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僕があなたに染まるまで

彼女に人生をあげた。僕が彼女と出会った日のことを書いてみた。彼女を見た瞬間の、あの一挙一動は忘れられない。僕の幸せな奴隷人生の始まり。


梅田の東通りの「いろはにほへと」で僕は友達と飲んでいた。
お金はないからいつもこの安居酒屋で、2週間に一度、友達と会うのが唯一の楽しみだった。
店の端っこに追いやられた狭い席に案内され、友達は「広い席がよかったな」と文句を垂れていたけど、僕は端っこが好きだし、狭くても構わなかった。
「いいじゃん、近くで知らない人の声が聞こえるほうが鬱陶しいし」
僕はそういいながら、ハイボールを、友達は生ビールを頼んだ。
「ここのハイボール薄いのによく飲めるな、お前」
友達はおしぼりで手を拭き、タバコに火をつける。
禁煙の店が増えたにも関わらず、この店はタバコが吸える。だから友達はここが好きらしい。
煙を吐くと僕のところへ流れてくる。僕はタバコを吸わないしむしろ嫌いな方で、タールの匂いに眉をしかめた。
隔離された席は空気の流れも悪く、煙は滞留していた。
やっぱり広い席がよかった。

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