみちゃんと慰メックスはえ?え?え?になった。あと佐倉のラストックスもさっきまでの感動は?!になった。末期患者の死生観を丁寧に描いていただけにフィクション・エロゲ要素ボンと出たの気になっちゃったねー。