VNLリュブリャナ観戦旅5~SRBvsCUB①
ネーションズリーグ第3週目、セルビア対キューバ。
五輪最後の一枠を目指し、前進するのは果たしてどちらなのか…
ここまで来たら逃げ出したいとは言っていられません。怖くて苦しい気持ちからは逃れられませんが、選手を前にするともう全力で応援するのみです。大好きなこのメンバーの最後の勇姿を見届けることに専念するはずだったけれど…いや、やっぱり最後は五輪で締めたい! 胸の奥に秘めていた正直な気持ちを、ようやくここで認めました。
そんな強い応援の思いとは裏腹に、速攻追い込まれるセルビアチーム。
第一セット、初っ端からセルビアの失点が続き0-4まで引き離されます。シモンの強打サーブを警戒していたけれど、強打でなくてもエースを献上してしまうセルビア。流れをあっさりとキューバに奪われてしまいます。
この4点が大きく響くことになる第一セット…
なかなか上手く噛み合わないまま、この第3週までやってきたヨボビッチとネデリコビッチのコンビ…ここでもその不安は的中してしまいます。
あぁ、ここにリシナツがいれば…
VNLのセルビアの戦い方を見ながら、何度リシナツを恋しく思ったか分かりません。ブロック、アタック、サーブ…チームが低迷していても、自分の仕事を全うするべく真摯にプレーする姿勢が忘れられないリシナツ…。
それを引き継ぐと思われたネデリコビッチですが、大舞台に慣れていないのか迷いなく飛ぶ得意のコミットブロックがなかなか生かされず、本来の実力を発揮できずにいました。彼は昨季セリエでもブロックランキングの上位にいたのに、ナショナルでそれが出せないのはホントに本当にもったいない…。
もう一人のミドル、頼みの綱ベテラン・ポドラスチャニンのブロックでなんとか流れを戻そうとしますが、中盤にアタックミスがあったりと、最初についた点差を戻すには苦戦を強いられました。
今季、打てば決まるというルブリッチでしたが、ここへきて決定力が低迷したのもイタイところ…。
若手OHクユンジッチも、なかなかエンジンがかからずにいます。
そしてかつてマジックのようにたくさんの攻撃パターンの引き出しを持っていたコバチェビッチも、怪我のせいか今季は全く振るわずにいました。こんなはずじゃない、ピークを越えたかもしれないけれど、まだ衰えるには早すぎる…
じりじりと離されていく点差を見ながら、逆転のチャンスを伺い、ピンチサーバーで登場したアタナシエビッチ、ぺリッチに望みを託します。
が、上手く活かされないまま終盤へ…。
そのままの点差を保ちセットポイントをまでたどり着いたキューバ。
なんとかミスを誘いセットポイントを2度しのいだセルビアですが、22-25で結局獲られてしまいました。
続く第2セット…
一点目をルブリッチのスパイクで奪い、流れを渡すことなくリードで進めていくことに成功します。スロースターターのセルビア、ここから調子を上げていくものと期待が持てました。
が、2セット目序盤、納得いかない審判の判定に抗議したヨボビッチにイエローカードが出されます。いやいや、今のは絶対オーバーでしょ!!と客席からもブーイング。スロベニアはセルビアからも車で移動できる距離なので、セルビアから来たサポーターも大勢。そのサポーター陣の怒りが高まったことで、そこから会場からのセルビアへの声援がより大きくなっていきました。セルビアを後押しする子供たちの大きな声援があるおかげで、私も一緒になって叫びました。
が、2点リードで順調に試合を進めてきたセルビアですが、中盤ブロックに阻まれ逆転を許してしまい窮地に立たされます。ウロシュの3本連続被ブロックにはさすがに、コラコビッチ監督の顔を伺わずにはいられません。案の定、すぐにイボビッチがコートに呼ばれました。
安定してチームの危機を守り抜くポドラスチャニンのブロック、クイック。サーブでも崩していきますが、そこから上手く点数に繋げられません。憎らしいほどによく拾うキューバ…食らいつく気持ちと身体能力を見ていると、これがキューバとの実力の差なのだと、見せつけられている気がします。彼らは彼らで五輪出場の切符が喉から手が出るほど欲しいだろうし、低迷時代を経て力を付けて来ただけに勢いもあります。
認めたくはないけれど、これが力の差で、これで負けるのだったら受け入れるしかない…。
そう、過去に何度も五輪出場権を逃してきたセルビアを見ているだけに、悲しいかな負けを認める悔しさも以前よりは容易になってしまっているのでした。
ルブリッチの決定力が戻ってきたと安心していた第2セットも、終盤になってミスが出て、最後は被ブロック…
第2セットは21-25。
これでキューバに2セットを奪われ、セルビアは後がなくなってしまいました。
あぁ、やっぱり私は疫病神なんだな…
第3セットを前に、半ば勝利を諦めかけてしまいます。勝利を熱望するあまり叶わなかった時のショックの大きさを思うと、守りに入りたくなってしまう臆病者…。傷つくことを恐れ、ここは早いうちに勝利を手放し、ここからは彼らの最後のパフォーマンスを目に焼き付けて楽しむべきかも…。ファンとしてはとても情けないですが、そう考え始めました。
が、気持ちの方向転換をしかけていた第3セット前、コート上の選手に目を向けると、驚く光景が目に飛び込んできました。ポドラスチャニンとヨボビッチが、全く曇りのない笑顔で笑い合っているのです。
あと1セット取られたら終わりというこの危機的状況で…次の1セットで夢の五輪を逃すかもしれないという背水の陣で、こんな余裕の笑顔とは…
それを見てはっと我に返りました。
そうか、ここからがセルビアの本当の闘いなのだ…と。
6へつづく…