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【268日目】:原点は大井町

ご隠居からのメール:【原点は大井町】

「息子へ紡ぐ物語」がはじまるきっかけになったのは、大井町だったが、昭和三十七年に上京し、しばらく入居していた会社の寮も大井町にあった。正確にいえば、JR大井町から徒歩十五本の立会川の社員寮だ。八畳の部屋に台所があって、二人の同僚とともに三人で暮らしていたが、炊事なんかするわけがない。それよりも大井競馬場の近くなので、せっせと競馬場に通った。

わい雑な場末の雰囲気で、ロクデナシの街という印象だったな。一方、佐藤信安さんの家は、大井町線、後の田園都市線の尾山台にあったが、こちらは裕福な有産階級の街で対照的だった。もっとも、大井町はいつのまにか、かなりこぎれいな街に変貌している。

二十世紀が終わって、二十一世紀になってからは、年に一度、海外から帰ってくる徹さんと大井町の居酒屋で雑談した。一時間にも満たないつかのまの談話だったが、楽しかった。

彼の研究テーマは「意識」という哲学の難問で、内容はほとんど理解できなかった。初心者向けの入門書を書き残してくれと依頼したことがあるが、彼は応じなかった。自分で考えろ、ということだろう。

彼の言ったことで、おぼろげながら記憶に残っているのは、

・人間は仏さまがいちばんいい時に死なせてくださる。
・現象はこころの影である。
・医学は統計にすぎない。

この三点についてボンクラ頭で考えているが、何をどのように書いても、彼の言葉ではないだろう。


返信:【Re_原点は大井町】

東京には多くの街があるというのに、この街は、なんだか特別のようだ。60年前、父が寮生活を過ごした場所に妹が一人暮らしをはじめ、自分は通勤途中にわざわざ下車をして会社までの道のりを30分かけて行き来する。父の親友でもある叔父さんの終生地となった大井町は我家にとってご縁のある街だったんだな。

本日から外国人の入国が禁止された。あらたなる変異ウィルス、「オミクロン株」の脅威に対する処置だ。政治家や専門家のみなさん、各企業は、過去2年間の経験を活かして、良い道を示してほしい。

しかし、この人類に挑んでくるコロナウィルスが、このまま3年目に突入するのであれば、更なる長期戦を念頭に入れる必要があるのではないだろうか。

例えば、終息まで10年、20年の時間を費やす、はたまた人類滅亡のプロローグの可能性があるとーー。

鎖国を10年、20年続けるとなると、いままで以上に国力勝負になる。もちろん経済力が低下するので円の価値が下がる。食料とエネルギー問題を抱える日本は、国内での生産を目指すが資源のないのでどん詰まりだ。他国を頼りたくても、どの国も自国を守ることが第一優先。

食べるものがないとなると、都市に集中していた労力を地方に分散する可能性もでてくる。エネルギーが減少するとなると、送料が高騰するから首都近隣の千葉、さいたま、茨城、山梨、栃木、静岡あたりが人気になるのだろうか。自給率をあげるために国が率先して農産物の生産にチカラを注ぐかもしれない。

そんな軽率な妄想をしてみたが、そんなことには、ならないか。徳川家康が幕府を開いてから420年間、首都機能は東京だ。ただ一度だけ、日清戦争のときに広島が臨時首都となっているが、それは例外。首都に近いほうが、金回りが良くなる。

それでも、世の中のあたり前が変わる。リセットボタンが押される時期が迫っているのような気もするよ。


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