VNLリュブリャナ観戦旅6~SRBvsCUB②
第3セット前、コート上で笑い合う2人の選手…ポドラスチャニンとヨボビッチ。2人はノビサド出身で世代はちょっと違いますが、昔からバレーを通じ接点があったといいます。昨季のクラブチームはイタリアのトレントとヴェローナで距離も近く、頻繁に会っていた模様。そんなお互いを知り尽くす2人の絆の強さを見ながら、ここから2人が作り出す明るい物語が見えるような気がしました。
昨季の代表チームに呼ばれなかったヨボビッチを今季、チームに呼び戻したのは、ポドラスチャニンでした。2月末トレントを訪れた際にポドラスチャニンが教えてくれたのです。今季はヨボビッチが復活すると、自分が監督を説得したと。私たちファンがヨボビッチを呼び戻してほしいことを知っていたのか、それは五輪の可能性にも希望が持てるビッグニュースでした。
10年来、セルビアのセッターとして出場し、WL優勝やユーロ優勝に貢献してきたヨボビッチを、五輪出場権争い直前で外したのは、今考えても納得がいきません。セルビア国内の批判はもちろん私たち他国のセルビアファンも猛反発。実際に見たWNL名古屋大会も、ワールドカップ東京大会も、バラバラなセルビアチームを見ながらヨボビッチの存在の大きさを思い知りました。技術だけでなく、アタッカー陣の気持ちを高める豊かなアクションとコミュニケーション力。それこそがセルビアに必要なものだと気づかされたのでした。
ヨボビッチの屈託のない笑顔は、アタッカー陣に過度なプレッシャーを与えず伸びやかに打たせる懐の深さを感じます。それがいいのか悪いのかはチームによって状況によって違うと思いますが、新しい世代を育成中の今のセルビアには良い効果をもたらす気がするのです。現にクユンジッチやネデリコビッチが先輩の胸を借り、押さえつけられていたものを跳ね退けて本来の力を発揮し始めていくのを見て感じ嬉しくなります。
そして2季に渡ってロシア・ディナモLOでチームメイトだったヨボビッチとイボビッチとのコンビネーション。私はこれをずっと心待ちにしていたのです。背が高いとは言えないイボビッチが、ロシアリーグでブロックにかからぬように打つために必須の素早いバックアタック。これがナショナルで見られたことが本当に幸せでした。
そんな好プレーが続いた第3セット、キューバのミスが想像以上に多く、さらにはMassoの怪我での交代もあって、25-16でセルビアが1セットを奪い返します。
これで1-2。なんとか希望をつなぎました。
が、背水の陣であることは依然変わらず、危機は続きます…。
第4セット、リズムが良いセルビアはバックアタックを多用して試合を進めていきます。が、なかなかリードを広げられないセルビア。中盤でメルガレホのエースで同点に追いつかれ、再び余裕が失われました。
が、そこで怯まないセルビアチーム。ネデリコビッチのエースでやり返し、再び一歩リードします。
もうここまでくると、子供たちのブーイングに負けじと狂ったように声を張り上げるまでに…。声を出すのが恥ずかしいなんて言っていられず、キューバのサーブ時にはガチのブーイングで私も必死に戦いました。
日本の会場でやると冷ややかな目で見られてしまうサーブ時のブーイング(笑)。ここにはお行儀のよい日本人はおらず、ただただ一点でも多くセルビアが獲れればと、力になることならばどんなことでもやらずにはいられません。一つ隣のブロックに、中国リーグ観戦で仲良くなった中国人の女の子と、始まる前に会ったイタリア人の知人が同じエリアにいたので、彼女らを一緒に巻き込み、全力でセルビアを応援しました。
第4セット、キューバのミスのお陰で3点のリードで迎えたセットポイント。最後は強気のネデリコビッチのクイックで2-2と取り返します。
さぁ、いよいよ最後、第5セットで決着。
いや、まさかフルセットまで行くとは想像してもおらず、正直ここまで来られただけでも十分に思う程でした。
勝敗ももちろん重要ですが、もうこの場所で応援しているだけで、十分試合幸せを感じます。
過去一といっていいほどに声を張り上げ、コートの選手に「大丈夫、イケる、イケる」と言い聞かせていると、ホントにそれがチームに届くような錯覚に陥り、一緒に戦っている気分になるのです。何より控え選手たちの全力の声援が会場内セルビアサポーターの気持ちを一つにさせていて、みんなで戦っている気分。もちろんその中心となっているのは、我らの応援団長アタナシエビッチ。彼の指揮の下、セルビアサポーターが一丸となって声を上げ応援するのが楽しくて気持ちよくて…必死に応援する控え選手とスタッフも含め、これが私の好きなセルビアチームだと心底感じました。
こんなにも楽しい応援は12年間で初めてでした。
7へつづく…
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