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【295日目】しっかりしている

ご隠居からのメール:【しっかりしている】

寝たきり暮らしを長く続けると、運動不足になる。それでは困ると判断して、ベッドで足腰の屈伸運動をしていると、看護師の声がとんできた。「やめてください。アブないよー」。

ここはおとなしく従うしかない。回診医師は、「ハセベさんはしっかりしている」と言ってくれた。冷静沈着ーーわがままは云わない、グチもこぼさない、足るを知る模範的なコロナ老人をめざすーーという心構えが「しっかりしている」という意味になるだろうと自分に都合のよいような解釈をする。あるいは「まだ認知症が中等症IIまでは進行していない」という意味か。

便秘は一時的に問題が解消した。

こうしてふりかえってみると、私自身、しっかりしているとはいえ、気のゆるみがあったことは否めない。もともとズボラな性格なので、マスクは着用していても、鼻は露出するなどして、きちんと着用せず、うがいや手洗いも手抜きする傾向があった。コロナ曰く、なめたらいかんぜよ。


返信:【Re_しっかりしている】

昨日は、朝7時の母さんの電話からはじまった。「父さんから伝言がある。あとは、潤史郎に任せた」と。まあ気持ちはわかるが、朝7時からの会話ではない。突然の父さんの入院で独り暮らしがはじまり、不安が募っているのだろう。

「コロナで死んでしまうかもしれないから、身の回りを整理する」とも言っていたから、かなり、弱気になっている。「どうしたら治るの」と聞いてきたので、「薬を飲めば治るけど、実験台になるのが嫌で、じぶんから断ったのでしょ。いまは、安静にしてな」と伝えた。

父さんの入院から、兄弟姉妹のグループLINEも毎日コメントがいきかっている。実家への食料提供や、父さんの差し入れの話だ。自分は、本を送ることにしたよ。

本は、百田尚樹さんの「日本国紀・上下巻」、古本屋大賞を受賞した瀬尾まい子さんの「そして、バトンは渡された」。瀬戸内寂聴さんの「寂聴97歳の遺言」をチョイスした。電車で新浦安へ向かう途中、瀬戸内寂聴さんの本を3分の1ほど読んだ。愛と孤独の話だったが、なかなか面白い。

浦安に到着すると、実家に向かい、姉さんと合流。食材を母さんに差し入れして、パソコンをピックアップした後、順天堂病院に向かった。病院で、Wi-Fi設定ができればいいけど、父さんは面倒な設定ができないかもしれないな。でもまあ、必要であれば、自力で使えるようにするだろう。

看護婦さんに、差し入れやパソコンを渡して父さんの病状を聞いた。それほど心配が必要ではなさそうな印象をうけたよ。


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