人間

「人間」に自分も含まれているのに、あらためて「人間」というと、得体の知れない生き物みたいだ。

『まんが日本昔ばなし』のエンディングは「にんげんっていいな」と歌っている。ほかほかごはんや、あったかいふとんは、確かに魅力的だ。しかし、これを歌っているのは誰目線なんだろう。わざわざ「にんげんって」と言っているのはなぜなんだろう。

児童文学作家ロイド・アリグザンダーの『人間になりたがった猫』やアンデルセンの『人魚姫』には、人間に憧れる生き物たちが登場する。彼らにとって人間になるということは、新しい世界がひらけることである。(恋を叶えるために必要なことでもある。)

一方、太宰治の『人間失格』を読むと、人間に合格するとは一体どういうことだろう、と疑問がうまれる。当たり前のことだけれど、人間に産まれたからといって、自動的に安心できるというわけではないらしい。

少し話は逸れるけれど、人間は人間でも、「◯◯人間」というふうに、人間の前に何かをつけると、奇妙でおそろしい感じがする。村田沙耶香の『コンビニ人間』というタイトルのインパクト。妖怪人間やムカデ人間も怖い。鳥人間はすごい。

さて、又吉直樹の新しい小説のタイトルは『人間』そのものらしい。なんてシンプルなんだろう。『人間』を読むのは人間しかいない。なんだか、想像がふくらんでどきどきしてしまうタイトルだ。今、「人間」が気になっている。