特急列車_小熊にて

『特急列車・小熊にて』本文

この文章と関連の画像はすべて @v2mya による創作且つフィクションです
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(読了時間の目安:およそ15分くらい?)


「特急列車・小熊にて」

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「先生へ。黙って飛び出してきてしまい、すみません。ご心配おかけします。でも大丈夫です。
お金も持っています。ディッジが宿を探してくれたのでしばらくはそこへ泊まるつもりです。また手紙書きます。」

「これでいいかなあ」
「なあダハル。先生にいちいち手紙なんか書くのか?」
「こういうのをめんどくさがるやつは研究者に向いてないと思うぞ」
「手紙なんか書かなくっても研究者にはなれるだろ」

「そういえば、さっき入ってきた二人のうち、片方は俺らと年が変わらないくらいだったな」
「あの年で保安局か~!給料いいんだろうな!僕らと違ってさ!」


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「シスイ、そろそろ教えてくださいよ!」
「なにをだい?」
「なにを?じゃないですよ。さっきからその宝石をずっと見たまま黙り込んでるじゃないですか!」

「何か分かったんですよね?」
「いや、何も分からないよ」
「ええ?何も分からないのに、我々はこの列車でどこへ向かっているんですか?」

「今から分かる人へ聞きに行く」
「聞きに行く?モルセイの保安局だけじゃなく、セカイ中の誰もがその石を血眼になって探してますよ?」
「僕に借りがあるやつがオイディニにいる。そいつが何か知ってるかもな」
「はあ、オイディニ・・・シスイの知り合い・・・いやな予感がするなあ・・・」


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「やべえ!まじやべえっす!!ハァ・・・ハァ・・・!!」
「すごいの見ちゃったっす!!なんて報告すればいいんすか!!ハァ・・・!」
「そろそろ最後尾・・・車掌室っす!!ここまで走れば・・・とりあえず・・・センターに連絡っす!」

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「すごいな、ザアロ」
「ん?なにが?」

「4つ前に通り過ぎた客室で、男がめっちゃ綺麗な青い石を持ってた」
「ふーん・・・えー!? ズナリ!何で早く言わないの!私も見たかった!」

「しかも・・・」
「しかも?」
「俺たちの客室は2つ前に通り過ぎた」
「そっちはもっと早く言えこの野郎!!」


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「ハップさん、次の駅まで約25分です!」
「ああ、犯人は間違いなくこの列車に乗っている。ラウ君、次の駅までにすべての客室を調べるんだ」
「スリヒスタはもっとも希少な宝石のうちの一つです。必ず盗人を捕らえましょう!!」

「ラウ君!声を潜めろ!・・・これは訓練じゃなく任務だぞ・・・犯人も聞いてるか分からん場所で、あまり大声はだしてはいけない」
「す、すみませんハップさん!!」


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「でね、この駅では限定の迷宮グッズがあってね!」
「メルコ・・・もう迷宮の話はやめよう・・・眠くなってきた」
「ナンサー!寝ちゃ駄目!次の次の駅で私たち降りるんだから!」
「だいたい朝早すぎるのよ・・・ラデュインまで寝かせて・・・」
「駄目よ!ちょっと!あなた寝たら起こすの大変なんだから!」
「Zzz・・・」
「もう、せっかく二人っきりの温泉旅行なのに・・・!」


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「あれ・・・誰か見てる?」
「いや、この車両にはお前しかいない」

「ふんふんふ~ん・・・私、特急乗るの初めて!」
「ハルヴァージ、数は覚えているな?」

「覚えてるよ!確か私を除いて7つだったよね!」
「で、どうしてさっき車掌を殺したんだ?」
「ナギリが血を吸いたかったんでしょ?」



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サンダ「こちら特急列車・小熊!車掌補佐のサンダっす!センター応答願います!メーデー!メーデー!」

「こちらセンターです。サンダ、なにが起きたんですか?」

サンダ「ひ、人が殺されました!車掌が運転車両で血を流して・・・!!」

「サンダ落ち着いて、乗客の安全を確保してください。次の駅・・・フォングイダ駅に保安局を向かわせます」

サンダ「りょ、了解っす!」


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シスイ「で、あなた方は保安局のえーと・・・」

ハップ「私は七時官のハップだ、こっちは部下の十二時官ラウだ」

ラウ「保安局の権限によって、あなたの荷物を検査させてもらいます!」

シスイ「ふ~ん盗難事件の犯人捜索ね。ま、僕らは関係ないし、調べてもらってもかまわないけど・・・」

ラウ「じゃあとりあえずその手さげの中身をみせてください!」

シスイ「いいよほら、何もないだろ?」

ハップ「ふむ・・・確かに・・・」

ハップ(・・・)

ハップ「あまり時間はかけられんし、明らかに怪しいやつだけじっくり調べれば十分だ」

ハップ「お手数おかけした。失礼するよ」

ハップ「ラウ君次の客室へ向かうぞ!」

ラウ「あ、はい!」

シスイ「・・・もう行ったよ。出てきていいよリッテ君」

リッテ「よっ・・・と!」

リッテ「ふう、流石シスイ!よく保安局が入ってくるのが分かりましたね!」

リッテ「急に『石持って座席の下の隙間に入れ!』なんて言われてびっくりしましたよ」

シスイ「さっき車掌がドアの前をあわてて走っていった時、嫌な予感がしたんだ」

シスイ「しかし、保安局がこんなに早く追ってきているのは少し予想外だな・・・どうしたものか・・・」

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ズナリ「ザアロ、すごいな今通った女の人見たか?」

ザアロ「え!見てないよ!なになに?」

ズナリ「なんかでっかい物を背負ってて、長い髪が炎みたいに真っ赤だったぞ」

ザアロ「マジ!?あんた言うの遅いわよ!!」

ズナリ「ドアの外のぞいたら?まだいるかも」

ザアロ「うーん・・・いない」

ズナリ「どっかの客室に入ったか、もう隣の車両かな・・・ん?なんだこの匂い?」

ザアロ「あっちから・・・なんか葉巻の匂いのおっさんがこっちにくるぞ」

ハップ「失礼・・・我々保安局のもので、今順番に荷物検査を・・・?」

ラウ「あ!ヴレンティ!?」

ハップ「おいおい・・・ラウ君、失礼だろう」

ラウ「あ・・・!す、すいません!初めて見たもので・・・」

ラウ(すごい!尻尾だ!耳も長い!)

ズナリ「あぁ、気にしなくていいぞ。慣れてるからな」

ザアロ「列車に乗るヴレンティは珍しいよね」

ハップ(秩序を重んじるヴレンティが、盗人なはずはないか・・・?)

ハップ「あなた方に身体検査は必要ないだろうな」

ラウ「え!?ハップさん!いいんですか?」

ズナリ「おいおい、俺らは別にかまわんよ?いくらでも調べてくれよ」

ザアロ「我々が潔白なのを証明していただくほうが、ありがたいからね」

ズナリ「なにか事件があったのか?」

ラウ「ハップさん、これは機密にかかわることです!さすがに一般の方に教えるわけには・・・」

ハップ「ラウ君、こういうときは聞き込み調査も重要だよ。ヴレンティのお二人は、モルセイで青い宝石が盗まれたニュースを見たかな?」

ズナリ・ザアロ「青い宝石・・・??あーー!!」

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メルコ(ねえナンサーこのヒト誰なの!?)

ナンサー(知らないわよ!)

メルコ(ていうかあの斧なに!?でかいし禍々しくて怖すぎるんだけど!!)

ナンサー(あなた得意じゃない?ああいうの)

メルコ(私は迷宮にしか詳しくないわよ!!)

ハルヴァージ「めっちゃおいしいねこのお菓子!これはなに??」

メルコ「あ!!えっと・・・それはコルフィって言ってはちみつが・・・」

ナンサー「いや、その前にあなたはどなたですか?」

メルコ(ナンサー、ナイス質問!)

ハルヴァージ「えーと、美人のハルヴァージお姉さんだよ~」

ナンサー(なんていうか、このヒトの雰囲気は苦手ね・・・たしかに、顔も綺麗だし、赤い髪もすてきだけど・・・)

メルコ「えーと・・・どうして美人のハルヴァージお姉さんは私たちのお菓子をその・・・食べてるんですか?」

ハルヴァージ「今そこ通りかかったら窓からお菓子の袋が見えて、おいしそうだな~と思ったの~」

メルコ「おいしそうだな~って・・・」

ハルヴァージ「二人は学生?二人旅?ひょっとして付き合ってんの?」

メルコ「なんでそうなるの!」

ナンサー「付き合ってるってとこ以外はあってますよ。美人のお姉さん。私たちラデュインの温泉に行くんです」

ハルヴァージ「温泉か~いいね~」

メルコ「お姉さんはどこへ行くんですか?」

ハルヴァージ「私?」

ハルヴァージ「私は『終点』へ」

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ハップ「やはりもう客室からは姿を消したか」

ラウ「しかし、妙ですよ?最後尾まで戻りましたがどの客室にもあの男はいませんでした」

ハップ(妙なのはそれだけではない・・・確かにあの男は『あの言葉』を口にした)

ハップ「いやラウ君、まだ一つ調べていない車両がある」

ラウ「一つ・・・あ!先頭の車両は運転車両ですね!でもそこなら車掌がいるはずですよ?」

ハップ「という事は・・・!まずいな・・・助けを呼べない状況なのかもしれんぞ!すぐに向かうぞ!」

ザアロ「おーい!ハップさん!」

ズナリ「なにかわかったか?」

ハップ「君たち!盗人は車内をうろついてるかも知れない!危険だから自分の客室にもどるんだ」

ザアロ「じゃああたしらの出番だな!」

ズナリ「言い忘れてたが、我々も協力するぞ。ヒトより多少は腕力があるし・・・」

ハップ「駄目だ!ここは我々保安局に任せて・・・」

サンダ「た、大変っす!保安局って今言ったっすか!?自分は車掌補佐のサンダっす!助けてほしいっす!」

ラウ「車掌補佐さんが慌ててどうしたんですか?まさか・・・」

サンダ「車掌が・・・こ、殺されたっす!!!」

全員「!!」

ハップ「場所はどこだ!」

サンダ「先頭の運転車両っす!!」

ハップ「くっ間に合わなかったか・・・ラウ君!急ぐぞ!武器を出しておけ!」

ラウ「は、はい!」

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ダハル「おい、ディッジ早くしろよ!誰か来たら僕たちがこのヒトを殺したのかと勘違いされるよ!」

ディッジ「・・・『見え』た!赤い髪の・・・女??」

ダハル「そいつが犯人か!」

ディッジ「うわ・・・斧で一撃だよ!やっべえ・・・」

ダハル「うっげ・・・!!ドアの向こうに誰か来た!それ隠せ!」

ラウ「そこを動くな!!」

ダハル「はい!動きません!!」

ハップ「君たちはさっきの!こんなところでなにをしていたんだ!」

ディッジ「じゅ、銃をおろしてもらってもいいですか・・・!」

ハップ「まったく・・・一応聞くが・・・君たちがコレをやったのか?」

ダハル「いやいやいやいや!!めっそうもない!」

ディッジ「俺たちが来たときにはもう死んでたよ。たった今この死体を見つけて、誰かを呼びに行こう!ってなったとこさ」

ハップ「ラウ君、一度銃を降ろしてくれ」

ラウ「は、はい・・・」

ハップ(血が固まってない。まだ殺されて間もないということ・・・)

ハップ「君達は犯人を見なかったか?」

ダハル「見てません!!何も!!」

ディッジ「とりあえず客室車両へ戻りませんか?あんまりここには居たくないし・・・」

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ダハル(うわ!ヴ、ヴレンティだ!すげー!)

ズナリ「車掌が亡くなった!?」

ザアロ「それで君達はなんでこんなところにいたんだ?」

ディッジ「ええと・・・、ト、トイレは先頭にしかないだろ?そしたら運転車両のドアが開いたままだし、気になって覗いてみたんだよ」

ダハル(ディッジ、こういうときのいい訳をとっさに言えるのすごいな・・・)

ラウ「これ、ドアのカギは壊されてませんよ!犯人は鍵のかかった車両にどうやって入ったんですか?」

ハップ「う~む・・・」

ズナリ「ん、この匂い・・・さっきもしたな?そっちの運転車両の石炭の匂いか」

ハップ「そうか、ヴレンティの嗅覚なら運転車両に入った人物も見分け・・・嗅ぎ分けれるんじゃないか!?」

ザアロ「そういえば赤い髪の女が通ったときの匂いと同じだな。たぶんその女も運転車両で石炭の匂いがついたんだ」

ディッジ(赤い髪の女!さっき俺が見たやつか!)

ハップ「女?では盗人と殺人の犯人は別なのかもしれん」

ズナリ「泥棒が運転手を殺したとは思えないしな。まず、動機がない」

ハップ「うーむ・・・」

ラウ「ハップさん!次の駅まで5分ほどです!応援を呼びましょう!」

ハップ「我々だけで二人はさすがに手に負えないか・・・」

サンダ「それならもうセンターへ連絡してあるっす!フォングイダ駅で保安局が待ち構えてるっす!」

ハップ「よし、次の駅までに他の乗客の安全を確保するんだ!」

ハップ「ひとまず君たちをそれぞれ乗っていた車両へ送っていこう」

ディッジ・ダハル「わかりました」

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「報告です!ラグア二時官!」

ラグア「おう!」

「駅内の駅員および乗客は退避させました!」

「まもなく特急列車・小熊がこの駅に到着します!」

ラグア「よし。で、例の物は?」

「手に入りました!こちらです!」

ラグア「やったー!!・・・ぷは~甘くてうまい!」

「ベフのミルク、フォングイダ農場でしか売ってませんからね。今日は朝早いのでまだ売り切れてませんでしたよ」

ラグア「早朝から最高のミルク!これで気合入ったよ!で、誰を捕まえるんだっけ?」

「センターに入った通報では殺人の容疑者が乗っているらしいと」

「ラグア二時官、申し上げます!先ほど続報が!どうやら七時官と十二時官が乗り合わせていた様子ですが、例の宝石泥棒を追跡中だったとか・・・」

ラグア「あ~宝石泥棒?じゃあ捕まえるのはたった二人じゃん」

「それと、殺人の容疑者はどうやら女だそうです!」

ラグア「女か!」

ラグア(なんでこんな雑務にわざわざ私なんだろうな~。しかも1桁の連中10人も・・・まあさっさと終わらせよっ)

「ラグアさんが出るまでもないですよ!」

「6時以上の1桁の保安官が、これだけいるんですよ!自分達だけでも取り押さえれますよ!」

ラグア「お前らポンコツじゃん!」

「くっ・・・!幼女に罵倒された・・・うれしくなんかないぜ!」

ラグア「幼女って言うな!変態!!」

「「ありがとうございます!!」」


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ハルヴァージ「じゃあね、お菓子ありがと!コルフィってやつが一番おいしかった!」

ナンサー「・・・」

メルコ「全部食ってったわね・・・」

ナンサー「寝るわ・・・」

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ディッジ「犯人は自由に姿を消すことが出来る・・・しかも鍵のかかった部屋にも煙のように侵入できる。いったいどうやって・・・」

ダハル「時空補正の性質に似てるんじゃないか?」

ディッジ「何回『見て』もそれらしい道具は使ってないし、あの斧が気になるな・・・」

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「ドアが開くぞ!」

「警戒しろ!!」

ラグア「・・・?」

ラグア「ドアが開かないけど?」

「ラグア二時官!・・・突入しますか!?」

ラグア「よし、死角に注意して入っ・・・」

「ぐああああ!!」

「なんだこの斧!?うわああああ!!」

ラグア「えっ!」

ハルヴァージ「やっぱりもう保安局がきてたんだね~相変わらず弱くて面白くないけど!」

「この女、いつの間に列車の外に!?」

ラグア「なにやってんの!撃て!!」

ハルヴァージ「アハハ!どうぞ、たくさん撃ってみて~!」

「はぁはぁ・・・だめだ!なんで当たらないんだ!」

ラグア「真後ろの列車に弾痕が・・・」

ハルヴァージ「ほい!」

「ぐあああ!!そんな・・・一方的・・・過ぎる・・・」

ラグア「お前が車掌を殺した犯人だな!?」

ラグア「斧だけで銃を持った1桁を全滅か・・・三時官も一人いたんだぞ・・・!」

ハルヴァージ「ん?ナギリがあなたの血を吸いたがってる・・・?」

ハルヴァージ「小さな保安官さん、会ったばかりで悪いけど・・・さようなら」


ラグア「ぐっ・・・やはりその赤い斧・・・!!」

ハルヴァージ「・・・えっ!素手で受け止めた!?ありえない!!ってことは・・・!!」

ラグア・ハルヴァージ『お前も異能力者か!』

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ラウ「銃声が止まりましたね・・・」

ハップ「さっきのはおそらく後方の車両のドア付近だな。こうなっては泥棒捜査どころではないな」

ズナリ「保安官さん、まだ外へ出ちゃまずいかい」

ハップ「まだ外へ出るのは危険かもしれない。我々だけで様子を見に行こう」

ハップ「さっきの車掌補佐君にはドアを開けないように伝えたからな。ラウ君、窓から外へ出るぞ」

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ハルヴァージ「おいおい、いつまで斧を掴んでるのさ~!何この黒い手・・・きもい~!」

ラグア「どうしたの?蹴りでも入れてきなさいよ」

ハルヴァージ「ぐぐぐ・・・!!離せ~~!!」

ラグア「やっぱり斧を使ってる間は斧以外のほかの物に干渉出来ないのね。斧さえ押さえていれば、割りと無力なようね」

ラグア(異能力は一般人からしたら超強力な武器だけど・・・長所があれば短所は当然存在する・・・)

ハルヴァージ「へえ~~・・・慣れてるんだね、異能力者同士の戦い。私の能力の性質にすぐ気がつくなんて」

ハップ「これは!?お前ら手を上げろ!!」

ハルヴァージ・ラグア「!!」

ハルヴァージ「今だ!」

ラグア「あっしまった!!」

ハルヴァージ「やっと離してくれた~~邪魔してくれてありがと~おっさん!」

ラグア「おい!お前列車に居合わせた保安官だろ!!私は二時官ラグアだ!こいつが、殺人の犯人だぞ!!」

ハップ「赤い髪の女!!・・・くそっなんだ!?銃が当たらない!?」

ハルヴァージ「撃ってもムダなのよね~」

ラウ「弾が体をすり抜けてる!?」

ラグア「こいつに銃は効かない!だが、私が斧を押さえてれば無力化する!お前たちは邪魔をするな!」

ハルヴァージ「うおっとっと!!もう斧には触らせないよ~」

ラウ「屋根に逃げた!!」

ハルヴァージ「えっ?もうちょうどそろった?うん、わかった」

ハルヴァージ(よし、これで7つ・・・)

ハルヴァージ「その黒い手めんどくさいし、ちょっと私は不満だけど・・・ここらが潮時かな~」

ハルヴァージ「私はまだ乗ってくけど、あなたたちが一歩でもこの列車に乗ったら、中にいるヒト全員殺しちゃうよ!入ってこないでね!」

ラグア「待て!!くっそ!!消えた!?中に逃げたか!」

ハップ「自由に姿を消す・・・そうか、列車で見つからなかったのは・・・」

ラウ「まずいです!列車を乗っ取られちゃいます!」

ラグア「おい、センターに連絡しろ!やつをなんとしても止める!」

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ザアロ「ズナリ・・・」

ズナリ「分かってる・・・。すごい血の臭いだ」

ザアロ「どれだけたくさんのヒトが亡くなったんだろう・・・私は・・・」

ズナリ「君は優しいな。たくさんのヒトのために泣くことが出来る」

ザアロ「悔しいよ・・・ズナリ・・・」

ズナリ「ああ、ザアロ」

ザアロ「なに?」

ズナリ「言い忘れてたけど、・・・君は俺が守る。必ず」

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ハルヴァージ「このまま出発してくれればいいからさ~」

サンダ「ひいいいいい殺さないで!!!動かしますから!!!」

ハルヴァージ「よしよし、ところでブレーキってこれ?」

サンダ「は、はいいいいっ!!・・・今バキッて・・・ええええええ!!それ壊しちゃったんすか!?止まれなくなっちゃうっすよ!?」

ハルヴァージ「これで一気に終点までいけるね!これマイク?」

ハルヴァージ『車内のみなさまにお知らせします~このまま列車は終点へノンストップで向かいます~~ブレーキ壊したから途中下車はたぶん無理です~』

サンダ「は・・・はは・・・」

サンダ(誰かたすけてくれっす!!!!)

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ダハル「ハップさんたち、うまくいかなかったみたいだ」

ディッジ「列車ジャックってやつか・・・まずいぞ、このまま終点でも止まらなかったら・・・殺人犯と心中なんてまっぴらだ!」

メルコ「すいません、今の放送・・・聞きましたよね?」

ダハル「うおおあああびっくりしたああ!!女の子!?」

ナンサー「私達、ちゃんとノックしたんですけど・・・」

ディッジ「えーと君たちは?」

メルコ「私たち、今放送でしゃべった女のヒトとさっきまで一緒に居たんですよ。それで何があったのかなと思って」

ナンサー「保安局のヒトも来たし、駅では誰も降りなかったでしょ?」

メルコ「あの・・・大丈夫ですか?」

ダハル「あ・・・ああ・・・」

ディッジ(相変わらず年の近い女の子が苦手なのか・・・)

ディッジ「ああすまん・・・今から説明するよ。それと、このアホは放って置いていいよ」

ディッジ「さっき運転車両で事件があったんだが・・・」

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リッテ「シスイ~どうするんですか~~」

シスイ「リッテ君もベフのミルク飲む?」

リッテ「あ、飲みます!・・・じゃなくて!列車降りちゃったじゃないですか!何が起きたんですか!」

シスイ「それこそ僕に聞かれても困るなあ」

リッテ「シスイがいきなり宝石を床に叩きつけて気づいたら牧場のど真ん中ですよ!説明してもらわないと困ります!」

「ベフ~~」

シスイ「おや、けっこう人懐っこいんだなベフって。ほら、リッテ君も」

リッテ「うわ~~かわいいですね!よしよし・・・じゃない!!」

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サンダ「あの・・・」

ハルヴァージ「ん~?」

サンダ「なんでこんなことするのかな~と思いまして・・・」

ハルヴァージ「終点に行くんだよ~そのためにはね~7つの魂の生贄が必要なの!ナギリが言ってた!ね!」

サンダ(ひえええ~~っ!斧と頭の中で会話してらっしゃるっす~~!!)

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ディッジ「これで全員か?」

ズナリ「乗客は我々6人だけだな」

ザアロ「このままだと終点で激突、全員あの世行きだ」

メルコ「どうしたらいいの・・・温泉に入る前に死にたくないーー!!!」

ナンサー「そのラデュインもさっき通り過ぎちゃったね」

ディッジ(くそっ仕方ねえ・・・)

ディッジ「詳しくは教えれないけど、一応脱出する方法が1つある・・・」

ザアロ「本当か!?」

ダハル(おい、アレ使うのか!)

ディッジ(アレしかねえだろ!)

ダハル(はあ・・・うまくいったとしても、絶対あとで全員から質問責めだぞ)

ディッジ(もうこれしか方法がねえだろ!)

ズナリ「列車から飛び降りるのは不可能。止めるのもブレーキは破壊されていて不可能。運転車両には保安局およそ10人を瞬殺した殺人犯がいる」

ナンサー「燃料はずっと犯人がくべてるでしょうね」

ザアロ「こんな絶望的な状況でも、希望があるなら、それに向かおう。君達に協力するぞ。私達はなにをしたらいい?」

ディッジ「えーと・・・一つだけ」

ダハル「みんなで手を繋いでくれれば理論上は問題ないはず」

ザアロ「手を繋ぐ?」

メルコ「あんた達ふざけてんの?」

ディッジ「おい、そんなわけないだろ!物理的に触れてればいいってことだよ!」

ダハル「僕らはこう見えても発明科学者なんだ。たいした給料はもらってないけど、一つだけすごい発明をした」

ディッジ「それがこの器械だ。名前も本来の用途も企業秘密だ。だけどこの列車から脱出するのに十分な機能がある」

ズナリ「この・・・ゴーグルみたいな物で・・・?」

ナンサー「冗談言ってる顔じゃないわ・・・」

メルコ「これをどういう風に使うわけ!?」

ディッジ「一人がこれを装着して、残り全員と手を繋いで列車から飛び降りる。それだけだ」

ダハル「つまりチャンスは1回だけってことで・・・」

ハルヴァージ『みんなお待たせ!あと10分くらいで終点だって~!死ぬ準備できた~~!?』

サンダ『うわあああもう終わりっすううう!!!』

ディッジ「今の声、そういえば車掌補佐を忘れてた・・・とっくに殺されてると思ったけど」

ズナリ「時間がない。彼を助けに行く!!」

ダハル「待ってよ!策もなくどうやって助けるんだよ!殺されちゃうよ!」

ナンサー「そういえば私達、さっき会ったとき殺されてないわ。お菓子だけ平らげられたけど」

メルコ「勝手に入ってきて私のお菓子全部食べられたのよ!やばいやつだとは思ったけど・・・まさか人殺しなんて」

ズナリ「犯人と会った?」

ナンサー「私達を殺さなかったのは、殺す理由がなかった、もしくは『生かしておく理由』があったのかしら」

メルコ「なんにせよ・・・多少なら犯人と話しができるかも・・・」

ディッジ「たった今・・・策を思いついた。うまくいけば全員が助かるぞ!」

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ダハル「ドアが開いてる・・・」

メルコ「あの、ハルヴァージさん?」

ハルヴァージ「あら、さっきの!」

ザアロ「うっ・・・血の臭いが・・・」

メルコ「なんで・・・!なんでこんなことするんですか!?ヒトが・・・死・・・」

ナンサー「メルコ!」

メルコ「ごめん・・・大丈夫・・・呼吸が・・・」

ナンサー(こんなこと・・・怖がりのメルコにさせられない・・・!)

ズナリ「運転手を殺して、列車を暴走させてるのはあんただな?」

ハルヴァージ「そうだよ~。あと少しで終点だね」

ズナリ「その前に・・・私と決闘しろ!どうせ死ぬのならあんたを倒して逝く」

ハルヴァージ「決闘?ああ~ヴレンティがたまにやるやつじゃん!」

ハルヴァージ「そうね、最後の暇つぶしに少しだけ相手してあげる~でも私は斧使うけど・・・素手で勝てると思ってんの?」

ダハル(ディッジ、今だ!)

ディッジ(くっ・・・後ろ振り向くなよ・・・!)

ザアロ(なにが策だよ・・・気まぐれに振り向かれたら終わりだぞ・・・)

ズナリ「オラァ!!」

ハルヴァージ「ん?腕から棘が出るんだ?おもしろ~」

ズナリ「え?こいつ・・・頭に貫通して・・・ない!」

ハルヴァージ「当たってないよ~ほらほら」

ザアロ「なんだ・・・?私は幻を見てるのか・・・?」

ズナリ(まるで空気を突いたみたいに手ごたえが無い!)

ハルヴァージ「それっ!!」

ズナリ「くそっ!!」

ハルヴァージ「うおーすごいジャンプ!」

ナンサー「座席が真っ二つに・・・」

ズナリ(なんて速さで斧を振るんだ・・・!)

ディッジ(おい!大丈夫か!)

サンダ(うわああ助けがきたっす!!)

ディッジ(静かにしろ!ズナリさんが時間を稼いでる間に移動するぞ!)

ザアロ(ディッジ早くしろ!時間が無いぞ!!)

ハルヴァージ「ねえ、最初の一撃から逃げるだけになってない?棘に当たらないのがそんなにショック?」

ズナリ(幻影の女、高速の斧!止まらない暴走列車!・・・これが悪夢じゃ無いならなんなんだ!?)

ハルヴァージ「さあ、追い詰めたよ!おりゃああ!!」

ザアロ「ズナリ!!」

ズナリ(速い!!・・・が軌道は読める!!壁際で・・・ギリギリかわすっ・・・!!!)

ハルヴァージ「あ!しまった!」

メルコ「斧が壁に刺さった!!」

ズナリ「ここなら座席が邪魔で縦に振るうしかないからな!これで斧を掴める!!」

ハルヴァージ「マジ!?1日に2回もナギリが掴まれるなんて・・・こうなったら!!フン!!」

ズナリ「うおおお!!?さらに押し込む・・・だと!!」

ザアロ「壁が割れてる!?ズナリ!危ない!!」

ズナリ「ぐぐぐ・・・押し込むなら・・・逆に利用してやるっ!!こうだっ!!」

ハルヴァージ「反転して床に押し込んだ!?くそっさらに食い込んで・・・抜けない!!」

ズナリ「ダハル!!ディッジ!!言われたとおり壁を割らせたぞ!!今だ!」

ディッジ「全員俺につかまれ!壁の割れ目から飛び降りるぞ!!」

ハルヴァージ「アレ!?いつの間に!ちょっと!待ってよ!」

みんな「うわああああああ!!!!!!」

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ラウ「遺体が確認されたのは車掌1人のみで、行方不明となっている乗客や車掌補佐の安否は今だ確認できていません」

ラグア「乗客も犯人もばらばらになった列車からは見つからないし・・・どうなってんの」

ハップ「二時官、あなたやあの女のような能力を持つヒトが他にいた可能性は?」

ラグア「確かにあの女なら列車から飛び降りても死なないかも・・・いろんな意味で」

ラグア「一時のじーさんへの報告はわたしからしとくよ。めんどくさいけど」

ハップ「承知しました」

ラグア「あーあ~・・・犯人取り逃したし・・・部下みんな死んじゃったし・・・降格されるかもな~」

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ザアロ「まだ足の感覚が・・・ズナリ、まだ私達は生きてるのか?」

ズナリ「ああ、どうやらそのようだ・・・信じられないが!」

メルコ「あー!何回思い出しても信じられない!飛び出した瞬間絶対終わった・・・とおもったら!」

ナンサー「ふわ~っと何の抵抗も無く地面に着地したわ!」

サンダ「君達は一体なにをしたんすか!?いや、もうそんなことどうでもいいっす!!やったー!!!生きてるっすー!!!」

ダハル「ハハハ・・・まじでやったんだね僕ら・・・」

ディッジ「アハハ、こりゃ3日は興奮で寝れないな」

ナンサー「ねえ!教えて!その器械・・・ただ事じゃないわ!」

メルコ「説明して!なんなのよこれは!」

ザアロ「天才少年のお二人、私も知りたいな。どういう理屈があればああいうふうになるんだ?」

ダハル「あー・・・えっと・・・エネルギーの供給を波動から得て・・・それから同一性の保持と・・・」

ディッジ「『世界の見方を少し変える』器械だ。それ以上でもないしそれ以下でもない」

ディッジ(おい、しゃべりすぎだ!行くぞ!走れ!)

ダハル(あっ!ゴメン!了解!)

ダハル「えーっとそういうことで!僕らもう行かなきゃ!」

メルコ「えっ!ちょっと!待ってよ!お礼もまだ・・・」

ダハル「お礼なんていいよ!みんなで時間を稼いだから、みんな生き残れたんだよ!みんなありがとーー!!」

ディッジ「ズナリさん最後かっこよかったぜ!じゃあなー!!」

ズナリ「そっちこそ、命の恩人なんだがな!!ありがとうー!」

メルコ「あー、私達がお礼言う前に走ってった・・・いや、でも足おっそ・・・」

ナンサー「運動不足ね」

ズナリ「ま、彼らにも色々事情があるんだろうな。こうして助けてくれたわけだし、ほっといてあげたほうがよさそうだ」

ザアロ「それにしても目的地からだいぶ遠いところで下ろされてしまったな・・・もはや今日は宿を探すか・・・」

メルコ「そうだ・・・ここから歩いて・・・行くのか・・・温泉・・・」

ナンサー「何駅離れてると思ってるのよ。歩いてくのは無理よ」

ザアロ「どうするの?」

ナンサー「とりあえず電話のあるとこまで向かうわ。パパになんとかしてもらえると思う。ほらメルコ、立って」

メルコ「はああい・・・」

ナンサー「貴方はどうするの?車掌補佐さん?」

サンダ「え~と、とりあえず一番近い駅・・・終着駅へ・・・」

サンダ「いや、またさっきの女がいたら・・・!うわああ!!もう家に帰りたいっす~~!!!」

ズナリ「さあ、僕らは行こう、ザアロ」

ザアロ「そうね」

サンダ「ええ~~!!置いてかないでくれっす~~!!」

ズナリ「やれやれ・・・」

ザアロ「みんなで終着駅に行きましょう。電話もそこにあるでしょ?」

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ハルヴァージ「終点は遠いなあ~」

ナギリ「死ぬのもままならんとは。難儀な女だ」

ハルヴァージ「私はこれからどうなっちゃうんだろう?老いて、老いて、老いて、肉体が朽ちても、まだ生きてるの?」

ナギリ「また、別の方法で死んでみるか?」

ハルヴァージ「そうね」


ハルヴァージ「それにしても・・・いい天気だわ!」

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