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VOLLEY TOUR 2019/20【34】~夢の行方…

欧州五輪予選4日目
フランス対オランダの試合後…
会場で仲良くなったヨーロッパバレー好きの
シンガポールの男の子に声を掛けられました。
「Are you OK?」と。
どうやら、セルビアの試合中
泣いていたところや、
試合後、居ても立ってもいられず
ダッシュで会場から逃げ出したところを
見ていたのでしょう。

人目を気にしがちな私が
周囲の目も全く気にできないほど
哀しみの窮地に陥っていた証拠…

形振り構わない自分の行動を
他人に見られていたのかと思うと
急に我に返り、恥ずかしくなりました。

かれこれ10年に及ぶ海外観戦史上、
試合中にこんなに号泣したのは初めてでした。
こんなに悲しい試合も始めて。
こんなに心ここに非ずの試合も…。

それだけ、この試合にこの大会に
賭けていました。
これが私の夢への扉でした。

北京五輪、現地に行くも
チケットトラブルで試合を観られず
帰ってきて以来、五輪観戦は私の夢で、
その後セルビアのチームを
追いかけ始めるようになり、
日本での五輪開催が決まったときから
彼らを日本で見ることを
誰よりも楽しみにしてきました。

日本で開催の国際大会は
どういう事情かいつも
同じような国しか呼ばないから
セルビアチームは実力で来るしか
日本で観られる方法がない…

こんな魅力的なチームなのに
ぜひ日本のバレーファンにも見てほしいのに…。

彼らには素晴らしい実力もあるし、
素晴らしい人間性もある。
世界で戦えるチームであることは
間違いない事実。
だからこそ、異国のファンが遠くから
時間とお金をかけて見に来るほど
素晴らしい魅力を持っていることを
常に本人たちに訴えたくて、
それを自信に替えてもらいたくて…
これまで必死に
人生をかけて応援してきたのです。

五輪で見届けられたら
私のこれまでの思いが全て報われる…
そしたら私は満足して海外バレー観戦から
身を引ける…
そうストーリーを描いてきたのですが…

それは叶わぬ夢となりました。
夢への扉は開かれることなく
現実は思うようにいかないことを思い知ったのです。

これまでも思うようにいかない事態は
いくつも経験してきましたが
大きく違うのは、
もう次はないということ…。
大好きな今のチーム、
そして自国での五輪開催。
それは今回限りのものなのです。
もう二度とチャンスはないのです。

と同時に…
セルビアが五輪出場できないことだけでなく
私が悲しいと思うのは
ここで永遠のお別れをしなければならないこと…。

五輪でもう一度、
選手たちに会えると思っていたから
「またね」のはずが
五輪で会えない=(イコール)「さよなら」に。

もちろんVNLでも見れる可能性もありましたが、
ほぼ若手育成に使うことが見えるセルビア、
この完全なチームとは会えないことは
容易に想像でき…
それに五輪でのチケット代宿泊費を考えると
そこはどうしても稼がなければならない時で、
当初から、私の予定には組まれていないのでした。

旅をスタートさせて約1ヶ月、
夢を信じて明るい未来を目指して、
観戦に明け暮れる楽しい毎日でした。

でも、もう明るい未来は待っていない…
ここで終わったようなもの…

このまま日本に帰ってもいいかな…

情けないことにそんな思いが出てきてしまいます。
第一、この旅の続き
どんな顔して彼らを見に行けばいいのかわからない…

ブルガリア戦で逃げ帰ってきた私には
彼らをもう一度直視できる自信がありません。
好きな選手なのに会いたい選手たちなのに
見たら泣いてしまいそう…
彼らを不快にさせてしまいそうで…
怖い…

サポーターとして
彼らを勝利に導ける応援が
できなかったことが本当に申し訳なく、
私が応援に来たから負けたんじゃないかと
ネガティブはどんどんネガティブに
落ち込んでしまうのでした。

でも、これが私にとって最後の海外での国際試合、
これが最後のクラブチーム巡りになると思うと
ここでちゃんと終わらせないと
絶対に後悔すること、分かっています。

悲しいけど、新たな目的を持って
旅を続けるしかありません。

…なんて頭では分かっていても
気持ちは全然追いつかない…。

日本にいるセルビアサポーター仲間と
哀しみ思いを分かち合っても、
現地にいる友人に思いをぶちまけても
そして同じように現地で
オランダの敗退を見ることになった友人と
傷をなめ合っても、
そう簡単には気持ちは伴いませんでした。

でもこの状況を頭に理解させ、
進むべき道の方向を模索していくしかないのです…

少しずつ少しずつ、
何日も何日もかけて
気持ちが自然と前を向けるようになるのを
見守るしかないのです。

ただ…
その苦境の中で一つだけ
確信したことがあります。

あのブルガリア戦の前、
無言で集中していたブルガリアチームの横で
お互いに微笑みながら
バレーを存分に楽しんいた選手たちが
紛れもなく私の大好きなチーム。

肝心な時にミスをしてしまったり、
決めきれなかったりするけれど、
強豪チームのように常に
表彰台に上がることはないけれど、
それでも時々素晴らしい奇跡を起こし
夢を見させてくれる素敵なチーム。

強くないもろい部分もあるから
応援したくなる…

五輪の夢はかなわなかったけれど、
私はセルビアバレーが大好きです。
それは大会前と変わらず…いえ…
もしかするとそれ以上に強く
想うようになったのかもしれません。
それは確信としてしっかりとこの胸に存在し、
今、それをより強く、
一番の誇りに思うようになっていました。

【35】へつづく…

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